読書マラソンWEB版

『ときどき旅に出るカフェ』著:近藤史恵 出版社:双葉文庫

奈良女子大学大学院
天野 沙耶

表紙

『ときどき旅に出るカフェ』
著:近藤史恵 
出版社:双葉文庫

この本は、これまで読書にはまったことも、そもそもこれまで読んだ本の数もごくわずかな私が読書にはまるきっかけとなった作品です。

ある日、ちょっと気分が沈んだなあと思い、近所の本屋さんになんとなく入ってみました。その時にたまたま目に入り、最初は表紙のきれいさに惹かれましたが、タイトルや裏表紙に載っているあらすじに何故か今の自分にぴったりかもしれない、と思い、読み始めました。

街の小さなカフェで紡がれる、日常の、わたしたちの身にも実際に起こりそうな小さな事件を解決していく「コージーミステリー」。解決の糸口となるのはそのカフェで提供されているスイーツたちです。実際にある世界のスイーツで、そのスイーツの名前がこの本の各話のタイトルにもなっています。

作品を動かす小さな事件はいろんな思い込みや"当たり前"、そして、人間関係の複雑さから原因で起こります。1つの方向から物事を見るのではなく、相手の気持ちに寄り添うことやいろんな見方をすることの大事さにも気づかされました。また、複雑な人間関係が見えたシーンでは少し心が苦しくなるような苦みもありましたが、全体的にあたたかく、スイーツのような甘さのある優しい雰囲気をまとった作品で、読み終えたときに本当にそのカフェにいるかのようなやすらぎを感じました。出てくるスイーツもおいしそうで、思わず調べてしまい、こんなにおいしそうなものが食べられるその国へ実際に行ってみたくもなりました。

様々なお話が区切られて別々に描かれつつもどこか繋がった部分もある「連作短編集」になっているところも読みやすくて良かったです。

あまり本を読んだことが無い方や、ちょっと癒しが欲しい方、旅行に行きたい方・すきな方などにおすすめの一冊です。

奈良女子大学大学院 天野 沙耶