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Webを活用した新入生交流会の取り組み
―「宇都宮大学生協 Web新入生歓迎会」インタビュー―

【参加者】

インタビュイー
宇都宮大学
消費生活協同組合
樽井 豊
専務理事

インタビュイー
宇都宮大学
学生委員長
川端 潤之介

インタビュイー
東京ブロック
学生事務局
福地 賢

インタビュー
全国大学生協連
学生委員会
学生委員長
矢間 裕大

インタビュー
全国大学生協連
学生委員会
副学生委員長
田中 蒼大

インタビュー
全国大学生協連
学生委員会
学生委員
安井 大幸

―Web(Zoom)を活用して、オンラインでの交流会を開催しようと至った経緯について教えて下さい。
その際に学生委員として/一人の学生として考えたこと・想ったことも教えて下さい。

田中:
オンラインの交流会を開催した経緯について、学生委員会でどういった議論をされて実施につながったのか教えていただけたらと思います。

川端:
基本的にオンライン交流会については話し合いができませんでした。実家で住む学生もいて、家族が心配しているため大学に来れない人もいました。LINEなどで話し合って準備を進めていました。普段は、体育館という狭い場所で開催していますが、密なのでできないという判断をしました。なにより友達ができることが重要であり、そのために何ができるかを考えました。様々なサイトから検索して、ツールや手法を検討しました。初めてのツールの取り組みで、樽井専務も心配されていましたが、リハーサルを急遽しました。オンラインでは、ゲームは時間がなくてできないので、新入生に質問を考えてもらって、学生委員主導となって「あなたはどうですか?」と質問を振って交流してもらう時間を作る形にしました。5月に開催する新入生交流会では、簡単なゲームは用意したが、どちらかというと交流に力を入れたタイムテーブルにしています。新入生が友達づくりをできるようにすることを第一にして取り組みを行っています。(※取材時は5月中旬です)

田中:
新入生が、友達をつくる機会を作れないというのは大きく話題にもなりました。同じ学生を迎え入れる立場としてどんな取り組みができるか考えたという感じかな。

川端:
自分自身も、新入生交流会に参加したことで友達ができて、授業を円滑に受講でき、課題の相談ができる仲間ができたと思っています。学業継続のためには、仲間づくりの機会がとても大事だと感じています。運営側の負担も大きいので、「やらなくていい」という声も多少はありましたが、改めて仲間づくりの機会の重要性を考えて熱意をもって実施につなげることができました。

田中:
学業の面でも、仲間がいることはとても重要だと思います。つながりを作るために頑張ったという話はとても勉強になります。

―現在、他の大学生協でもWebを活用した交流会の取り組み実施を検討していることが多いと思います。取り組みを行うまでの準備(会議や生協内でのコミュニケーション)や、当日の運営の方法・手順について教えて下さい。

矢間:
WEBを活用した交流会や履修登録のサポート、質問箱の取り組みなどがありましたが、この状況下で何かしらやりたいという想いから、うまく媒体を用いて解消できている取り組みは貴重な事例だと思います。Zoomを活用した交流会の準備や、動画撮影の準備、質問箱を返す仕組みといった具体的な手法についても教えていただきたいと思います。

川端:
専務に「やってみて」と言われて2週間後にWEB公開という過密スケジュールでした。はじめは、焦って専務に確認を取らないままWEB上にアップしてお叱りを受けたこともありました。その後は、しっかりとスケジュールを組んで、発信前に専務に確認してもらった上でアップするようにしました。冬休みと授業開始延長で、授業がなかったので、余力をすべて新学期活動に回ることができたのが幸いでした。WEBにアップするということは必ず記録に残ることを意味しますが、私たちはできればオンライン上に記録として残したくないという考えで動いていました。その理由として、例えば間違った発言をしたときに、「学生が悪い」ではなく、「生協が悪い」という認識をされてしまいます。みんなが大学生活を安心できるように活動しているのに、その目的で発信した内容がかえって裏目に出るとまずいので、基本的にトリプルチェックを実施していました。まずは担当でチェック、次に学生委員会全体でチェック、その上で委員長・副委員長で最終確認を取り、最後に職員の確認が取れれば完璧という流れにしていました。執行部が中心に職員に連絡を取ってアップしていました。特に、履修に関する動画は、新2年生だけで作成する中で、先輩がバックアップして動画の構成を一緒に考えたり、アドバイスをして、結果的に1日半という短い作成スパンでアップすることができました。その間にも、ずっと質問箱に履修に関する質問が届いており、確実に履修に関する不安が新入生にあると考えて、不安解消すべきだと判断したことで動画をアップしました。

矢間:
たしかに3月の対応はイレギュラーでした。こうした事態は二度と起こってほしくないと思う一方で、スピード感をもった活動や、質問箱に届いた声から確信をもって履修に関する取り組みを展開できたのはとてもすごいと思います。集まったリアルな悩み・声を、活動に繋げられるのは大学生協らしいと感じました。ここまで具体的な手法の話を委員長からしてもらいましたが、その準備の様子を専務が見ていて感じたことがあれば教えてください。

樽井:
急遽行うことになった取り組みではありますが、学生委員会に素地はあったと思います。まず、宇都宮大学の学生委員はかなり細かく分担制になっていて、新入生交流担当、履修相談含めた相談会など新学期の企画ごとに担当がいて、他にも広報など年間の活動の区分けがある組織です。そういう専門性を持って取り組むことが好きな人が集まっていて、その総体で学生委員会を形成しています。だからこそ、考えを出す輪がたくさんあって、それぞれの専門性を活かしたり、組み合わせたりして新しい取り組みを作ることが普段からできている組織です。履修相談の動画を作る上でも、実際に動画を撮影する人と、内容を考える人と、実際に話す人と細分化して取り組んでいました。普段から、それぞれ得意なことがあるメンバーが、分担しあって活動できていることが、うまくいった背景にあると考えています。そして、質問箱の取り組みも前から少しだけやっていました。今年はたくさん質問が出ることが予想されるので、Twitterでの発信だけではなく、質問箱の紹介を新入生サイトのトップページに持ってきました。たくさん質問が届いたら大変だよと言いつつも、トップページに持ってきて目立つようにしました。そして、質問が増えてきたら種別にBOXを分けて整理したりすることもできました。それぞれに好きな・得意な学生委員がいて、率先して取り組むことで、全員の力を結集することができたので、見ていてたくましい存在だなと感じています。たまに間違いも起こすけど(笑)、全体の活動としてはとてもいい活動をしていると思います。特に、WEB関係は、私たちの時代のレベルとは全く違うくらいうまく使っている印象です。学生委員が得意としていることは、餅屋に任せるという気持ちで、頑張ってと任せることができました。

矢間:
お話を聞いていて思ったのは、宇都宮大学生協学生委員会で、普段から積み重ねていたことが、緊急時に力を発揮することができたのが成功の要因だと感じました。日常の頑張りが、緊急時にもつながるということを、改めて他の大学生協にも気づいてほしいと思っています。

―実際に参加した人の様子・反応について教えて下さい。また、この取り組みを行ったことで生まれた成果があれば教えて下さい。

田中:
素敵な取り組みですが、実際の参加者の声で印象的だったものがあれば教えて下さい。

川端:
特に、質問箱に900件ほどの質問が届いたが、その質問の中に感謝のメッセージが届くことがあります。ごくたまにではありますが、感謝のメッセージが届いたり、「この子が困っているから助けてあげてください」という質問が届いたりします。直接解決策を提示できなくても、まずは店舗に行ってみることから提案することで、授業の不安が解消されたこともあり、たくさんありがとうをもらえたことは嬉しかったです。自分たちの活動が無駄じゃないということを気づくことができました。ただ、新入生が楽しみにしていてくれたであろう、交流会やお料理教室などの企画については、オンライン上での若干一方的な活動だったため、レスポンスが少なかったところが悩みどころです。アンケートを取っても「対面でやってほしい」といった声が多く、新入生のニーズを学生委員会の想像だけで進めていくのにも限界を感じました。企画に参加した新入生に対しアンケートはとっていますが、参加した全員の声を集めきれているわけではなく、ましてや全新入生の声は集められていないので、どう新入生の願いを集めきるのかは課題だと思いました。今やっている実態把握の取り組みは、ライフスタイル分析と4年生を対象とした「まるごとアンケート」しかない状況です。果たしてそれだけですべて集めきれるのかという不安もあります。1・2・3年生からも声を集めたいですが、現行のV&Aは、SNS時代に合っていない内容なので改訂して、様々な方法で声を集めたいと考えています。本当に声を把握できているのか分からないという点がとても不安で、少しのメッセージを印象的に捉えているというのが実態といった状況です。

田中:
オンラインでの取り組みで、学生委員も集まれていないので、声の分析はこれからいまやっていくところだと思います。そもそもの分析する声が偏っているということも難しい点ですね。それでも、質問箱に「ありがとう」や「困ってるから助けて」という声が届くのは、学生委員会が頼られる存在になっている裏づけだと思います。これからも頑張って下さいね。樽井専務からみて、大学との関係や新入生・保護者との関係で感じてることがあれば教えて下さい。

樽井:
質問箱への感謝の中身は、「履修がわかりやすかった」とかの声が多いです。本来であれば、対面の履修相談の時には、「この講義が人気あるよ」とか伝えていると思いますが、オンラインでの展開となる今年は、動画を大学が見る可能性もあるので、一切ダメよと伝えました。その上で、非常にわかりやすい動画を作ってくれました。この動画は、大学の人も見ていたと思いますが、大学の事務局も、今学生に必要とされていることが何かということを、その質問箱の内容を見て参考にしていたという気がしています。時には、生協に聞く質問ではないものも届きますが、回答するために大学へ問合せをすると、大学もかなり混乱して忙しい様子でした。大学も大混乱する中で、大学の就学支援課に質問が集中しすぎるところを、生協が説明することで大学の負担を軽減することもできたと感じています。生協は、生協の立場でしか説明はしないし、生協が答えるべきではない質問は、大学の就学支援課に質問してみてくださいと答えることもありましたが、就学支援課に直接行く電話・質問の負担を生協がワンクッションとなって分散することもでき、少しでも役には立てたのではないかと感じています。ワンクッションおくことで、保護者も安心できたかもしれません。関連して、対面での履修相談などの企画は原則禁止されましたが、スーパービギナーコースというPCセットアップ講座は対面で展開しました。直接会う企画は禁止されてましたが、このままオンライン授業に入ると、履修登録以前に、全くPCの使い方やWebの活用が分からない人も出てくるかもしれないという懸念がありました。そこでとにかく分散させて開催するので、対面で開催させてほしいと大学にお願いし、4月11日・12日に数名の学生スタッフに来てもらい、時間制・予約制で開催しました。結果的に100人以上が参加しました。やはり、PCのセットアップができないことによって、履修もできなくて、大学をドロップアウトする人が出てしまうと悲しいという想いがあります。僕らなりの方法で、大学生活のスタートに必要なバックアップはできたと感じています。その中で、学生委員会の活動はかなり活きたし、「誰一人取り残さない」というSDGsの考え方からも、大学・学生に貢献できたと感じています。ちなみに、新入生の保護者に聞くアンケートを行っていますが、今年の新入生・保護者の受け止めはかなり見物だと思います。相当いろんな意見が出てくる気がしていて、今後の活動を考える上でも重要な資料になるでしょう。大学生協連が取り組む「緊急!大学生アンケート」にも、生協職員は想像できていなかった声が多くありました。例えば、「ここまで来たら半年授業開始をずらしてほしい/1年ずらしてほしい」という声もたくさんありましたが、僕にとってはかなり意外に感じて、本当にリアルな学生の声を理解できていたのか省みる機会になりました。この「緊急!大学生アンケ―ト」は、これからの大学生協の活動を考える上でかなり役に立つと思います。今年の新入生・保護者のいろいろな声を分析して、来年にむけていろいろ考えることが楽しみです。

田中:
お聞きして思ったのは、「緊急!大学生アンケート」で、教材PCがうまく使えないといった声が多くあるなかで、新入生に寄り添えた取り組みができたと思います。その様子を、大学もしっかりと見てもらえたと思います。大学との関係では、総代会での報告も楽しみですし、大学からも面白い意見を伺うことができるのではないかと思いました。

―2021年の新学期に向けて、新学期活動に対する想いや意気込み、全国の仲間へのメッセージをお願いします。

矢間:
最後に、全国の仲間(新入生とその保護者)に向けてメッセージをお願いします。

川端:
とにかく生協は、組合員の「出資・利用・運営」の三本柱もありますが、その大前提に「学生の生活のためにある」ということを知ってほしいと思っています。生協があるから、学業や課外活動がしやすくなる、スキルアップがしやすくなる。これらは、自分だけで実現することも可能ではあり、不必要と言う人もいると思いますが、使えるものやつながりは全部使って、大学生活をより彩り豊かなものにしてほしいと思います。彩り豊かになることで、さらに自分の可能性が広がるので、そのサポートをできたらという想いで私たちも活動しています。

樽井:
まずは早くキャンパスに戻ってこれるようになったら、「一緒に楽しみましょう」と伝えたいです。とにかく学生がいないところで、職員が少しいるだけですごく寂しい。新入生はじめ学生が早くキャンパスに戻ってきてほしいと願うばかりです。大学の中で事業をしている存在として、キャンパスに学生がいないのは本当にさみしいです。早く戻ってこれるようになったら、一緒に楽しみましょう!

矢間:
学生がキャンパスに通い、一緒に楽しめる日が早く戻って来てほしいと心から願います。ありがとうございました。

(2020年5月26日 インタビュー実施)