読書マラソンWEB版

『リスクと生きる、死者と生きる』著:石戸諭 出版社:亜紀書房

北海道大学大学院
中山 拓登

表紙

『リスクと生きる、
死者と生きる』
著:石戸諭 
出版社:亜紀書房

20代半ばの新聞記者が東日本大震災の被災地・被災者への取材を通じて感じた「伝えることの難しさ」と「人々が生活していること」を綴るノンフィクション。メディアは数字を使って災害の規模・様相を伝えるが、伝わる段階で抜け落ちてしまう大切なことがあるのではないかと、ひとりひとりの被災体験を通じて思い悩む若者の思考と心の動きが繊細に記されています。また、新聞記者がインタビューを回顧するストーリーを通じて、大震災を経験した記憶を持ちながら今を生きていく人たちの想いも描かれています。

インタビューを通じて見えてくるひとりひとりの「記憶」。大震災は今後の歴史に「記録」として残されるべき大きな出来事であったことは間違いないでしょう。しかし、インタビューに答えてくれた人たちの言葉を被災地・被災者という主語で語ることで伝えられることは何であろうか。震災そのものは人生で何度も遭遇するような事象ではないかもしれないが、私たちの生活はその1点だけでなく、過去から現在、未来へと間違いなくつながっている。「歴史を知り、当時に想いを馳せ、未来に語り継ぐこと」は震災に限らずさまざまあるが、現在を生きる私たちが伝えていくことは何であろうか。

決してメディア論的な内容ではなく、数字で科学を語る研究者(大学院生)や過去を知り未来を考えていくことができる大学生の視点からも多くのことを考えさせられる1冊です。

北海道大学大学院 中山 拓登