読書マラソンWEB版

『贖罪の奏鳴曲』著:中山七里 出版社:講談社文庫

大阪市立大学 大塚洋紀

表紙

『贖罪の奏鳴曲』著:中山七里 出版社:講談社文庫

最後の最後で幕を開ける怒濤の逆転劇に心を奪われます
バラバラに点在していたものが一気に繋がる快感をぜひ味わってみてください!


 御子柴礼司は多額の報酬を要求する悪辣な弁護士であり、過去に幼女バラバラ殺人を犯して少年院に収監された猟奇殺人の犯人でした。彼は名前を変えて弁護士となりましたが、その過去をゆすり屋のライターに知られてしまいます。物語は、主人公である御子柴が彼の死体を遺棄するという衝撃的な場面から動き出したます。一筋の汗すら掻かずに死体を川に捨てる御子柴。警察は御子柴を殺人犯と疑いますが、彼にはどうしても崩せないアリバイがありました。

 時を同じくして、御子柴は金にならない国選弁護人を買って出ます。彼の役目は、誰の目にも有罪と思われた女性を救うこと。夫に3億円もの保険金をかけて殺害したとされる彼女には、無期懲役の判決が下されていました。1人取り残された息子は、先天性の脳性麻痺で左手以外ほぼ不随の少年。彼のもとを訪れる御子柴は、警察が自分の過去を知ったことすら気にも留めず、裁判に勝つ糸口を探します。

 ー弁護士資格には『人格』という項目はないー 過去に犯罪を犯していても、司法試験の結果さえよければ弁護士になれます。そしてその資格は取得してしまえば、その後犯罪を犯そうとも剥奪されることはありません。彼はどうして弁護士になったのか。なぜ死体を遺棄したのか。保険金殺人事件の弁護を引き受けた真意はなんなのか。物語の中で明かされていく彼の過去から、その素顔が垣間見えるかもしれません。この本を読み終えたとき、あなたの目にはこの男がどのように映っているでしょうか。

 事件の真相も裁判の行方も、主人公すらも謎に包まれたまま展開していく物語。御子柴の過去を皮切りに次々と明らかになる真実に心を奪われる、そんな驚愕の逆転法廷劇です。ぜひ手にとってみてください。

大阪市立大学 大塚洋紀