読書マラソンWEB版

『魔王』著:伊坂幸太郎 出版社:講談社

2016年度全国学生委員会・執行役員 本多駿

2016年度全国学生委員会・執行役員
本多駿

魔王

『魔王』著:伊坂幸太郎 出版社:講談社

この本には政治家が登場する。
政治家ははっきりとした人物だ。自分の思ったことは包み隠さず言う。
景気が低迷し、国民は政治を諦観していた時代。
やがて、その力強い態度に対し熱狂を示す者が現れる。
「この人に任せれば大丈夫」と。
熱狂はどんどんと広がっていく。

声の大きな人が現れると、人はすぐに流される。
流されるうちに少しずつ身を委ね、いつしかそれが自らの声であると錯覚する。
「〇〇が言っていた」は心地のいい免罪符だ。主張する自由に対し、発言の責任は「〇〇」に投げてしまえばいい。責任を背負うことは精神的にも肉体的にも、とても負担のかかることだ。
そうして人々は考えるのを止める。
他人の意見に自分を重ね、考えた気になっていく。

勇気はあるか?
自らを取り巻く喧騒の中、自分を保ち続ける勇気はあるか。
周囲の白い目を意に介さず、退け、自分を示し続ける勇気はあるか。
声の大きな人、熱狂に同調するムード。そんな洪水に対し、1人でも立ちつくす勇気はあるのか。
人生はきっと、誰かに流されて生きていく方がラクだ。だが、果たしてそれでいいのだろうか。

流れゆく枯葉のように。死んでいるように生きたくなければ、自分の考えを信じて対決するしかない。
それは勇気のいることだ。しかし、それをせずして、自分は何のために何歳まで生きるのだろう?

自分が自分であるために。対決を選んだ青年の物語。
そんな少しの勇気が欲しい時、僕はこの本を何度も開く。

2016年度全国学生委員会・執行役員
本多駿