夏になると、個人的には食欲が増す。実家が北国の農家だからかもしれないが、「夏のほうが瑞々しくて、美味しいものが沢山ある!」と思いこんでいるのだろう。台風が来る直前、真夏日に近いような天気の日に、この本を購入して読んでみた。
著者は漫画家として有名な安野モヨコさん。(映画監督、アニメーターとして有名な安野秀明さんを夫に持つ方だと最近知った。)
内容は決してオシャレな女性の気品漂うお食事エッセイ、ではない。タイトル『くいいじ』という大胆さそのままに気取りすぎない、でもどこか気の利いている感じのする、とても素敵な食をとりまく事柄が描かれている。ジャンキーに、ハンバーガーの話題まで出てきたりするのだ。
文章は季節の流れ順で綴られているので、読み通すだけで1年のおいしいものを一巡したきもちになる。が、やっぱり今読んで私のこころが喜んだのは〈晩夏から秋〉と〈春から盛夏〉の章だった。トマト、きゅうり、茄子、みょうが、大根…。必ずしも夏が旬、というものではないかもしれないが、「より新鮮で、きりっと冷たく、生に近い状態で食べたい…!」もしくは「夏の終わりの夕暮れに食べたくなるだろうなあ」と思うものたちが登場する。普段自炊をしない、調理が完了したようなものばかり口にしている私も、野菜を買って帰ろうか、と考えた。
ぜひ、あなたも。
2015年度全国学生委員会・執行役員
井上恵理