読書マラソンWEB版

『僕が愛したすべての君へ』著:乙野 四方字 出版社:早川書房

岡山大学 中家 翔

表紙

『僕が愛したすべての君へ』著:乙野 四方字 出版社:早川書房

「選ばなかった順番で読まなかったとしたら果たしてどう感じたであろうか。」

もう一冊同じ著者によるものと同時刊行であり、そんな感想が書かれていることにひどく惹かれてこの本を手に取った。
普段、小説といっても恋愛小説というものは好んで読まなかった自分はそういった面白そうといったことで読み始めたが、ただただ高校生同士の甘酸っぱいストーリーが描かれたものではなかった。
この本の中では並行世界というものの存在がすべての人に認知されているSF的な要素も含まれているのだ。並行世界といっても朝ごはんにパンを食べたか、ご飯を食べたかといった違いしかない世界という、過去の選択で選ばれなかった分岐が別の世界として存在している。そして時々、その別の並行世界へ飛んでしまう。こういったことが当たり前の世界で、高崎暦が普段話すことのなかった女子、瀧川和音に声を掛けられる。

「あっちの世界では一応、恋人なんだけど…」

そんな爆弾発言から始まる並行世界についての自分とは果たして本当に自分なのかということなのかなど考えたこともないことを当たり前のように考えさせられる面もある小説。

もう一つの物語である「君を愛したひとりのぼくへ」をも踏まえての感じる部分というのもあり、いい意味で恋愛小説といわれると首をかしげるような読み物だった。あのときああしていればという後悔をするときにその選択をした世界もあるのかもしれないと少しだけ前向きになれる…かもしれない。



岡山大学 中家 翔