「日本の子供のうち6人に1人は相対的に貧困というが、自分の周りにそんなに貧困の人いるのかなと、少し縁遠く感じてしまっていた。だがこの著書を読んで、それは無知であり、誤解であり、無関心なだけであったと痛感させられた。幼い時、友達と何気なく話す中での一言や善意と思った一つの行動が、その友達の置かれている事情も知らずに傷つけてしまっていたのかもしれない、と一つ後悔をした。
幼いうちから貧困の環境で過ごすことで自己肯定感が失われ、「自己否定感」が膨らむことで人生に前向きになれなくなり、それが世代を超えて連鎖する。これが貧困の連鎖であると著者は言う。日本は外国とは異なり社会保障やインフラが整っているからこそ、相対的に貧困でない層と貧困の層が境なく共に暮らせている。このことが貧困の層が格差を見せつけられ、より自己否定感を抱いてしまうことにつながるらしい。
そのような日本で、貧困の連鎖から子供を抜けさせるにはどうしたらいいのか。絶望を希望に変えるために社会全体はどう在り、寄り添うべきなのか。大学に通う、通わせてもらっている自分には何ができるのか。貧困という切り口で日本の社会問題、そして世界の社会問題を分かりやすい言葉で知ることができ、とても考えさせられ、何か行動を起こしたいと思わせられる著書であった。
福山市立大学 林 優樹