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『資本主義のハビトゥス アルジェリアの矛盾』著:ピエール・ブルデュー 訳:原山哲 出版社:藤原書店

大阪大学大学院
上畑 憲矢

表紙

『資本主義のハビトゥス アルジェリアの矛盾』
著:ピエール・ブルデュー 訳:原山哲
出版社:藤原書店

本書は、「ディスタンクシオン」「文化資本」などの概念で有名な社会学界における巨人の一人、ピエール・ブルデューの著書である。

この本では1960年ごろの独立戦争のさなかにあったアルジェリアを統計的・民俗学的に分析することで、社会に資本主義的な経済原理が組み込まれていく様子が描かれている。つまり学問的厳密性を無視して簡潔に言えば、アルジェリアを舞台に「どうやって人々は資本主義に適応していき、そしてどうして労働者の中に格差が生まれていくのか」を論じた本である。

ただし、本書を読めばそのテーマは「資本主義と労働者の分析」という言葉では片づけられないほどの幅広さがあることにすぐに気が付く。資本主義の発展に伴う格差の顕在化はもちろん、人間集団の同調性、その日暮らしの労働者のリアル、伝統に固執する人間像などなど。本書が描き出しているのは「この社会が何であるか」を深く考えさせるような広範な事象である。

更に驚愕なのは、1960年ごろのアルジェリアの話が今の日本を生きる自分にとって深く問題を提起するものとして今もなお存在しているというところにある。もちろん時代や文化的な差を感じることもあれど、この本で述べられているテーマが提起する問題たちは今もなお力強い説得力を失っていない。

そう感じるのは私たちが資本主義的な考え方が行き渡った後の社会を生き、ある種それが常識となっているからこそなのかもしれない。しかしこういった社会のシステムは周知の通り多くの歪みを帰結しているわけで、私はそういった問題を常識という言葉で片づけてはいけない責務が我々にはあると強く信じている。そういった意味でも、資本主義社会への深い洞察を与える本書は、あらゆる皆さんに一度手に取ることを強くお勧めしたい偉大な一冊である。

大阪大学大学院 上畑 憲矢