読書マラソンWEB版

百田尚樹 著 『海賊と呼ばれた男(上・下)』講談社

京都大学文学部 4回生
新熊寿基

 

著者:百田尚樹
出版社:講談社

 出光興産の創業者である出光佐三氏をモデルにした歴史経済小説。どんな逆境にもあきらめることなく立ち向かっていった一人の男の生涯が描かれたこの作品は、読む者の心を熱くしてくれます。

「馘首はならん!」。焼け野原となった東京、残された莫大な借金、戦後会社が絶望の淵に立たされてもなお、社員を家族と考え一人もクビしなかった国岡鐡造。自分の信じる道へと突き進む、おかしいと思うものにはおかしいと言う、そうした鐡造の姿勢には激動の日本を生き抜いた経営者としてのイズムが秘められています。彼のそうした姿勢はGHQや石油メジャーを前にしても変わることはありません。

 人の心がひとつになったとき、合理や計算では考えられないことが起きる。どんな絶望を前にしても、またどんな困難を前にしても、あきらめないということがいかに大切かを教えてくれる作品でもあります。

 中間搾取や官僚主義を嫌い、自分の商店の社員を家族同然に扱い育て、会社の利益よりも社会の利益、消費者の利益を優先する。鐡造のそんな熱い生きざまに心打たれ、作品の魅力に引きずり込まれていくこと間違いありません。こんな日本人がいたのかと誇りに思わせてくれる、百田尚樹渾身の一作です。

京都大学文学部 4回生
新熊寿基