これは、とってもあたたかいお話。とある家族の、愛のかたち。
とある家族の、愛のかたち。
「僕は捨て子だ。」
そんな衝撃的なカミングアウトから始まるこの作品は、愛とか絆とか、目には見えないけれど確かにあるらしいものを、ありふれた日常の一場面の中に、ごく自然に描いている。
「愛している」という台詞も何度も出てくるけれど、それ以外の、暮らしの中の何でもないような些細な描写にこそ、愛を感じる。生きることのすべてで愛している、そんな感じがした。
そして、この作品に登場する人物は総じて、驚くほど寛大なのだ。読んでいる私は驚きすぎてフリーズするほどに。でもそれが面白い。愛とか絆とか、それを真面目な顔でもっともらしい口調で語られていたなら、きっとつまらない作品だったと思う。
本当に大切なことのためなら、学校も会社も休んでしまう。清々しいまでにぶっ飛んでいる行動こそが、大切な人を大切にして生きる方法や、心に栄養を与える方法を知っていた。
読み終わり、心の奥と目の奥がじんわりとして、抱きしめられたような温かさを感じた。 傍にいてくれる人を、もっともっと好きになれる
一緒に収められている『7's blood』も絶品。
岡山大学 藤井 祥子