読書マラソンWEB版

『はてしない物語 (THE NEVER ENDING STORY)』著:ミヒャエル・エンデ

下関市立大学
城田 真優

表紙

『はてしない物語 (THE NEVER ENDING STORY)』著:ミヒャエル・エンデ

現実世界と、本の中の世界の不思議な物語です。この本には、アトレーユとバスチアンという2人の主人公が登場します。魅力的で、かつ不思議な存在やその世界独特の雰囲気に引き込まれてしまいます。しかし多くの概念的存在や幻獣が登場しますが、後半また現れることはありません。それきりの出会いとして、いい意味でキャラを使い捨てているなと感じました。読み進めていく内に、彼らに感情移入してしまう構成の巧みさを感じました。主人公が月の子モンデンキントの名を呼ぶ頃には、もう自分はバスチアンなんだと錯覚してしまうほどに。

ファンタージエンという本の中の世界を旅しながら、バスチアンが成功と破滅へと向かっていく物語です。「何かの代償に、一つ一つ記憶を失っていく」というモチーフはちらほら見ますが、この作品ほどそのモチーフを活かせた作品はないと思っています。

また、読み手を「ファンタジーの世界に引き込む物語」は山のようにありますが、それと同時に、「ファンタジーの世界から現実に帰ってこさせる物語」でもありました。読み終え本を閉じると、自分が本当に先ほどまでファンタージエンにいたのだと、しかしここは現実世界なのだと、何とも言えない充実感や寂しさを感じました。

この物語は無限の落とし穴、あるいは底なし沼だと思います。 ネタバレになるので物語の詳細には触れてきませんでしたが、何も知らない状態で読むからこそ、必ずこの物語に引き込まれてしまうはずです。

下関市立大学
城田 真優