「Campus Life」vol.70

二兎を追う

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・
食農学類長)

二兎を追う者は一兎をも得ず。このことわざは1点に集中することの大切さを強調しているわけです。けれども現実の世界では、二兎を追うことが課題となる場面も少なくないのです。私の専門の農業の分野を例にとると、多くの食料の生産を追求するとともに、肥料などによる環境への負荷をできるだけ軽減することも求められています。むずかしいのは、生産性の向上と環境の保全とのあいだには、一種のトレードオフの関係が作用している点です。あちらを立てれば、こちらが立たずという構図です。この構図のもとで二兎を追って、高いレベルで二兎を得るために重要なのは高度な技術であり、イノベーションです。もうひとつ付け加えておきます。かつては食料の生産拡大のみを追い求めていた時代がありました。環境の価値が意識されていなかったからです。つまり二兎を追うことになるのは、二匹のウサギそれぞれの社会的な評価の変化による面もあるわけです。

学生生活においても、限られた時間のもとで二兎を追うことがあるはずです。なかには三兎と向き合うこともあるでしょう。そこでは冷静なプランが大切です。それぞれの目標の価値を改めて評価することで、ウサギの重要度を確認します。そして限られた時間のもとで実現可能なレベルは技術、すなわち各人のパワー次第というわけです。ただし、ここが重要なのですが、若い学生の皆さんの場合、パワー自体が急速に成長することも織り込んでおく必要があるのです。

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・食農学類長)

『「健やか力」創造計画、それを支える学生たち』に寄せて

全国大学生協連
全国学生委員会
(2022年度)
松田 佳子

「学生ファースト」。福田学長をはじめ弘前大学が大切にしているこの理念の中に、私は大学生協と照らし合わせながら読んでいました。そして弘前大学は「学生ファースト」という言葉を本気で体現しています。大学生協自体もそういった行動が求められていると強く感じています。また、そういった行動の一人者であるべきだと思っています。

大学生協の掲げる理念は「組合員のより良い生活のために」というものです。またこの理念を掲げ、より良い生活を目指し行動する人も、また組合員自身としています。そしてその組合員は大学で生活を送る人、多くは学生を指します。実際に大学生活を送る学生自身が直面している現状に対して、学生自身が声を上げて行動をする……。そこにはそれを支える職員も数多く存在しています。

青森県は短命県1位というのは、青森県出身の私にとっては聞き馴染みのある言葉で、より「健康」は注目されているのだと思います。ですが大学生の健康は、全国的に今現在脅かされています。学長インタビューの中でも協力者として「大学生協」が出てきていましたが、こうした取り組みを全国各地でも、各地の大学生協で、大学と連携をしたりして、積極的に学生を支えていくことが求められています。そして「大学生協」だからこそ、学生自らが学生を盛り上げていく強みを大事にできればと思います。

今回取り上げている記事の中でも学生の声がありました。そこには大学生活へのもどかしさや希望を少なからず記事から読み取ることができます。そして取り上げられている弘前大学の職員の皆さんも、そういった学生を支えようと真剣に向き合い、考えてくださっています。こうした「想い」を行動に移すことは、大学生の心に寄り添い安心を与えてくれます。

最後に、大学生は大学に通い、その地域に住み、そこで生活をしています。そこに関わる多くの人はそんな大学生を思った以上に想ってくれていると、今回の記事で感じることができました。大学生協もその一人者となり、より多くの「想い」を持つ人たちを巻き込みながら、より多くの大学生の生活を支えていきたいと強く感じました。

全国大学生協連
全国学生委員会(2022年度)松田 佳子


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