読書マラソンWEB版

『何様』著:朝井リョウ 出版社:新潮社

富山大学
坊咲南

表紙

『何様』著:朝井リョウ 出版社:新潮社

この本は映画化もされた『何者』の続編として出版された。本の中では、『何者』の登場人物たちの過去のエピソードや彼らの周辺人物の話が短編でいくつか挙げられている。朝井リョウさんの本は、どの本も全て現実味がある。読み終わった後必ずと言っていいほど「言い当てられた!」といった感情に襲われる。また、物語の最後にちゃんとした終わりがない。そのため、ずっと本の内容について考えてしまう。読む人の心を離さない本ばかりだ。『何様』にも同じようなことが言える。

私が一番心を奪われた話は、『何様』の中で最初に書かれている「水曜日の南階段はきれい」である。これは、『何者』の登場人物の初恋の話である。この話の主人公光太郎は、階段掃除の担当の荻島夕子に受験勉強を教わっているうちに次第に心惹かれていく。しかし卒業を機に彼らは離れ離れになってしまう。連絡先もその後についても何もわからない夕子のことをずっと想っている光太郎の様子は『何者』の描写からも分かるようになっている。

現在ではインターネットが進化し、離れている相手ともすぐ連絡が取りあえる便利な環境になった。しかし、この話ではそれが出来ていない。便利な世の中が本当によりよいのか、出来ないことがある方が尊いのではないか、この話を読むとそんなことを考えさせられる。

富山大学
坊咲南