友田オレ 氏 インタビュー

お笑い芸人になるまで

確固たる自信があったわけじゃない

もしお笑い芸人にならなかったらこういう職に就くだろうなとか、将来の展望みたいなものはありましたか。

就活は途中までしていました。メディア系の企業を探していましたが、正直、自分でそれを職業にしたいと本気で思っていたわけではありませんでした。それでもどこかで自分で夢との妥協点を見つけて企業に入ること、それも含めて就活だと思っていたので、そのときには本当にやりたい仕事じゃなくても、何とか楽しさを見出して働くしかないな、と思っていました。

やはり一番モチベーションがあったのはお笑い芸人だったのですね。

かといってお笑い芸人になるという強固な意志があったわけではなく、芸人になれたらそりゃ嬉しいけど、そうじゃなかったら俺は何になるんだろうっていう感じだったんです。だから確固たる目標を定めて大学生活を過ごしていたわけじゃないので、そこはずっとふわふわしていましたね。地に足がついてなかったって感じです。

学生生活実態調査でも、2020年度入学生はコロナ禍自体が就職活動にも影響してしまって、自分が何になりたいのか分からないという人たちの声が多々ありました。


第59回学生生活実態調査概要報告(2023年)より
学生生活は『充実している』、『まあ充実している』の合計
水色は、2020年度入学生(2023年度卒業生)の推移

第59回学生生活実態調査 概要報告

多分どこかに、「コロナで1、2年生を楽しめてないのに、ようやくいろいろな活動が自由にできるようになったらすぐ就活か」「まだ大学生活の旨味を吸ってないのに、就活ってなんだよ」って、ちょっと周りのみんなも怒りみたいな感情を持った感じがしますね。

僕は2019年度に入学していて、まだ対面での大学時代を1年過ごすことができましたが、確かに1年後に入学していたら、自分もそう感じるだろうなと思います。

ネガティブに考えがちな人だと、もう本当に塞ぎ込んでいたのではないですかね。僕も卑屈になっていた時期もありましたが、どこか自分を嫌いになりきれないところがありました。そういう可哀想な自分も愛してあげたい、みたいな感じで。

学生とプロの狭間で思うこと

先ほど、3年生頃に学生とプロの狭間で振る舞いに悩んだというお話をされましたが、今に至るまでにどう克服されたのでしょう。

学生お笑いのコミュニティでは、例えばアングラ(地下)のお笑い文化とちょっと似ているところがあります。テレビなどでやる大衆に向けた主流のお笑いでなく、新しいお笑いを見つけ出そうという精神でやっている人は多分多いでしょう。
その考え方、僕はめちゃくちゃ大好きですけど、だからこそ、その僕がプロの道を選んだ時に、ちょっと冷たい目線を浴びるのかなと思っていました。でもやっぱり、学生お笑いってただ新しいものを目指すというわけじゃなくて、本当に面白いものはみんな好きですよ。誠実にお笑いやっていると、それもちゃんとみんな見てくれていた。ちょっと僕の考え過ぎなところもあったんですよね。

学生として新しいことに挑戦したいという気持ちを持ちながら、やはり不安も感じてしまう部分もあるというお話を聞けてすごく興味深く感じました。

暗中模索からの挑戦

友田様は歌を歌いながらフリップネタをやられていますが、お笑い芸人として新しいチャレンジをされる際のマインドとか、自分自身で大切にされていることなどありましたらお話しください。

多分やっている時は、何かチャレンジしてやろうみたいな気持ちはないです。たまにいらっしゃるじゃないですか、自分を変えるために何か新しいスポーツを始めるみたいな方が。
僕の場合はそういう感じではなくて、割と手近なところで始めるんです。だから正直あまり無理はしてないですね。だけど、人と違うことをした方が楽しいし、今になって考えると、目に見える結果も出やすいのかという気はしています。
でも、正直まだ全然道半ば過ぎてあまり分からないですね。何かで対戦しているわけじゃないので、どう物事に挑めばいいのかとか、まだよく分かってないです。
だけど、例えば僕は2年時ぐらいからネタ動画をYouTubeに上げていたのですけれど、自分のネタ動画をYouTubeに上げる人が周りにあまりいませんでした。僕は、自分としてはなるべく外のいろいろな人に見てほしいという思いがあったので、もう恥を捨ててアップしました。そこはチャレンジと言えるかもしれません。

最近でこそアマチュアの人でもYouTubeに上げて日の目が当たることも多いと思いますが、確かにちょっと前まではあまりなかったことですね。お笑いの養成所に入るのが王道だという考えもあったと思いますが、そのチャレンジ精神、すごいなと思います。

学生生活を振り返って

サークル中心の交流関係

お笑い芸人の友田様には、やはり大学生としての 一面もおありだと思います。友田様は日常生活で友達と一緒に遊びに行くことはありますか。

例えば、サークルの友達や後輩とライブ後に食事に行ったり、映画を見に行ったり、高校時代の友達で上京している人たちに会って遊んだりはちょこちょこしています。

交流の中心はお笑いサークルで作ったコミュニティの方たちですか。

そうですね。本音を言うと、もう少し人間関係を広げていきたいです。せっかく東京に来たからには、もうちょっと足を伸ばした方がいいのかなと思っています。

大学ではどういうことを学んでいらっしゃいましたか。

学部が文化構想学部で、昔の早稲田の第二文学部のようなところなのですが、そこで文化人類学を学び、そのゼミに入っていました。学部の特性上、他学部と違ってつまみ食いのようにいろいろな学部からさまざまなタイプの授業を履修できるんです。自分でも楽しく受講していたと思いますね。

なるほど。広く浅くという感じだったかなと思うのですが、それが何かネタにつながったりはしましたか。

どこかつながっている可能性はあると思います。意識的に何かをネタに転用したとかはあまりないですけど。

2年生以降は大学に行ける機会も増えてきたと思いますが、キャンパスの中で授業の空きコマをどのように過ごしていらっしゃったのでしょうか。

1年生の時にそこまでたくさん友達ができたわけではなかったので、最初食堂や購買に行くのも1人でした。それが習慣化して、2~4年生になってもキャンパス内では1人で行動していました。授業が終わったら部室に行って、みんなとネタの練習をして、夕方から学生主催のライブに出かけていきました。
4年生になると授業数も減ってきて、外のライブ、プロのライブへの参加も増えてきたので、比重としてはキャンパスにちょっと寄って授業に出て、部室に寄って、その後ライブに出て行くみたいな感じに変わってきました。

サークル室でだべったりというよりは、授業が終わったらサークルに行って練習するぞという感じですか。

どちらもありますね。友達や先輩後輩としゃべって、ライブや大会が近づいてきたら、もう根詰めて夜までネタの話をするという感じです。

ネタは身の回りから

お笑いに打ち込んでいらっしゃいますが、お笑い以外の趣味はありますか?

元々お笑いと歌が好きで、それが今の仕事につながっています。その他のマニアックな趣味はあまりないですね。あとは音楽のライブに行ったり、映画を見に行ったり、ご飯を食べに行ったりとか、そのくらいです。

フリップをめくりながらの歌ネタはすごく面白いなと思っていましたが、そういうルーツがあったのですね。

大学生活の気付きや学部の勉強、自分の身近や好きなものがネタにつながったり、自分の強みにつながったりしていると実感されることはありますか。

意識的にここからこれネタにしようと思ったことは多分ありませんが、年上の人の話を聞く機会が多く、大学生活が長い教授の話を聞くことがあったので、そこから受ける刺激はあったと思います。そこで新しい知見を得たり、言葉遣いから学んで参考にしていました。

僕自身も1、2年生の時はコロナ禍中であまり人と接する機会もありませんでしたが、3、4年生になってくると対面で人と関わる機会が増えて、視野が広がったり影響されたりすることも増えてきたと実感しました。

普段ネタの作り方とか、作る際にあるいは他の人に発信する際に心がけていることはありますか。

気になったことをメモしてそれを歌ネタにする場合もあれば、しない場合もある。そこはまちまちなんですけど、歌ネタを作る場合は、その曲を作ってくれる友人がいます。幼稚園が一緒で、小学校違うけど塾が一緒、中高一緒で大学違うけど共に上京しました。
伝え方でいうと、なるべくみんなに笑ってほしいという思いは常にあります。例えば自分は面白いと思っているけれど、みんながどう思うかは正直分からない。そういう時はまず伝える努力をして、場合によってはそもそも伝わらないからもうネタにしないとか、そういう微妙な判断はしています。