大学生協の展望を語る

全国大学生協連では、会長理事ご就任から4年目を迎える武川先生に中島専務からインタビューをさせていただき、この間に感じられた大学生協の価値と役割、事業や学生支援など、幅広い分野にわたってのお考えを伺いました。
全国大学生協連 会長理事
武川 正吾 先生(東京大学名誉教授)
インタビュイー
全国大学生協連 専務理事
中島 達弥
聞き手

全国大学生協連 会長理事 武川 正吾 先生
1984年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。社会保障研究所、中央大学を経て東京大学文学部・同大学院人文社会系研究科教授。退任後は同大学名誉教授、明治学院大学社会学部教授。2024年より明治学院大学社会学部研究員。専門分野は福祉国家、社会政策、福祉レジーム。
『地域福祉の主流化』(法律文化社2006)、『連帯と承認』(東京大学出版会 2007)、『社会政策の社会学』(ミネルヴァ書房 2009)、『政策志向の社会学』、(有斐閣、2012)、『社会学と社会システム』(編著・ミネルヴァ書房 2025)等著書多数。
社会政策学会代表幹事(第29期)、一般財団法人全国大学生協連奨学財団※代表理事(~現在)等を務める。
大学生協の5つの役割

中島- 本日はよろしくお願いいたします。武川会長は2022年12月の大学生協連の通常総会で会長理事に就任されて以来様々なお仕事をこなされてきれましたが、大学生協の活動についてどのような感想をお持ちでしょうか。

武川-
会長理事に選任されて4年目になりますが、大学生協の仕事には会員生協時代から携わってきました。この間、先輩の理事長、会長理事の先生方の書かれたものを勉強したり、あるいはご意見を伺ったりして、私自身もいろいろと生協について考えることがありました。ICA(国際協同組合同盟)の研究集会でも発表したことですが、大学生協の役割として私は次の5つのことを考えています。
1つ目は、大学生協は協同組合ですが、学生委員の役割が非常に大きな組織です。通常の協同組合も組合員が主要な役割を果たしていて組合員と利用者が一体ではありますが、大学生協の場合は大学の当事者である学生・教職員自身が組合員となって購買をはじめ様々な事業を行い、利用者も自分たちであるということが大きな特徴で、全国で約1万人の学生委員が活躍しているということも重要な要素だと思います。
2つ目は、生協がかつては社会運動的な性格が強かったということがあります。大学もかつては学生運動が盛んで学生自治が重視されていましたが、近年、学生の自治会というものがなくなってきていて、多くの大学で大学生協が学生総体の意見を代表する立場になっています。大学生協が、自治会無き時代の学生自治組織の役割を果たしているといえると思います。.jpg)
3つ目に、前任あるいは前々任で会員生協に参加していた時に強く感じたのですが、学生と教職員が理事会などで全く対等の立場で議論しているという点が大きな特徴だと思います。大学の中では、教える側と習う側、管理する側と管理される側というようにどうしても上下関係が出てしまいがちですが、生協の理事会はフラットであったと感じました。
4つ目に、特に学生理事は大学生協の経営に深く関わることで、就職前の学生にとってインターン的な役割も果たしているのではないかと思いました。
最後に、生協の学生委員会はサークル的な面もあり、学生委員の居場所になっているということがあります。それだけでなく、一般の学生も生協食堂などに集っており、今はやりの言葉でいうと「居場所づくり」の機能も果たしているのではないでしょうか。
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中島-
私は2025年12月、全国大学生協連の通常総会で連合会の専務理事に就任しましたが、その場で今会長がおっしゃったような大学生協の果たしている役割を、改めて私たち自身の言葉でどう語り直すか、あるいは外部にその価値をどのように発信していくのかが求められていると強く感じました。武川会長は昨年の総会で何かお感じになったことはありましたか。
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武川- 昨年はコロナ禍が収束し、総会もかなり大規模に開催することができました。昔に比べると人数は少ないのですが、それでも全国から集い、普段接することのない他生協の人たちと交流できたのは非常に良かったと思いました。他の生協の様子を知ることで自分たちの立場を再確認し、外部への発信につながるのではないかと思います。
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中島-
2025年度の経営結果は、経常剰余の段階にはなりますが、7年ぶりの黒字決算(会員生協合計)になりました。これ自体は一つ一つの会員生協の努力の結果であり、各生協の皆さんが奮闘した賜物だと思うのですが、一方で、現状ではほぼ半分の生協が経常黒字を実現したものの、まだ半分の生協は経営的に厳しい状況で、今後どのように経営再建を進めていくかが課題であるといえます。
総会では会員生協理事会が議論の場になって経営改革が起動し始めたという事例がいくつか報告されました。武川会長がおっしゃった5つの大学生協の役割というのは、大学生協にとって非常に重要なことだと思います。今後どのあたりを強めていけばいいか、お考えをお聞かせください。
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武川-
対面が制限されたコロナ禍中の苦しい状況を考えると、7年ぶりに経営が改善したのは非常に喜ばしいニュースだと思います。ただ専務のご指摘どおり、黒字になった生協もあれば未だ赤字の生協も多いということで、ある意味二極化しているのではないかと感じました。要するに協同組合自体が本質的に赤字になるものではないということが、二極化で逆に証明されたと思うのですね。言い換えると、現在赤字の生協もやり方を変えれば十分黒字になり得ると思いました。
私は生協の理事会や総代会をそんなに多く見ているわけではありませんが、大学生協は独立した法人で、それぞれの理事会メンバーのマインドは千差万別であると感じました。ですので、経営のマインドを変えていくことが、全体として黒字になっていくことのポイントかなと思います。
専務理事に必要な「3つの力」
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中島-
先日、全国大学生協連で新任専務理事研修会が行われ、全国で新しく専務理事になられた方々に大学生協の専務理事の役割についてお話をさせていただく機会がありました。その中で私は「3つの力」を身につけるというお話をさせていただきました。

まず第一に、私たちは大学を職域とする生協なので、「大学や組合員を知る力」。次に、数値をきちんと把握してそこから現状を読み取り、その状態をどう改革して数値を作っていくかという「事業経営をする力」。3つ目は、その大学や組合員を知り経営の要諦を握ったうえでどう運営していくかという「協同組合人としての力」です。この3つの力がうまくかみ合うことが、大学生協の経営がうまく進み出すポイントだと思います。
大学生協の現局面では7年ぶりの経常黒字を実現したのは一つの前進点ですが、それだけでは十分ではありません。組合員や大学に貢献するには、いかに付加価値が生まれるかだと思います。事業的に言うと、供給高ももちろん大切ですが、生み出す付加価値としての事業総剰余をしっかり増やしていく必要があります。残念ながら今はまだ十分にその付加価値の部分が押し上げられる状況とはいえません。経営状態を整えるところまでは進んだと思いますが、今後は会長の言われるマインドセットを形成し、大学生協の価値を提供しながら事業経営を確固たるものにしていくことが求められると思います。
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武川-
確かに単に黒字にすればいいのではなく、協同組合であるということがまず大前提になるので、その上での経営の安定なのですね。それから供給も大事だけど事業総剰余の部分が重要だという話は全くそのとおりだと思いますが、他方でやはり供給高も重要で、それは組合員利用の指標だからです。供給とコストが減って黒字というやり方もあると思いますが、やはり組合員が利用してくれているという状況の中で一定供給を継続して安定させていくという状態がいいのだと思うのですが。
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中島-
昔、先輩から「供給は満足のバロメーター」「利用は支持のバロメーター」だと言われました。いわゆるインフレ局面でいうと、何もせずとも物価が高騰すれば供給高が上がるような部分があります。しかし、注目すべきは供給額それ自体ではなく、どれだけの組合員に利用されたか、つまりは利用者数や利用頻度、キャンパスでのシェア率であって、その結果、付加価値をどれだけ組合員に提供できたかということが貢献を測るポイントになってくると思います。
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武川-
先ほど新任専務理事研修会の話が出ましたが、専務理事と学生との関係も非常に重要だという認識があります。大学によって違うかもしれませんが、大学生協の理事会には学生理事が多いですよね。その中で学生が専務理事を信頼し、専務理事も学生の面倒を見るというように、仲のいい様子を私も見てきました。大学生協の中で専務理事の立ち位置というのは非常に重要だと実感しましたが、専務理事の中には生協出身者が多いのですか。
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中島-
学生理事を経験して大学生協に就職してくる人もいれば、学生時代は生協と直接関わっていないけれど大学で仕事がしたい、学生が好きといった動機で大学生協に就職してくる人も多くおられます。今年の新任専務理事研修会では、昔生協の理事をやっていた人は大多数ではなかったですね。ただ、生協職員は学生とともに歩む姿勢を持ち、その成長を支えることに喜びを感じ、それを楽しいと思う人が役員や専務をやっているように思います。学生の成長を大切にするということは専務の重要な役割です。
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武川-
大学生って大体20歳前後ですよね。4年間の間に学生自身が成長し変わっていくのを目の当たりにするのは教員にとっても嬉しいことなのですが、専務理事も同様なのですね。
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中島-
専務理事に限らず生協職員は店舗も含めて組合員との接点が多く、しかも必ずしも教える・教えられる関係ではなく、フラットにフレンドリーに接する機会が多いように思います。そういうところが大学生協らしさにつながりますので、組合員との接点にある価値にあらためて注目していきたいと思っています。
学生に協同組合をどう伝えるか
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中島- この間私たちは2030Goals※で2030年に向けた中期的な経営課題を提起していますが、生協職員だけで経営問題を考えたり、あるいは大学生協の理事会メンバーだけで議論したりするのみでは問題は解決しません。大学と使命を共有し、多くの学生に生協を理解してもらう。さらにその大学のある地域社会に大学生協を理解いただき連携を進める中で、解決の道を探っていくという基本的な方向性を提示しています。
※大学生協2030Goals
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武川- 確かに協同組合や大学生協がどういう組織であるかを、一般の学生は必ずしも十分に理解していないところがありますね。以前ゼミで「大学生協をどう思う?」と聞きましたが、大方は自分たちが出資して作っている事業体だというよりは、会費を払えば書籍の割引をはじめとしたサービスを受けられるぐらいの感覚なのですね。教員の中にも同様の人がいます。
しかし今、大学生協だけではなくJCA(日本協同組合連携機構)も様々な大学で、協同組合とはどのように作られていてどういう組織なのかということを教えるようになってきてはいます。なかなか一般に広がっていないと思うので、そこは地道にやっていかなくてはと思います。
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中島- 昨年は国際協同組合年※であり、それを起点に様々なムーブメントが始まりました。大学生協の立場から考えると、「学生に協同組合をどう伝えるか」についてはやはり大学生協が役割を発揮すべきだと強く自覚した年でした。具体的にはJCAや日本生協連などから積極的にコミットいただいて、千葉大学で大規模な協同組合論講座が開かれていますし、全国で生協や協同組合をきちんと勉強する講座が多数開催されるようになりました。今まで単独で行われていたそれぞれの取り組みが、様々な協同組合が一つにつながって面で展開していく運動に変わりつつあると感じました。
※2025国際協同組合年
今後10年おきに国際協同組合年を実施すると国連が決議しました。10年後の2035年の国際協同組合年に向けて、大学で教員の方々と連携して協同組合論講座がより多くの大学で開催される状況を実現すること、そしてその中で、生協の考え方や運動が社会問題を解決していく有効な手段であり方法だという認知を広げて、参加の輪を広げていくことが大学生協の役割だと思っています。
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武川- 確かに大学生協には若い人が入っているということで、一般の協同組合の入り口になっていると思います。学生は大体4年で大学生協を退会しますが、大学生協はその後、地域生協や職域生協へとつながる入り口になると思いますし、各地域生協の人材の供給源にもなっているという話も聞くので、そういう意味で自信を持っていいんじゃないでしょうか。
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中島- 今おっしゃったことは全てポテンシャルだと思います。今の局面は非常に厳しいかもしれませんが、新しいことばかりに目を向けず、私たちが今まで取り組んできた中に埋もれている価値をきちんと整理し再構築することが大学生協の強さにつながるのだと思います。
書店には発見がある
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中島- 書籍事業についてはどうお考えでしょうか。

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武川- 生協は大学の教員も組合員になっているので、ある意味で大勢の著者を抱えている状態だと思います(笑)。「スタディ・エッセンシャルズ」やその他の書籍事業についても大学生協は優位な地位にあると思うので、そこを生かして日本の出版界・読書界を押し広げていくことができると思います。昔から読書マラソンや書籍の復刊事業は読者や出版社から高評価を得られていますが、こういうことは今後もあっていいと思っています。
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中島- 書籍事業は厳しい状況と言われ、街場から本屋が消えるというニュースは頻繁に耳にしますが、例えば「大学の中の書店」である生協書籍部を、今後私たちはどういていくのか、大学はどうするつもりなのだろうかということを考えています。「もう書店はいらない、オンラインで大丈夫」「いや、リアル書店は何らかの形で残した方がいい」という議論があるように、大学が本や書籍部をどうみるかということは非常に重要なキーポイントだと思います。現在の出版業界の厳しさのニュースに触れると、地域社会の中で最終的に書店はどこに残るのだろうかと考えると、大学という場あ一つの解かもしれないなと最近思い始めています。
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武川- オンラインで書籍を買うと言われましたが、私の経験でいうと大学生協にはブックフェアというイベントがありました。あるテーマに関連した書籍を集めたり、ある出版社の書籍が10~15%オフになったりというもので、当時は書籍部で本に出会って買うという機会も多かったのです。私もネットを利用するようになってきて(笑)、今や全ての本を書店で買うわけではありませんが、それでも三省堂や紀伊国屋などそれなりの規模の書店に行くとやっぱり発見がある。
「こういう本があったのか」という驚きがあり、それを手に取るという行為は通信販売では代替できませんね。ネットでは元々必要な本じゃないと注文しないじゃないですか。生協書籍部や地元の本屋さんでパッと背表紙を見て手に取って買うという経験、最近はそれを特に貴重だと思うようになりました。
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中島- 大学生協では事業高60億を超えるような生協から1億前後の生協まで、非常に幅のある事業規模が会員生協として存在しています。規模の大小を踏まえつつ、どういう形であれば生協らしく書籍事業を継続できるのか。今会長がおっしゃったように、本来の目的以外でいろいろな発見ができるような関係性をどのように担保していくのかは非常に大きなポイントだと思います。
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武川- 書籍部も基本的に購入するのは大学生だと思うので、大学生にとってエッセンシャルな本を置いておくという点でいうと、全国60億~1億と幅があったとしても核の部分は結構共通しているかと思います。あと新聞で事業連合が「各大学で一番売れている本」というようなネーミングで広告を出していますが、あれは出版社とタイアップしてやっているんですか。
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中島- はい、大学生協がある大学は全国で210あまりありますが、そこで読まれた本の利用データに基づき「大学生が読んだ本」にフォーカスして宣伝しています。先日もある出版社さんが「大学生が選ぶ新書大賞」という取り組みをされていましたが、ああいう光の当て方ってありだと思うんです。今大学生にホットなものを社会に発信するということが我々の役割としてできると、いろいろヒントになると思いますね。
インフレと学生支援
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武川- ずっとデフレが続いてここ数年急に物価が上がってきて、これからさらにまた上がっていくと予想されているので、インフレが学生生活を直撃しているのは肌で感じます。数字にも出ていますね。
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中島-
学生生活実態調査でも、奨学金を受給している層は、貸与型も含めてほぼ最大のレベルまで上がってきています。加えて、アルバイトをしている学生がコロナ禍前と比べても非常に増えている。アルバイトをしないと生活していけない学生がいるのも事実です。そのことが、大学の学修にも重くのしかかっており、学生は時間的制約がある中で大学生活を送っているといえます。
第69回学生生活実態調査より
調査期間 2025年10月~11月 調査対象回答数 13,277
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武川- みんな忙しい。学業専念が建前なのに、大学に行かない日はほとんどバイトという生活を送っている学生が多いので、ゼミなどで懇親会を企画しても日程調整が非常に難しいという状況ですね。
食堂は大学によってかもしれませんが、以前はワンコインでたくさん食べられたのに、なかなか難しくなっているという感じです。値上げしていますか。
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中島- 大学生協といえども一般的な飲食業界と仕入・調達においておかれている環境はさほど変わりませんので値上げは不可避な状況です。というか、もともと廉価な生協食堂ですから価格改定は避けては通れない状況です。さらに言うと、食材・原材料の安定的な確保自体が困難になってくる情勢です。そういう意味で、学生支援を真剣に考えるということは、今までの大学生協の取り組みとはちょっとフェーズが変わってきていると感じます。この間、100円朝食など外部の事業者さんのご協力、あるいは卒業生からご支援をいただいて学生に安く食事を提供するような取り組みはかなり広がってきています。今後ますます「学生生活への支援」が社会のより広範なコンセンサスになるように取り組んでいくことが重要と思います。
大学生協も組合員の利用によって成り立つ事業なので、赤字を出すと組合員の財産が削られていくことになります。やはり外部から学生支援のためにどのように資金を調達して組合員に届けるかということが課題になります。今後学生支援については企業連携にとどまらず、私たち自身が学生の実態を社会に発信し、行政とも連携していく問題だと思います。
生協は大学のブランド力となり得るか
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武川- 大学生数が減少していくということに関してはどうですか。
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中島-
大学入学者数が急速に減少し、大学自体が大きく変化していく時代の中で、大学生協はどうなるのだと懸念される方も多いでしょう。今、大学生協では、単協で運営してきたこれまでの動きとは異なり、例えば周辺の生協同士が協力してお互いを支え合う関係を実体化していく……我々はこれをグループ運営と言っていますが、法人間の連携を強めることで双方の生協にとってメリットになるような取り組みができればとチャレンジしています。
必ずしも規模が小さいから成立しないという話ばかりではありませんが、一方で母体となる大学や法人のご協力なしには成立しないという側面もあります。いろいろと課題はありつつも新しい局面で持続可能な経営スタイルを模索している状況です。
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武川- 国公立大学の統廃合が進み、私立大学間の生存競争が始まっていく。実際に募集を停止した大学も出てきていますし、これは後戻りしない方向だと思います。逆にどういう大学が存続するのかと考えると、「大学生協のある大学が生き残れるんだ」と言われるくらいになるといいなと思います。実際に生協はブランド力があると思うので、「この大学には大学生協があります」と言うと、受験生も集まるという形に多少はなってくるんじゃないかという希望的観測ですが(笑)。
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中島- 全国大学生協連の通常総会で確認されるスローガンがありますよね。「つながる元気、ときめきキャンパス。」は、人と人とがつながってキャンパスが豊かになっていく、ときめくキャンパスが作られていくという意味を持っており、実際に人のつながりには大学を元気にする力があると感じます。大学生協に関わる学生や構成員の皆さんが活発に活動することで大学の活気が作られ、それが大学の価値につながるような取り組みが期待されます。
今後大学は厳しい局面に向かうけれども、だからこそ大学生協をうまく活用してキャンパスのコミュニティを豊かに維持していくことができればいいと思いますし、それこそ協同組合の出番だと思うんです。
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中森- 大学生協をつくれる大学は教職員も学生もそれなりの主体性があり、生協を維持できる大学は組合員にそれだけの力量があります。それがある意味ブランドになっていくので、大学環境の中では重要な要素ですね。全ての大学に生協ができるとは考えにくいのですが、生協のある大学が生き残ると言いたいです。生協がない大学からすると身勝手ですけど(笑)。
今後の展望
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中島- 2026年度は2030Goalsの目標まであと4年を残すところです。2021年のコロナ禍に策定したのがGoalsという中期計画で、今折り返しを過ぎました。今後、大学生協連として大切にしていくべきポイントはどうあるとお考えでしょうか。
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武川- それは中島専務が何回もおっしゃったように「原点に戻って協同組合として事業をやる」ことを常に自覚し、赤字になってはいけないけれど単に黒字ということではなく、どういう活動をして生き延びるかが大事なのだと思います。「新しいことばかりに目を向けるのではなく、既に試みて実績のあったことを手堅く」と専務は言われましたが、他方でAIなどが出てきて状況が見えないところがあるので、変化に対応できるようにするのも大事だと思います。
普通の協同組合の場合は長年メンバーがさほど入れ替わりませんが、大学生協はほぼ4年で全員入れ替わって常に新陳代謝している組織です。そういう意味では何か変化があっても割とフレキシブルに対応できるんじゃないかと期待しています。専務としてはどうですか。
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中島-
賀川豊彦が1935年に揮ごうした「未来は我等のものなり」の扁額が会長室に飾られています。現在の大学生協の前身といわれる東京学生消費組合(学消)創立の10年を記念して記されたものです。実は昨年が学消創立100周年でした。歴史の中で大学生協も解散や戦争の惨禍に見舞われましたが、この100年をつないできて今日まで至っているということに対して、我々はその理由を真摯に考える必要があると思います。
それは武川会長が言われたように「私たちは協同組合なのだ」ということを改めて考え直すことあり、常に果敢に変化に向き合って組織の自己更新を進めてきた歴史なのだと思います。2030年までに大学生協がどういう組織であるかきちんと定義し、発信し、具体的に何を実現するのかを明示し、どれだけ多くの人に理解と共感を広げられるか、そして実感していただけるか。これからの3年をそういう実感づくりの期間と位置づけて、様々なチャレンジができればと思います。
我々は事業を行い活動する運動体です。言葉だけでは説得力に欠けます。「大学生協の価値はどこで作られるの?」と問われれば、私は「現場で作られている」と答えます。会員生協の店舗という現場で、教職員の方や学生理事・生協職員が熱い議論を交わす理事会で、「できたらいいな」と思うアイデアが生まれます。それが大学生協の価値の源泉となるので、全国大学生協連はこれを全力で応援し、サポートを展開していきたいと考えています。ありがとうございました。
2026年6月11日 全国大学生協連 杉並会館にて
