読書マラソンWEB版

『何者』 著:朝井リョウ 出版社:新潮社

菊池愛梨

2015年度全国学生委員会・執行役員 菊池愛梨

 

『何者』
著:朝井リョウ
出版社:新潮社

就職活動を前にして、「就職活動を巡った」という裏表紙の言葉に惹かれこの本を手に取った。就職活動に対して、いわゆる「意識の高い」大学生たちのSNSアカウントに記載される内容がこの話の鍵となってくる。SNSのアカウントを持つことが当たり前になった今、就職活動に限らず本音と建前を外に発信する場所を分けることが多くなってきている。そこにスポットを当てて今の大学生の心情をリアルに書き表している。学生たちの本音が見え隠れするSNSアカウントと、彼らが表に見せる言動とのずれに怖さを覚える一方で、この話の真実に気づいたときに、もう一度始めから登場人物の言動を見返すために読み返してしまった。

最近の学生は、物事に対して極めて客観的な視点で向き合い、熱く頑張っている人たちを「自分はあの人たちとは違う」と冷めた目で見ている人が多いというようなことがよく言われている。ゆとり世代と同時期の世代を指す言葉として「インターネットを利用して育ってきていることから現実もよく知っており、無駄な努力や衝突は避け、大きな夢や高望みも無く、合理的な行動を心がけている『さとり世代』」という言葉も出てきているほどである。この本に登場する大学生たちもそんな要素を持った若者たちである。読み進めながら登場人物の様々な心情に共感し、自分でも言葉にしたことがなかったような生々しい心情表現に困ることもあった。一方で、そんな冷めた態度に釘を刺してくれる言葉もあり、登場人物と同じようなことを考えていた私にとっては心に刺さる言葉がたくさんあった。

自分が普段何を考えて生きているのかを振り返り、これから就職活動を始めていくにあたって臨む姿勢を考えることのできる1冊となった。

2015年度全国学生委員会・執行役員
菊池愛梨