読書マラソンWEB版

博士の愛した数式 著:小川洋子 出版社:新潮文庫

宮崎大学  牧野有里子

表紙

博士の愛した数式 著:小川洋子 出版社:新潮文庫

この本は第一回本屋大賞を受賞し、映画化したことから知っている人も多いのではないでしょうか。この本は、数字をこよなく愛する博士と家政婦、そして家政婦の息子(ルート)の日常を描いた小説です。日常を描いているのですが、その一日一日が日常ではない、当たり前ではないということが小説全体を通して伝わると思います。

博士は80分で記憶をなくしてしまうのです。そのため毎日家政婦とは初対面。あったときには決まって数字に関する質問をします。そして、一緒にいるときには数字の美しさ、奥深さについて語ってくれるのです。私は正直数学が好きではありません。しかし、博士の話している内容を見ると自分も博士とあってその話を聞いてみたいと思いました。

そしてこの小説で大きく印象に残っているのは家政婦の息子と博士の出会いです。あることがきっかけで息子は博士の家に通うようになります。息子との出会いが生活を大きく変えました。今まで数字としか向き合ってこなかった博士が三人で会話をしながら食卓を囲みルートの宿題まで教えるのです。私は博士は子どもなんて嫌いで数字と向き合っていればそれでいい、そんな人だと思っていました。しかし、このルートと家政婦、博士の三人の生活を描いているところはとても幸せそうで、ほのぼのした雰囲気がにじみ出ていました。

この本は、ただ平和なだけでなく少し切なさもある本です。作者である小川洋子さんの世界観が顕著に表れていると思います。普段自分がいかに幸せか、毎日を大切にしなければいけないということを感じられると思います。まだまだ魅力はたくさんありますが、読んでいただけたらかたらずともその魅力が感じられると思います。あまり本を読んだことがない人でも読みやすい作品だと思うので是非読んでみてください。



宮崎大学 牧野有里子