「Campus Life」vol.66

「学際的交流」


全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・
食農学類長)

学部の4年生のときでした。分野が異なる同級生との雑談のさなかに、経済学のある理論について「これはどういうことなの?」と聞かれたのです。たまたまゼミで勉強したばかりでしたが、専門用語を使わずに噛み砕いて説明しようとしました。相手は化学の学生で、経済学の言葉は通じないからです。結局、うまくいきませんでした。そのとき私の脳裏に浮かんだのは、この理論を教科書的に説明はできるものの、本質を深く理解できていないとの思いだったのです。同時に、専門外の仲間にうまく伝えることの大切さを自覚したようにも記憶しています。

私が所属していた農学部はさまざまな専門分野の集合体です。雑談相手の所属も農学部でしたが、学問の基礎は化学でした。生物学や物理学がベースの学科もあります。いわば学科ごとに言語体系が異なるわけです。その壁を乗り越えたコミュニケーションが大切だと感じたわけですが、学問のあり方としても、しばしば目的の達成には学際的な交流が重要な役割を果たすことになります。むろん、農学部だけではありません。すべての大学人が意識すべき留意点だと申し上げてもよいでしょう。

学部を越えた学生や教職員のコミュニケーション。さらには大学の垣根を乗り越えて形成される人的なつながり。考えてみれば、大学生協にはそんな交流の機会を提供してくれる場としての役割もあるはずです。とりわけ学生委員や総代などの役を担う学生の皆さんにとって、学外も含めて異分野の同僚・先輩とつながるチャンスは少なくないでしょう。もちろん、こうした交流の機会は大学生協の活動の副産物ではあります。けれども、さまざまな価値を秘めた副産物であることも間違いないと思うのです。

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・食農学類長)

「Campus Life vol.66 大学教育におけるICT活用の現場を探る」に寄せて


全国大学生協連 学生委員会
2021年度全国学生副委員長
木原 悠駿 さん

コロナ禍を生きる大学生は、周りの人や物事の多様な価値観に触れたり、新しい何かに挑戦したりする機会が格段に減っている環境に置かれています。そのような状況において、「大学生活の充実度が下がっている」という事実が、今号でフィーチャー(feature)されている東海地区のアンケートや、2022年10月に弊会が実施した第56回学生生活実態調査からも明らかになっており、大学生がいかに“ 元気” に過ごせるかが、これからの課題です。ここ1、2年で、いきなり登場したように感じるオンライン授業などの手法の数々も、実は想定より少し早く到来しただけで、いずれは実現されるものであったといわれています。そしてこれからもICT 活用は加速し、大学での学び方がどんどん効率化されていくことでしょう。ではその効率化によって削ぎ落とされる“ 無駄なもの” はいったいどこに行ってしまうのでしょうか。

大学に通い学ぶこと以外にも多くの選択肢が存在している時代ですので、世の中にあふれる情報を取捨選択しながら独学でインプットしていくことは可能でしょう。そういった中で、大学ではたくさんの人と出会い、世代や国籍を問わず価値観の壁を超えて刺激し合う環境にこそ、大きな価値があると私は考えています。ICTの活用が進んでいくと、その力で実現できること・できないことが明確に分かれてくるはずです。そして、ICT だけでは実現が難しい、人と人とのつながりの部分が、大学生協の持つ最大の魅力でもあります。この魅力を発揮していくことで、刺激し合える学修環境を実現していくだけでなく、心身の健康と安全を守っていくことにもつながることでしょう。「つながる元気、ときめきキャンパス」というキャッチコピーの通り、これからも組合員どうしの協同の力で「平和とよりよい生活」を実現していきましょう。

全国大学生協連 学生委員会 
2021年度全国学生副委員長 木原 悠駿


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