読書マラソンWEB版

『ブランコのむこうで』著:星新一 出版社:新潮社

三重大学 寺本 美香

表紙

『ブランコのむこうで』著:星新一 出版社:新潮社

主人公のぼくは、ある日学校の帰り道に「もうひとりのぼく」に出会った。ぼくは「もうひとりのぼく」のことが気になり、あとをつけていった。長いこと歩いてあとをつけていると、「もうひとりのぼく」は知らない家に入っていった。ぼくも続けて家に入ろうとした瞬間、「もうひとりのぼく」に投げとばされ、閉じ込められてしまった。実は「もうひとりのぼく」は夢の世界のぼくで、閉じ込められた先はパパの夢の中の世界だった。現実の世界に戻るため、様々な人の夢の世界を渡り歩いていく、不思議な冒険の物語。

SFやショートショート作品で有名な星新一さんの長編小説です。しかし、長編といっても200ページもなく、主人公が移動する場面ごとに10の章に分かれているため、短編小説を読んでいる感覚ですらすら読むことができます。また、「ぼく」が訪れる夢の世界は全部で8つなのですが、それぞれ夢の世界の様子がまったく違うので、「次はどんな夢の世界なんだろう」と読んでいてわくわくします。

この物語は、各々の夢の世界の主人公が眠っているときに、「ぼく」も眠ると、そこの主人公の目を通して現実の世界を見ることができ、「ぼく」は他人の夢と現実の両方を見ることができます。「ぼく」が訪れたある夢の世界の主人公は、ライオンと勇敢に戦う王子でした。しかし、その王子は現実の世界では病気により病院で寝たきりの少年でした。夢の世界は自分の中の「こうありたい」という想いや願い通りに進んでいく世界です。なので、願いや想いが強く表れています。それぞれの人の思う『願いや想いで作られた世界』の様子を読んでいくことで、「自分の大切にしたいことって何だろう?」と考えることのできる作品です。

三重大学 寺本 美香