読書マラソンWEB版

『暗い所で待ち合わせ』著:乙一 出版社:幻冬舎文庫

福岡教育大学
図師 秀男

表紙

『暗い所で待ち合わせ』著:乙一 出版社:幻冬舎文庫

目の見えない女性とある会社の男性が主人公です。女性は、身寄りのない彼女ですが、目が見えないながらも、慣れ親しんだ家の中なら不自由なく生活できるため、一人で暮らしています。ある日、二人の住む町の駅で殺人事件が起きます。 男性は、とある事情から、駅を常に見ることのできるこの女性の家に忍び込み、女性にばれないようにしながら同じ空間で奇妙な同居が始まります。女性は普通に生活していますが、時折人の気配を感じたり、男性の方も気づかれないように必死です。だんだんとt外の存在に気づかないように、気づかれないように生活していた二人の生活にも変化が訪れる・・・というもの。
こちらの本、まず表紙がとてもとても怖いんです。ホラーかな?ってくらい。序盤の異常な展開にふさわしい表紙と言えばそうなのですが、このお話、とにかく優しいんです。人にやさしくなりたくなる、やさしさに触れたくなる。そんな人の心が開かれる瞬間を丁寧に描いています。
乙一さんの作品はおぞましさと気味の悪さとやさしさと美しさが同居するなんとも不思議な作品が多いのですが、この作品はその代表作といえるのではないかと思います。やさしさと同時に、異常な状況下の登場人物たちの心理を冷静に描き切っているこの作品は常に緊張感があって、だからこそ心温まるシーンで心の開放感の差が一層心地よい。
ぜひ、皆さんにも手に取っていただき、この不思議な感覚を体験してみていただきたいです。

福岡教育大学
図師 秀男