読書マラソンWEB版

『オーデュボンの祈り』 著:伊坂幸太郎 出版社:新潮社

東北学院大学 佐竹未夢

秋田大学 神馬健次

『オーデュボンの祈り』
著:伊坂幸太郎
出版社:新潮社

伊坂幸太郎は「重力ピエロ」や「ゴールデンスランバー」で知られていますが、デビュー作である本作も伊坂幸太郎独特の世界観で描かれています。

主人公は伊藤という男です。伊藤はある朝、目を覚ますと見知らぬ島にいました。その島は日本から隔絶されている仙台沖の島でした。島に住む人々は、嘘しか喋らない画家、島の法律の代わりとなり殺人を繰り返す男など様々です。極めつけは、未来を予知できる人語を話す案山子、優吾。優吾は伊藤に生きる上で大切なアドバイスをしますが、ある朝殺されてしまいます。なぜ優吾は未来を予知できるにもかかわらず、殺されてしまったのか、殺「案山子」事件の犯人を追う小説です。

私たちは「町がライトアップされている光景を」夜景と呼びますが、舞台の島では夜景を「暗闇に沈む夜の景色そのもの」として楽しみます。島の人々は奇特な人ばかりですが、私たちのように大切なことを見失っている読者に、いろいろなことを教えてくれます。

島の外にも登場人物は存在します。例えば伊藤を追う極悪非道の警察官だったり、伊藤の回想に出てくる祖母だったり。この祖母の一言が一番私の心に残っています。「人生ってのはエスカレーターでさ。」人生は勝手に進んでいくからこそしなくてはいけないことがあり、できることがあると知りました。

描かれている世界は虚構でも、教えてくれることはどうしようもなく現実な小説です。

秋田大学
神馬健次