「Campus Life」vol.71

改めて原点を確認する

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・
食農学類長)

学生としての毎日は、未知の体験や新たな出会いの連続です。初めての一人暮らしであれば、食事に苦労することもあるでしょう。授業も新鮮な発見に満ちています。座学だけではありません。研究室での実験や屋外のフィールドワークが大切な専門分野も多いのです。けれども、多彩で活発な大学生活であるだけに、思わぬ失敗に呆然とする局面もないとは言えません。発生の確率は低いにしても、困難な事態への備えが必要なのです。そこをサポートしてくれるのが、学生総合共済を柱とする大学生協の保障の仕組みです。

共済という表現になじみのない方も多いと思います。英語ではmutual aid、すなわち互いに助け合うことを意味しています。それぞれが少しずつ拠出しながら、危機に直面した仲間をサポートするわけです。学生総合共済への参加は相互に支えるメンバーとなる点で、協同組合の原点とも重なるのです。原点という意味では、もうひとつ確認しておきたいことがあります。それは保障の仕組みが組合員の行動の緩みにつながる事態を避けることです。保障があれば多少の行き過ぎは大丈夫といった緩みを、モラル・ハザードと表現することもあります。これを避けるために学生の皆さんに注意を促すことも、学生総合共済の重要な役割なのです。大学生協は学生の困難な局面の情報を蓄積しており、どんな問題が生じやすいかを熟知している点に強みがあります。これを活かすことも大切なのです。

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・食農学類長)

たすけあいの輪がタテとヨコに

全国大学生協
共済生活協同組合連合会
米山 高生 会長理事
(東京経済大学教授・
一橋大学名誉教授)

学生総合共済は、当時の全国大学生協連会長であった福武直先生のご尽力で約40年前から事業を開始し、生協法の改正により、2010年に全国大学生協連から大学生協共済連に分離されました。学生総合共済の「商品」機能は、40年間の学生生活の変化に合わせて変わってきています。その結果、今の学生の皆様に、より役立つものと自負しております。また、福武先生が最初に導入された頃には、共済を通じた学生同士の繋がりで、社会人になる前の学びの場をという想いがありました。学生自身の運動や活動を通して、今でもその想いは繋がっています。

大学生協と地域生協との連携により、今まで学生総合共済としてできなかったことができるようになり、たすけあいの輪がタテとヨコに広がる可能性について、これからますます深めていければと思います。まず“ヨコ”ですが、今までは大学生協のある大学の学生しか加入できませんでした。現在生協のある大学の学生数は全大学の学生数の約半分ですので、そもそも加入いただけない学生が約半分でした。それが地域生協との連携によって全学生に広がります。次に“タテ” ですが、我々は大学生・院生の期間のみ学生総合共済に加入可能でしたので、卒業された場合は加入対象ではありませんでした。これが今般、「新社会人コース」という新しい商品によって“タテ”の延長ができるようになりました。タテとヨコへの広がりを通じ、学生総合共済はより安定した運営が見通せるようになり、学生生活維持・学業継続にさらに寄与することが可能になります。これからの学生により良いサービスがご提供できますよう願っております。

全国大学生協共済生活協同組合連合会
米山 高生 会長理事
(東京経済大学教授・一橋大学名誉教授)

「学業継続をささえる、学生総合共済」に寄せて

全国大学生協連
全国学生委員会
(2022年度)
鳥井 和真

「自分ごと化」。東京大学 藤井総長がおっしゃるこのキーワードは大学生協としてとても重要なキーワードだと思っています。自分だけではなく相手や周囲を思いやり、自分ごととして捉えれば、それが変化を起こすためのエネルギーとなり、自ずと私たちの手でより良い大学生活を作ることができるはずです。

学生相談ネットワークに関する座談会を読み、10 年以上前から支援のカタチとしてあったとのことですが、今の学生にとって特に必要な存在だと思いました。改めてメンタルヘルスに関する取り組みを一層強めていかねばと感じました。また、このネットワークを組織するのは、当時はかなりハードルが高く、メンバーの熱意と勢いがあり実現したとのことでした。この熱意と勢い、つまり今までと違ったより良い方向へ進めるという変化へのエネルギーの中には「自分ごと化」があったのではないでしょうか。

今回紹介されている、「学生総合共済」に携わってきた学生スタッフ・共済職員の思いから、改めて「たすけあい」の大切さを感じることができました。共済は加入して終わりではなく、ケガを事前に防ぐ予防活動や共済の存在を知らない人を減らしたりする活動が大事になってきます。そういった活動を学生自身の手でつないできました。今回の記事を読み、「たすけあい」の思いをこれからもつないでいくために、加入者を一人でも増やし、給付を受けることができなかったという学生を減らしていきたいと強く感じました。

最後に、大学生協の「学生総合共済」はささえられるだけでなく、学生同士でささえあうことができる「たすけあい」を体現した制度です。考え方として大学生協と通じる部分が多くあります。40 年という長い歴史の中でつながれてきた「たすけあい」の思いをこれからも大学生協に関わる全ての人たちの手でつなげていきましょう。

全国大学生協連
全国学生委員会(2022年度)鳥井 和真


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