読書マラソンWEB版

『No.6』著:あさのあつこ 出版社:講談社

そして生活はつづく

『No.6』著:あさのあつこ 出版社:講談社

今回紹介する「No.6」シリーズはコミック、アニメなど多岐にメディアミックスされた人気作だ。児童文学と文学一般の間であるヤングアダルトとして発表されたこともあり、中学校や高校の図書館で見かけたことがあるという人も多いかもしれない。
その書き出しを見てみよう。
「ネズミは穴の中にいた。暗闇の中で、静かに息を吸う。わずかに湿気を帯びた土の匂いがした」

 ……開始二行で伝わるこの面白さよ!

 物語はNo.6と呼ばれる理想都市に住むエリート、紫苑がとある施設から脱走してきたネズミという少年を部屋にかくまうことから始まる。あらすじは長くなるため割愛するが、No.6を理想都市として成り立たせるため秘密裏に行われていた非道な行いの数々。それを目の当たりにした紫苑がどう向き合っていくのか。そしてNo.6のいく末は…というのが話の主軸である。格差社会や差別、争いなど、現代にみられる難しい問題を丁寧に描いた作品だ。

 こう紹介すると読み辛そう、重そうと思うかもしれないが大丈夫。本を開けば天然純粋な紫苑や信念を持って強かに生きるネズミ、犬に育てられNo.6の外で懸命に生きるイヌカシなど沢山の魅力的なキャラクターが出迎えてくれる。舞台や戯曲の台詞のようにどこか芝居めいた、頭に残る素敵な一節に出会えることも請け合いだ。

表紙を開いて一瞬で引き込まれる「No.6」の世界。現在は手に取りやすい厚さの文庫版も発売されているので、これを機に頭から爪先まで浸かってみてはいかがだろうか。

秋田大学 菅原杏菜