大学生協の展望を語る
全国大学生協連では武川会長理事に中森専務からインタビューをさせていただき、これまでに感じた大学生協の『強み』をご紹介いただきながら、コロナ禍を経て力強く再生しつつある現在の課題を確認し、次の世代へとつないでいくお話を伺いました。

全国大学生協連 会長理事
武川 正吾先生(東京大学名誉教授)
インタビュイー

全国大学生協連 専務理事
中森 一朗
聞き手

全国大学生協連 会長理事 武川 正吾 先生
1955年東京都に出生。1984年東京大学大学院 社会学研究科博士課程 単位取得退学。東京大学大学院 人文社会系研究科教授。退任後は東京大学名誉教授。元明治学院大学 社会学部教授。専攻は社会政策、福祉社会学。
主な著書は『社会政策のなかの現代』(東京大学出版会 1999)、『福祉社会』(有斐閣 2001)、『地域福祉の主流化』(法律文化社2006)、『連帯と承認』(東京大学出版会 2007)、『社会政策の社会学』(ミネルヴァ書房 2009)等。
福祉社会学会会長、日本地域福祉学会理事、日本学術会議連携会員、一般財団法人全国大学生協連奨学財団※代表理事等を務める。
「たすけあい」が紡ぐ想い
中森- 本日はよろしくお願いいたします。武川会長は2022年12月の大学生協連の総会で選任されて以来、会長理事を務めていただいています。この2年半を経験されて気が付かれた大学生協の強みをキーワードに、それを深めていきたいと思います。
武川-
私と大学生協との付き合いは非常に長いのですよ。学生時代から教員時代まで半世紀を数えると思います。役員歴はそんなに長くなくて、大学生協連の会長に就任する前には、2014年5月31日に東大生協の理事に就任し、同年12月18日に理事長に就任し、2019年5月24日の総代会にて理事長を退任しました。
東大生協の理事長になった時、そして大学生協連に来てさらに感じたことは、大学生協はまさに「たすけあい」を実践しているということです。生協加入の時に出した出資金を、卒業して生協を脱退する時に返還されるというのが基本的なルールですが、卒業時に後輩の奨学金のために寄付してくださる方が結構いらっしゃるということを聞いて、素晴らしいと思いました。
一般の学生は、生協は出資金を払えば在学中に書籍1割引など様々な便益を受けられ、卒業したら出資金を回収する、と考えている人も少なくないのですが、返還を受けた出資金から卒業生の方が後の世代のために総額で1500万円くらい寄付してくださる、これは非常に感動しました。
中森-
武川先生は大学生協連の奨学財団の理事長も務めていただいているので、そういう声に非常にたくさん触れていただいているのだと思います。卒業生の寄付といいますと、かれこれ30年ぐらい生協にいる我々にしてみれば何となく集まるのが当たり前のような感覚があったのですが、先生のお話を伺って、やはり奨学金のための寄付は「後の学生のために役立ててください」という想いが込められているものなのだということを改めて認識しています。
同じように学生総合共済も「たすけあい」の制度です。福武会長理事※の「自分の出したお金を他の人のために役立つようにしてくれないか」という意思を継いで約40年この制度を続けています。そういう面でも「たすけあい」をまさに地でいっているような取り組みであると思います。※福武直先生(1917-1989) 昭和15年に東京帝国大学文学部卒業、昭和23年~35年東京大学文学部助教授、昭和35年~52年に同教授。全国大学生協連の会長理事を1976年~1989年まで務めた。
武川- 大学生協連奨学財団のホームページがあって、そこに寄付者からのメッセージが掲載されています。「自分がやりたいことをやりながら生き抜けることが大切です。それを応援しています」「大学という場所は、社会に出る子どもたちが一番わがままになれる場所だと感じます。こういう制度があなたのわがままの一助になれば幸いです」。これを読むと、何か悲壮な形で寄付するとか義務的に寄付するというのではなく、本当に自分と同じようにほかの人にもいい経験をしてほしいという気持ちが伝わってきます。
中森-
ご自身の大学生活が非常に充実していたので、後輩にも同じように充実した生活を送ってほしい、そういう思いを強く感じるメッセージが多いのは事実ですね。
学生委員会の活動
生協経営を自分事とする
武川- やはり役員になって改めて驚いたのは、学生理事が経営者としての役割も果たしているということです。学生委員会が様々な活動をしているのは知っていましたが、理事会で財務の表を見て、経営状態に対していろいろと意見を出してくれるので、これはなかなか貴重な機会だと思った次第です。生協の経営が結構厳しい面もあるので、学生がそこまで責任を負うのは大変なのではないかと思いつつ、それでもなんとか回っているので良かったかなと思っていました。
私が大学生協連の会長になる前、東大生協での話ですが、選挙で学生理事になった人が理事会で厳しい経営について話している時に傍聴に来て、「こんなに責任の重いことはできない」と、当選を取り下げた。その人はそれだけ真剣に考えてくれて、ちょっとした遊びで立候補したのではなかった、そういう事例もありました。
また、私が東大にいた頃は成年年齢が18歳ではありませんでした。生協で何かやるという時に、具体的には古物商許可証を取ろうとしたのです。でも、1、2年生の理事で未成年の学生は保護者の同意を取るかしないと。
中森-
警察から確認に来るんですよね(笑)。
武川- 今は成年年齢が18歳になったので、もう少しいろいろと法的なことができるのではないかと思っています。
中森-
やはり生協運営を自分事として捉える方が増えるのはとても大事なことだと思っています。中には非常に経営が厳しい状況にある生協で、学生自身が総代会でそれを説明した事例があります。自分たちの日々利用しているお店が赤字なのか黒字なのか、赤字だとしたらその理由は何なのかということを自ら調べて、それを実際に総代や組合員に説明できるようになっていく。そうした学生の変化を見ると、やはり正しく事実に触れ、いろいろな階層の人と話し合う中で、経営を自分事として受け止める感覚が身に付いてくるのだと感じます。
武川- その事例はホームページでも見ました。経営的にかなり厳しい状況の生協で、その大学にある一つの食堂が赤字で閉店検討中になり、総代会で食堂をどうするかということに対してかなり熱心な議論があった。昼の営業のみにするか購買店のみにするかと、いろいろな案が出されたようでした。
そういう形で話し合い、様々なことを想定して多様な選択肢を考えてそれを総代会で決めていく。これはかなり民主的な経営といえるのではないですかね。その生協の総代会の出席率が98.1%と書いてあり、これにも非常に驚きました。
中森-
利用者から見ると、食堂ってみんなも並ぶので長蛇の列。だからこの大混雑している食堂が赤字になんかなりっこない、という感覚なのですね。でも、利用者が一人もいない時間帯でも実はちゃんと職員が作業していて、それに対する人件費がかかっている。食堂事業はどうしても人手がかかるので、総合的に赤字になったりする。トータルで見ると、残念ながら大学生協はなかなか厳しい経営状況にあるといえます。
そういうふうに自分の目線からスタートして、いろいろな人の目線であるとか、自分が今まで見えていなかった景色も含めて情報としてインプットすることで、複眼的に生協のことを考えるようになり、そんなことをみんなと一緒に議論する。そういう経験って非常に貴重だと思います。
昨年からマスコミの記者さんとディスカッションする機会があり、その時のテーマが「若者の投票行動」で、最初に「若者の政治参加や投票行動というのはあまりやれてないよね」というトーンで議論が始まりました。
私は開会の挨拶で「大学生協にはおよそ1万人の学生委員がいて、彼らが自分の生協のことをまさに自分事として、『今うちは赤字なのか黒字なのか』『赤字だから営業時間を短くしようと思いますが、どう?』と、理事会の場で議論して決めているのですよ」という話をしたら記者さんが驚いて「大学生協ってそんなことをやっているの?」と、非常に関心を持って受け止めてくださったのです。私どものやっていることは、民主的なプロセスを経て物事を決めていくという点で結構役立っているんじゃないかなと思うことはありますね。
学生委員会の再生
中森- その他先生がお気付きのキーワードは何かありますか。
武川- やはり学生委員の活動ですね。東大でも明治学院大でも学生委員会がいろいろなイベントをしているのは 知っていたのですが、大学生協連に来て驚いたのは、学生委員が全国に1万人もいるということ。その規模で連帯をしながら連携を取り合っているということ。これは会員生協にいた時には気が付かなかったことです。自分の生協のことは分かりますが、そんなに大きな連帯の網があるということは知りませんでした。
中森-
学生委員もコロナ禍前は約1万1000人いたのですが、それがコロナ禍を経て6000人にまで減ってしまって、いろいろと大変だったのです。やはり関わる学生がこれだけ減るというのは大学生協全体にとっても厳しいことだと当時の学生委員会でも議論して、彼ら的には「学生委員会の再生」と言うのですが、“再生”への取り組みを2021年ぐらいから始めたのです。
実際、もう本当に活動が断絶してしまっているわけですよ。先輩の活動を体験できない間に1年が経ってしまった。それで「さぁ再開だ」と言っても、何をどうしていいか分からないというところからスタートした。それを学生事務局が一生懸命サポートした。層の厚さですよね。
よく言われることですが、他団体では世代が断絶したら、もう団体として存在できなくなることもあるそうです。学生委員会の活動も学生間の継承という面ではなかなか難しく、大学生協がそれを自覚した上で学生自らがしっかり対応して頑張った。本当にここ数年の学生委員会の活躍は立派だったと改めて思います。
武川-
最近学生から「サークルの顧問になってください」という相談が来たのですが、それもやはりコロナ禍で消えてしまったサークルです。停止して何年間かメンバーがいない状態で突然始めようと。大学の中に先輩がいないのでどうしていいか分からないという感じでした。生協の場合も2020年に入学した学生が全然何も分からない状態だったと聞きます。
生源寺先生※が20年度入学生を「コロナ世代」とおっしゃっていましたが、そのコロナ世代が2年生、3年生になった時に、コロナ禍が終わりかけてから入ってきた学生にどうアプローチしたらいいのか、ノウハウもなくて分からないという話を聞きました。それでも他のサークルなどと違って、かろうじて検証されて復活してきたのですから、学生委員会にはそういう力強さがあった。※生源寺眞一先生(1951~) 前全国大学生協連会長理事。農学博士。認定NPO法人樹恩ネットワーク会長、NPO法人中山間地域フォーラム会長、公益財団法人日本農業研究所研究員等を歴任。
中森- その中で大学生協の強みだなと思うのは、やはり学生だけだとどうしても難しいのですけれども、一つは連帯が横から支えたということと、もう一つは生協職員がコミットしたことです。生協職員は長い経験の中で「先輩はこうしていたよ」とアドバイスしたりしていい感じで関わってきた。職員が立ち上げの支援をするとうまくいく生協が結構多かったので、学生が活発になるために生協職員の役割というのは結構大きいと思います。
武川- まさに連帯というのですかね。学生委員と職員の仲が良くて、理事会などの公式の会議以外でも結構つながっていると感じましたね。職員が学生委員を把握しているというか掌握しているという感じはありました。
中森- やはり大学生協の職員は、学生とどういう距離感で接するのかということに長けていますね。中には上から目線で「俺の言うこと聞け!」とアプローチをする人もいますが(笑)、そういうやり方だとあまり学生が成長しないです。自分のことをリスペクトしてもらっているとは思えないので。そうではなく、フラットの目線で「君の意見を聞きたい、だけど自分はこう思う」というようなやり取りをすると、学生も意気に感じてのびのびと活動するということがあるので、やはりそういう生協職員のスキル、どういうふうにその技量を上げていくかというのは、今後の課題だと思います。
武川- 確かに学生委員会が十分に活動・機能するために生協職員の役割は非常に大きいと思います。
中森- とはいえ、学生委員のように生協のことを深く知っていて深くコミットしてくれる学生というのは、全学的にいうとまだほんのひと握りなのですよね。やはり私たちはもっと生協のことをよく知っていて、生協の運営に主体的にコミットしてくれる学生を増やす必要があって、それも今後の課題だと思っています。
協同組合の周知を
中森- 千葉大学で協同組合論の講義をした時の感想文が非常に良かったので、ちょっと読み上げますね。「そもそも生協に総代会や理事会があるなんて知らなかった」それぐらい知っておいてほしいのですが(笑)。「生協は元々売店と食堂だけだと思っていたが、公務員講座もやっている」「新学期アドバイザーというのも生協が育成しているんですね」。
また、「ミールプランで600円のコースを提案しています。600円の昼ご飯って結構高いじゃないかと思いますが、ちゃんとバランスよく食べてもらいたいという思いがあり、そのためにはこれぐらいの金額設定が必要なんですよ」という話をしたら、「そんなに学生のことを思ってくれていたのですね」という感想が結構出ているので、本当に生協のしくみをよく知らない学生さんが大学生協についての講義を受けるとそういう感想を持つというのが、私にとってはすごく新鮮でした。
武川- 確かに協同組合と株式会社の違いも含めて、さほど知識を持っていないということもありますね。私の大学で、ほかの講師のところでたまたま生協についての講義を受講した学生が、私が別のところで「いろいろな社会福祉を提供する団体として株式会社や社会福祉法人や協同組合があります」と話した時に、いきなり「1人1票でしょう?」と聞いてきたのです。そういうことがすぐパッと出てきたということは、それをスローガン的に習ってしまったのだろうと思うのですね。
中森- 先ほどの千葉大の話に戻りますが、協同組合と株式会社との違いを講義で取り上げた時に、「『何をもって平等とするか』という考え方がいろいろある」という感想がありました。株式会社であれば、たくさん株式を持っている人がたくさん議決権を行使できるのはある意味平等なのですが、協同組合の場合はそうではなくて1人1票なのですね。だから、「たくさん出資金を払った人がたくさん議決権を行使できるということではないのです」と話すと「そういう理屈もあるのか」という自然な驚きが協同組合論の感想文にも結構出ていました。
武川- 協同組合が講義の中に組み込まれていることは少ないのですが、日本で生協に入っているのは3063万人(2023年度、日生協調べ)ですので、基礎的な教育の中できちんと押さえておくことが必要だと思いました。農協も生協も、最近は生産者協同組合も含めて、協同組合の考え方を知っておくという教育が必要だと思いますね。
中森- 最近、国際活動を武川先生と一緒にやらせていただいていますが、マレーシアなど日本と違う国の様子を見ていて「この国には協同組合を所掌するガバメントがある」「起業・協同組合開発省がある」と聞いて驚いてしまったのですが、協同組合がその国においてどういう位置付けで、どういう可能性を秘めているのかということでは本当に他の国に学ぶことも多いです。今年は国際協同組合年なので、そういうことも含めて多くの人が勉強するのは大変いいことだと思います。
生協を支えた人々の軌跡
中森- 協同組合について、歴史の長さが強みだと伺いました。詳しく教えていただいてよろしいですか。
武川-
一番感じたのが、学生の親御さんたちも大学時代に生協に加入していたという人が結構多いので、親の世代の方たちは割と生協に対して優しいですね。「生協がやっているのならいいでしょう」という感じが伝わってきます。
これは一番驚いたことですが、東大の140周年で食堂を改修するために卒業生に寄付金を募った時に、大学が造る食堂だから正確には大学に対する寄付なのですが、実際に寄付した人が「生協に寄付しているつもりでいた」と。在学生の親の世代に「昔、生協食堂を利用してお世話になったので寄付する」と言われて、名目と実態がずれている感じでしたね。
もちろん、大学直営の食堂で大学に寄付しようと言われても寄付金が集まったでしょう。ただ圧倒的にその上の世代の方たちは、食堂は生協がやっていて、大学が場所を貸しているだけだと思っている。だから「老朽化した食堂を再建するために生協に寄付しましょう」という流れだったと思うのですね。
中森- 本当に、元々生協を使っていらした方に支えていただいていると随所に感じる瞬間がありますよね。私は以前京大生協で専務をやっていた時、食堂の改装で総長にスピーチをお願いしたのですが、結構コワモテの総長だったので何を言われるかと内心ドキドキしながら聞いていました。でも実際の挨拶では「私の体の半分は生協食堂でできている!」という言葉が出てきて驚きました。やはり保護者や大学関係者からも、とりわけ“食べる”ということを生協が地道に支えてきたことに対しての感謝を感じることがありますね。
武川- そうですね、確かに。
中森- 京都大学は、基本的にそこで学んだ人があちこちの大学に出ていくという性格の大学なので、私たちが日々の接客応対を頑張ることが、回り回っていろいろな大学で「生協さんにお世話になりました」と言っていただける人を育んでいるということを本当にその時に自覚して、京大のパート職員の研修でも「みなさんが毎日やっている仕事がひょっとしたらノーベル賞につながるかもしれへんねん」という話をしたのを思い出しますね。
武川- コロナのクラウドファンディングで京大と東北大で取り組みがあったという話を聞きました。
中森- 本当にコロナ禍は大変でした。大学生協は「毎日学生が大学に来て、お昼は生協食堂で食べて、休み時間は購買で飲み物を買って」ということが事業の基本スキームだったので、それが突然なくなって本当に驚いたし、お手上げでした。どうしようもなかったという状況でした。
そのことを組合員さんにお知らせした時に、京大の教員の方々が「何か生協の助けになりたい」と立ち上がってくださった。最初店舗内でYouTubeの配信イベントをされたのですが、最終的には『京大生協の経営を支えよう』というクラウドファンディングにつながり、卒業生の方などを中心に518万円ぐらい集まったということがありました。それが東北大でも同じように展開され、実際にそれだけたくさんの方に支えていただいたのだということには改めて感謝しかありません。
当時は新聞にも大学生協が大変だということが結構出たので社会的認知もあったし、それで「昔、自分も世話になった」と皆さんに思っていただいて、自分にできることを考えていただいたという感じではなかったかと思います。
組合員が出資者意識を持つこと
武川- 一般組合員が生協に関してスーパーや売店と同じだと思っている人がいることと、会費を払うことでサービスを受けられているけれども、自分が出資したその資金で生協が経営され、お金が回っているのだということを自覚している人がほとんどいないと思われることで、もっと出資者意識を持ってもらうようにするといいのではないかと思います。
自分のお金で営業されているのだと思うと、やはり無関心ではいられなくなると思うので、学生委員だけでなく一般の組合員も経営の当事者であると自覚するぐらいになってもらえればと思います。
中森- 今非常に経営が厳しい状況なので、本当に自分が協同組合の一員として生協にどう関わるべきか、自分が関わることでこの生協の経営がどういうふうに良くなるのだろうかということを、一人一人の組合員さんに真剣に考えていただかなければいけないという思いがあります。
私は大規模生協の現場のみを経験して連合会に来ているのですが、規模の小さい生協は職員と学生の距離感が近いですよね。パート職員さんが「○○くん、元気?」と日常的に挨拶される。ああいう小規模の生協の距離感というのは本当にいいなと思います。
しかし、大学情勢が厳しく、規模の小さい大学が今後存亡の危機を迎えようとしているのが現状です。大学という母体がないと生協も成り立たないので、それは翻って生協の危機でもあるわけです。その状況で大学生協という協同組合がその小さなコミュニティの中で何か役割を果たせないだろうかと思います。
自分たちの大学や生協がこういう状況だということを深く理解し、学生同士で解決策を話し合って自大学の良さを外に発信していく。生協の学生は元気だから、やろうと思ったらできると思います。
大学生協は大学コミュニティの中でいい役割を果たせる可能性があると思うので、連合会としてはそういうことをもう少し実践的にいろいろな生協さんと一緒にやっていかなくてはと思っています。
2030年に向けて
中森- 最後に武川先生から2030年に向けた課題をお聞かせいただけますか。
武川-
「組合員が出資者であるという自覚を持つように」というのが課題かと思います。あとは、18歳人口はどんどん減っていって、(今は109万人)2030年には100万人ぐらい、2040年には88万人程度になると言われています。 生協のある大学は生き残れるだろう、あるいは生協があるからいい大学だというような形で一般に認めてもらえるようになればと思います。
中森- 出資者という認識を作るのはなかなか難しいですよね。生協加入の際にしっかりと組合員に説明をしながら加入していただくというのが本来の姿ではあるのですが、結構慌ただしい手続の中で「とりあえず生協の出資金が〇万円ですから」という感じで加入していただいているのが実情です。加入した後も含めて「生協はこういうところで、あなたが生協の主人公です」ということを、店舗での日々のやり取りを通じて組合員さんに実感していただき、生協の職員が誇りに思えるような組織をつくっていくのが今後の課題ですね。
武川- 「あなたの出資金の使い道はこうです」ということが目に見えて分かるといいと思います。例えば1万円出資したとすると、そのうちの何千円は何に使っているということが可視化されると少しは身近になるのかと。貸借対照表など総会に出てくるようなものを見てもピンと来ないですから。
中森- そうですね、我々が見ている財務諸表が組合員からどのように見えるのか、我々はどのように説明するべきかという、非常に大きな課題をいただいたと認識して、考え続けたいと思います。
武川- まだ伸び代があるのですよね?
中森- 私立大学の新入生の加入率は87.9%なので伸びしろはまだありますし、事業的にも食べることと学ぶことを中心に伸び代はあると思っています。それをいかに突き詰めて学生の生活をより豊かにしていけるかというのが大事なポイントですね。
本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
武川- ありがとうございました。
2025年7月1日 大学生協連杉並会館にて




全国大学生協連第68回通常総会にて