【主催】全国大学生活協同組合連合会
2005年から始まった全国読書マラソン・コメント大賞は毎年たくさんの大学生にご参加いただき、2024年度に20回を迎えました。第20回全国読書マラソン・コメント大賞は、開催期間中にWebで投稿していただいたコメントおよび大学生協の各店舗にご提出いただいたコメントカードのなかから選出させていただきました。
2024年は読書マラソンのWeb投稿が大変盛り上がり、レベルの高いコメントが揃いました。1月23日に大学生協会館で開催された本選考会には13名の選考委員が集まり、一次選考を通過したコメントの中から熱い議論を経て、各賞が選ばれました。
今回は金・銀・銅賞授賞の8名のコメントをご紹介します。
※金・銀・銅賞の皆様には、各賞授賞後、手書きで清書していただきました。
素晴らしい賞をありがとうございます! 光栄です。ブッダの言葉を全て信じているわけではありませんが、「こういうとき、ブッダならどう考えるだろう」と立ち止まることで道が開けることがあります。皆さまにも素敵な本との出会いがありますように!
このたびは、光栄な賞をいただきありがとうございます。コロナだったからこそかみしめた悔しさも、コロナでなくともきっと向き合わざるを得なかった苦しみも、程度は違えど、一人ひとりの方がもっていらっしゃることだと思います。それらをすべてひっくるめてあの時に流れていた時間を肯定してくれるからこそ、この本は心に響くのだろうと思っています。
徳井 翠さん
(北海道大学)
『切手デザイナーの
仕事』
間部香代/グラフィック社
素敵な賞をありがとうございます。切手がどのようにデザインされているのかを知るのはすごく面白くて、私はあっという間にこの本を読み切ってしまいました。切手にそれほど興味がなくても、一度でも切手を目にしたことがある人なら充分この本を楽しめると思います。ぜひ、手に取ってみてください。
多田絢音さん
(名古屋大学)
『生殖記』
朝井リョウ/小学館
本には人生を豊かにする力があります。悲しい気持ちに寄り添い、乾いた心を笑いで満たし、悩める人を導く、そんな素敵な力です。このたびは素晴らしい賞をいただき、光栄に思うとともに、私の言葉が誰かと本の出会いの機会となれば幸いです。
太田明奈さん
(愛知教育大学)
『他者といる技法』
奥村 隆/日本評論社
素敵な賞をいただきとても嬉しく思います。心の中に渦巻いていた気持ちがたしかな言葉で表されていたとき、靄が晴れていくような思いがしました。この本との出会いに感謝します。みなさんの大切な本との巡り合わせを願っています。
三浦健太郎さん
(西南学院大学)
『思考の整理学
新版』
外山滋比古/ちくま文庫
このたびはこのような賞をいただき、ありがとうございます。高校まで自ら本を手に取ることもなく、大学に入学してようやく本を読み始めた身として、今回の受賞は身に余る光栄です。また、受動的に本を読むだけでなく、それを自身の言葉で綴るこの読書マラソンというイベントは、漠然と心に抱いたモノを言語化するひとつの思考の整理にもなったと感じています。
亀山奈季さん
(新潟大学)
『早朝始発の
殺風景』
青崎有吾/集英社文庫
選出いただきまして、大変幸甚に思います。読書が好きなあなたにとって、本とは何でしょうか。私にとって本はポケットサイズの旅です。新しい自分との出会い、失ったものとの再会、全く違う価値観との触れ合い、もしくは単なる現実逃避。どなた様もが良い旅に出られることをお祈り申し上げ、受賞の感想に代えさせていただきます。
國井真優さん
(千葉大学)
『きみはポラリス』
三浦しをん/新潮文庫
このたびは光栄な賞をいただきありがとうございます。この本にはさまざまな恋の形が詰まっています。正解なんてない、まばゆい恋の光が読んだ方の心を照らしますように。
はじめて「全国読書マラソン・コメント大賞」選考会に参加させていただいたが、あっという間の三時間半だった。自分が考え、用意してきたことが、学生たちの発言によってことごとく覆っていく、そんな稀有な経験をした三時間半でもあった。
思うに、ぼくたち社会人より、学生たちはもっと自分の人生を賭して本を読んでいるようなところがあるのだ。実際、一冊の本によって人生が大きく変わるという経験をしている若者はすくなくないし、応募されたコメントを読んでいると、まさにその瞬間に立ち会っているような気分になることもあった。
なかでも印象的だったのは、ノンフィクション部門の大賞に選ばれた『ブッダのことば』のなかの「勉学が食っていくための地図だとすれば、ブッダの言葉は人生を渡る羅針盤だ」という一文で、しかしこのコメントのすばらしいところはその前半の「『大学生のうちにやっておくべきこと』とか『20代にしかできないこと』とか、目に鼻に口に押し寄せて息ができない」という一文で、この文章の迫力が審査員たちのこころを撃ち抜いたように思う。
若いときでなければ読めないという本は多い。ぼくが経験的に知っているのは、学生のときに大学で学んだことと、その四年間で読んだ本が、その後の自分の核となるということだ。
会社という組織が教えてくれるのは、人生全般のことではなく、その組織のなかでの人生であり、教訓であり、生きる価値であって、その教えのなかには、当たり前かもしれないが、組織を外から見るような視点はほとんどない。そうすると、組織が誤ると、自分の人生までが誤ることになる。だから、先生たちはことあるごとに、勉強をしろ、本を読めというのだ。たぶん。
学生時代のあいだに100冊の本を読めば、なにかが確実に変わるだろう。ちなみに、今回の応募作のなかでもっとも応募が多かった本はノンフィクション部門だとアンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)で、文芸部門は朝井リョウ『正欲』(新潮文庫)であった。
島田潤一郎(夏葉社)
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