昭和20年8月15日をめぐる24時間を、綿密な取材と証言を基に再現された一冊。
正直読み進めるのが少し難しい読み物だった。
だけど、せっかくのおうち時間、根気強くと思って読み進めていくと、文体はやはり難しいはずなのに、どんどんページをめくる手が軽くなっていく感覚を得た。
それぐらい、たった24時間が丁寧にありありと360ページ近くにわたって描かれている。
ノンフィクションなのにフィクションのように、1つの小説として読み進めていく。
1時間毎に章立てされているのだが、小説を読むように物語に吸い込まれながらこの“1時間”を読み終える毎にこれがフィクションであることが思い出され、胸がざわつく。
それぞれがそれぞれの立場で、日本中で動いていた。生きていた。
確かに「あの戦争」のことを描いた本だけど、戦争の悲惨さとか、そういうのを描いたものではない。ましてや何かを訴えるものでもない。
ただ事実が半藤の構成によって描かれているだけだ。
だけどその事実にその時代を生きた人の息や魂が感じられる。
教科書に活字で書かれているのとは違う。
あの日あの時も日本で人は生きていた。
当たり前に聞こえるかもしれないが、そんな「日本のいちばん長い日」の日本を感じることができた。
奈良県立大学 四方 遼祐