読書マラソンWEB版

『失はれる物語 』著:乙一 出版社:角川書店

愛知大学
不破 雪乃

表紙

『失はれる物語 』著:乙一 出版社:角川書店

話の序盤で、男性が突然事故に遭い、意識を取り戻したときには右腕の肘から手首までと人差し指しか感覚がなくなってしまいます。そんな体験はしたことがないし、「自分がもしそうなったらどうしよう」という想像もできませんよね。

その後男性は、それまで良好な関係ではなかった奥さんが毎日お見舞いに来てくれたり、その後生まれた娘とも腕を通してコミュニケーションを取れたりして、事故をきっかけではありますが、充実した日々を送るようになりました。そんな生活が数年続いたとき、「このまま二人を自分に縛り付けておいていいのか」と考えるようになり、男性はある決断をします。

この本は私が小学校6年生のときに、人生で初めて読んだ文庫本です。がんばって読んだ記憶があるので当時の自分にとっては話を理解するのが精いっぱいでした。それから何回か読み直しましたが、やはり難しいなという印象は変わりません。

この本にはもう一つ思い出があります。1年生のとき大学で「本をおすすめしよう」という機会がありました。そのとき話した人に「自分がこの男性だったらどうする?」と聞かれました。考えたことがなかったので、とっさに「この男性と同じことをすると思う」と答えました。でも今なら「この男性とは違うことをすると思う」と答えます。

この本のお陰で、自分ならどうするかを考えるようになりましたし、本は読むたびに感じることが変わったり変わらなかったりするということに気づきました。

愛知大学
不破 雪乃