読書マラソンWEB版

外山滋比古 著 『乱読のセレンディピティ』扶桑社

全国大学生協連
常勤学生委員
井上恵里

 

著者:外山滋比古
出版社:扶桑社

 「乱読の」と題された本を読んだのに、久しぶりに丁寧に活字を追ったなあ、という感想を抱いた。著者の表現が豊かだったからだろうか。読書慣れしていない私でもとても読みやすい文章だった。この本では、乱読を勧めるとともに現代の日本の知識環境、その知識の扱い方について言及していたりする。その端々でこんな読み方でもいいと、読書家でない私を肯定してくれている感じがした。

 「セレンディピティ」とは、ルビによれば「探しているものではない、思いがけないことを発見する能力」とある。私はこの本を読んで、今やもう60歳を過ぎた自分の父を思い出した。私の父は風呂場で読書をする人だった。我が家は農家で、時間にゆとりがあるとは言えない仕事。入浴も15分もないくらいの時間。その時間を、祇園や般若心境など、様々な類の本を読むのに費やしていた。まさに乱読だったのかもしれない。忙しい仕事の合間に、父でさえ様々な本を読んでいたことを思い出したのだ。私自身を振り返ると、色んな言い訳をして新聞も読まず、本を買うのは好きなので買いはするが積んで置くだけ、という状況だ。心のどこかで、「読み通さなきゃ意味がないかも」と思っていたからだ。まさしく著者が本書の中で指摘していた通りである。乱読がよい、読み切らずともよい、と本書は言ってくれている。中高生の頃よりは自由にできるお金も増えた。読むという行為をちょっとずつ日常に挟んでみようか、と思った。

全国大学生協連 常勤学生委員 
井上恵里