読書マラソンWEB版

『空が分裂する』著:最果タヒ 出版社:新潮文庫

大阪教育大学 長村 燎

表紙

『空が分裂する』著:最果タヒ 出版社:新潮文庫

最近物足りないな・・・。ちょっと息抜きしたいな・・・と考えているあなたへ。ちょっとした隙間に読める「現代人のための」詩集。


この本を買おう!って決めた瞬間を覚えている人は少ないと思う。私はこの本を本屋で見かけた瞬間、その表紙に映る少女とクレヨンで書き散らかしたようなカラーリングに目を奪われ、そのまま購入した記憶がある。この本が詩集であることを知ったのは家に帰って本を開いてからであった。

私は詩の読み方なんてほとんど知らなかったし、堅いイメージが先行していた。しかし、この詩の作者である最果タヒさんが紡ぐ言葉は従来の固定概念を真正面から打ち砕いてくれた。何も難しいことなんて考えなくていいのだ。それほど年齢の違わない作者が感じた日常のあらゆる風景や感情がカラフルなイメージとともにスッと頭の中に入ってくるはずである。またこの詩集では詩に付随してイラストが描かれている。このイラストが詩の世界観の1つを代弁してくれているため、詩に抵抗があるような方でもスムーズに言葉の世界に入っていくことができるだろう。

私が思う「詩を読むことの魅力」は気軽に自分以外の誰かの感性を覗き見ることができる点である。特にこの作者の描く視点は読んだ当時20歳であった僕の視点とどこか近いように思われた。それでいて「なるほど、そういう考え方もあるのか・・・」と唸らされるような一歩先の歩き方を見せてくれたり、ある時は日常生活の中で感じる何とも言えない不安や疑問のようなものを真っ直ぐに代弁してくれたりする。読んでいると気の知れた友人と会話しているような気にさえなってくる。これまで気付くことのできなかった新たな自分に出会えるかもしれない。

最近何か足りてないなと考えている人、、忙しくて忙しくて仕方ない人、すべての人にお勧めしたい一冊だ。一編がそこまで長くないのも詩の魅力である。空いた時間にサクッと読んでみてほしい。自分を見つめなおすキッカケとなるに違いない。

大阪教育大学 長村 燎