読むと人生の答えを見つけられると言われる喜多川泰さんの小説には、数々の生き方のヒントが書かれています。読者に生きる視点を示す多数の作品を生み出す喜多川さんは、読書についてどんな考えを持たれているのでしょうか。
今回のインタビューでは全国大学生協連の調査結果も鑑み、読書を通しての出会いや学びを得ることで、自分を知り豊かな人生を送る指針となるお話をお聞きすることができました。
作家
喜多川 泰 氏
プロフィール
全国大学生協連
全国学生委員会 委員長
加藤 有希(司会進行)
全国大学生協連
全国学生委員会
髙須 啓太
全国大学生協連
東京ブロック学生委員会
副委員長 松井 貴哉
(以下、敬称を省略させていただきます)
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。全国大学生協連の学生委員会で2024年度委員長を務めております加藤有希と申します。昨年度、福山市立大学を卒業しました。喜多川様と同じ愛媛県西条市出身で、講演を拝聴したこともあります。ご著書である『書斎の鍵』を拝読して、お会いできるのを楽しみにしていました。
同じく全国学生委員会の高須啓太と申します。今春、岐阜大学を卒業しました。最近本を読めていませんでしたが、僕も『書斎の鍵』を読み、読書への意欲が呼び起されました。本日はよろしくお願いいたします。
全国大学生協連東京ブロック学生委員会で副委員長をしております松井貴哉と申します。僕も今年、東京学芸大学を卒業しました。喜多川さんの後輩になります。よろしくお願いいたします。
全国の大学生協の中には学生委員会があり、大学生がより充実した大学生活を送れるよう多岐にわたる活動をしています。僕たち全国学生委員会は、各地の大学生協や学生委員の活動を支援したり、全国的なつながりをつくるセミナーを開いたりしています。
学生委員会の活動の一つに読書推進があり、読書を通じての学びを目指して「大学4年間で本を100冊読もう」と呼び掛ける『読書マラソン』を推奨しております。
喜多川様はご著書やご自身のホームページで、読書を通した人との出会い、本との出会いを発信されています。このインタビューを通して、大学生が読書を通じて人との出会い、新たな自分との出会い、本との出会いから、大学生活や自分自身を見つめ直すきっかけになればと考えています。
喜多川泰です。作家として2005年から作品を書いています。本を書くようになったきっかけは、若い人が本を読まないという実態があり、その方々に本を読んでほしいと思ったからです。
第59回学生生活実態調査(2023年)より
全国大学生協連が23年秋に実施した第59回学生生活実態調査では、一日の読書時間を問う設問に「0分」と回答した学生が、ここ数年45%を上回っているという状況があります。読書を通した出会いの素晴らしさ、読書習慣が育むもの、大学生が学生時代に学ぶべきこと・経験すべきことが、将来社会に出た後どのような役割を果たすかということを、このインタビューの中で若者世代に向けてアドバイスをいただきたく思います。
僕は元々塾の先生をしていました。そこで生徒たちに読書を薦めるのですが、まあ読まないですよね(笑)。自分が直接教えている子ですら読まないわけです。「なんで読まないの?」と聞くと、「受験勉強が忙しいから」「読む暇ないから」と言うわけです。
学校の先生や周りの大人が受験を控えた中高生に本を薦めるときに、恐らくその方々も「この本面白いから、受験が終わったら読んでみなよ」とか「今試験期間中で忙しいだろうから、試験が終わったら読んでみな」という前置きをしているんじゃないかと思います。だから、実はその指導者も、読書より目の前の試験や入試のための勉強のほうが大事だという価値観の人がほとんどだというわけです。
だけど僕は、それは日常的に本を読んでない人の意見だろうなと思うんですよね。僕自身が日々本を読む人間になった時に、「日常的に本を読まないから、受験勉強を毎日やる気にならないんだ」と思いました。それをなんとか伝えたいと思って小説を書いたことが、僕のスタートなんです。
2021年の調査で一日の読書時間0分の学生が50%を超えたとき、当時オンラインやオンデマンドの授業が主流になり、テスト替わりに提出するレポートが増えたため、読書に割く時間が減少していったのではないかと結論付けられました。しかし、読書の習慣で知見を深めることで、自分たちの議論につなげたり自身の考え方を深めたりするということが何よりも勉強につながるのだと僕自身感じていたので、喜多川さんの考え方にすごく共感します。