「Campus Life」vol.69

経験財プラス信用財

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・
食農学類長)

食べ物は経験財の典型だと考えられていました。経験財とは、その製品やサービスを使ってみることで、それが自分に向いているか否かが分かる商品を意味します。一度味わってみれば判断できることから、食品は経験財だというわけです。けれども現代の日本社会において、食べ物には信用財としての側面が強まっていることも否定できません。信用財とは、消費体験だけでは適否を判断することができず、信頼できる情報を得ることで、使用するか否かを決めるケースのことです。お医者さんが例に挙げられることもあります。薮医者なのか名医なのかは、素人の患者には識別できないからです。

味の良し悪しに加えて、食品の材料の原産地が購買行動を左右する経験も、かなり多くの人々に共有されているようです。もちろん、食品の栄養や機能も重要な判断材料のはずです。原産地や栄養・機能などは、食品そのものを味わうだけでは知ることができない属性なのです。さらに脱炭素社会志向が一段と強まる中で、食材の生産が環境保全に貢献しているか否かの視点も、食品の購買行動への影響力を増すことでしょう。農業が無条件に環境フレンドリーだとは言い難いからです。環境への負荷という点では、食品を支えるフードチェーンに無駄な廃棄がないことも重要です。

経験財プラス信用財としての現代の食品。生協の食堂や購買部の取り組みにおいても、このふたつの側面を念頭に置くことが大切です。

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・食農学類長)

「Campus Life vol.69 学生の食生活を支えるためのresilienceレジリエンス」に寄せて

全国大学生協連
全国学生委員会
2022年度委員長
角田 咲桜

これは私たち大学生協の原点でもある言葉です。この言葉からわかる通り、おそらく学生の食生活問題は現在だけでなく、昔からありました。この60年続いてきたということは、これからも続いていく課題であるはずです。

最近の学生は、勉学・バイトに加え早期からの就職活動など時間の制限も多くなりコスパ重視の生活を選択しています。コストを下げるために、まず挙げられるのが「食事」です。例えば、テスト勉強や課題で時間がないから簡単に作れる食事で済ませる。就職活動でお金がかかるから食事を安く済ませる。これらが食生活を決める上での思考回路となっています。コスパ以前にそもそも食べる気力がなく食べずに済ませる人がいるのも事実です。しかし、長い目で見たときこれらの食生活は、本当にコスパが良い食生活ではないことに、気付ける学生は多くありません。このような今を生きることに必死になっている学生の食生活を支えられるのが大学生協です。

今回紹介されている事例は、新型コロナウイルスによる食生活の偏りなどの学生の食生活実態を基にした取り組みです。これからの大学生協も、学生が食生活の現状を伝え、それを食生活支援にしていく必要があります。

最後に、学生としては食生活を大学生協に支えられるだけでなく、これらの支えを受けながらも、自立をしていく必要があります。大学生活中は学食があります。しかし、社会人になってからは、大学生協が支えてはくれません。つまり自分で考えた食生活を維持する必要があります。大学生協への利用・参加を通して、なぜこの食生活を送っていかなければならないかを、考えられる人を増やしていきたいです。食事を通して、学び考えられる学生が増えれば、学生の充実した食生活、ひいては心と体の健康に繋がっていきます。

全国大学生協連 全国学生委員会
2022年度委員長 角田 咲桜


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