手に取りたい文芸誌ガイド

特集「文芸誌、読む! 知る! 語る」記事一覧

手に取りたい文芸誌ガイド

 
文芸誌って、実はすごく自由で、すごく面白い。
でも、どれを読めばいいの?
そんなあなたのために、7つの文芸誌が集まりました。
ページをめくるたび、新しい言葉や世界と出会う。
そんな体験をここから始めてみませんか?
   
 

『スピン/spin』(河出書房新社)

【刊行】
年4回 3月・6月・9月・12月の下旬 /16号限定
【定価】
330円(税込)
【URL】
https://spin.kawade.co.jp
 

 2026年に創業140周年を迎える弊社が、そのカウントダウン企画として「日常に読書の栞を」をコンセプトに16号限定で創刊したオールジャンルの小さな雑誌。雑誌の命名者は作家の恩田陸さんせわしなく流れる日常に挟まり、ふと立ち止まってもらえる「栞=スピン」のような存在であり、日常に少しの「変化(回転=スピン)」を与える雑誌を目指します。小説からエッセイ、コラム、企画連載まで、毎号ジャンルを超えた作家による作品をお届けします。

 

おすすめポイント!

 値段の安さはもちろんですが、作家(小説、短歌、詩、エッセイ)・ミュージシャン・声優・脚本家etc.と幅広いジャンルの書き手が紡ぎ出す文章に触れることができます。また、他の文芸誌に比べて「厚くない」のはポイントだと思います。
 

みなさんにおすすめの企画はコレ!

連載書評「絶版本書店 手に入りにくいけどすごい本」
 毎回、様々なジャンルの書き手が「絶版本」を紹介。この企画から復刊されることもあり、ご注目いただければと思います。
 
 

『GOAT』(小学館)

【刊行】
2024年11月27日(GOAT Autumn 2024)、
2025年 6月4日(GOAT Summer 2025)
【定価】
510円(税込)
【URL】
https://dps.shogakukan.co.jp/goat
 

 誌名の由来は、紙を愛してやまない《ヤギ》と、《Greatest Of All Time(=史上最高の)》の頭文字から。「小説を、心の栄養に。」がモットーの、かつてない文芸誌。エンタメと純文学、国境といった線引きは一切なく、編集部員が「心の底から読みたい、みんなに読んでほしい」小説をジャンレスに掲載。新たな読者に出会うためのアクセシブルな取り組み(読書バリアフリー)、小説界にとどまらないクリエイターの発掘にも積極的にGo at(=取り組む)している。

 

おすすめポイント!

 この時代に紙の文芸誌を出す、ということの意義を考え、サステナブルであることも大きなテーマにしています。大王製紙の再生紙プロジェクトとコラボし、製造残滓を紙の原料として再利用する「Rems」(リムス)を本文用紙の一部として使用。また、小学館の「ZERO NOTEBOOK」プロジェクトの再生紙(コピー用紙)を使ったチラシも投げ込んでいます。
 

みなさんにおすすめの企画はコレ!

GOAT×monogatary.com文学賞
 ソニー・ミュージックエンタテインメントが運営する投稿サイト「monogatary.com」とコラボした掌編小説コンテストを実施しています。審査委員長は加藤シゲアキ氏。大賞受賞作と選評は「GOAT」誌上に掲載。こちらも注目!
 

こちらも注目!

神保町&京都九条BOOK HOTELにGOAT部屋ができます!
 「GOAT」第2号の「京都」特集の舞台にもなったBOOK HOTEL 京都九条と、その系列ホテルのBOOK HOTEL 神保町とのコラボレーション企画として、GOATのメインマスコットキャラクター「ゴートくん」をモチーフにしたスペシャルルームを準備中。
文芸と本を楽しむ宿「BOOK HOTEL」で、GOATの世界観に浸れる宿泊をお楽しみいただけます。
 
【期間】
予約開始:2025年冬頃~
【内容】
  • 「GOATくんルーム」GOATくんをモチーフにしたオリジナルルーム(アート・装飾・選書)
  • 宿泊者限定で「GOAT×BOOKHOTEL」コラボノベルティの提供および販売
  • 一部SNS投稿キャンペーンや来館特典も予定

   
 

『小説現代』

【刊行】
毎月22日(ただし、年に合併号が3回あります)
【定価】
1,000円(税込)※号によっては特別定価になるときもあります
【URL】
https://tree-novel.com/author/shousetsugendai/
 

 創刊60年を越える、講談社のエンターテインメント“最前線”に立つ文芸小説誌です。
 2020年、「小説現代」はリニューアルしました。
 連載小説中心のスタイルを見直し、長編全編一挙掲載を主軸にすえ、短・中編、エッセイ、コラム、インタビュー、対談など、毎号、単体でも楽しめる新たな読み物雑誌になりました。
 新人賞(「小説現代長編新人賞」)も主催しています。朝井まかてさん、塩田武士さんなどのベストセラー作家もその新人賞ご出身です。

 

おすすめポイント!

 毎号、メイン企画が違いますので、バックナンバーをさぐっていただき、好きな言葉(たとえばホラー、たとえばミステリー、たとえば将棋など)が表紙にある号をぱらぱらとめくっていただくのをおすすめします。もちろん、好きな小説家のお名前が載っている号を眺めていただくのも楽しいです。
 
 

『オール讀物』(文藝春秋)

【刊行】
隔月の22日(年6冊発行)
【定価】
1,575円(税込)
【URL】
https://books.bunshun.jp/list/mag/ooru
 

 エンターテインメント系の小説を中心に、エッセイ・対談・コミックエッセイがぎっしりと掲載された総合エンタメ誌。長く活躍するベテラン作家から勢いある新人作家までが腕を競い合い、時代小説からミステリーや警察もの・恋愛やファンタジーまで幅広い一編読み切り作品が並びます。
(一部は連載)
 日本で一番有名な文学賞「直木賞」 (年二回)の発表雑誌です。

 

おすすめポイント!

 本が好き、色々なものを読んでみたい、今後の人生で楽しんで追いかける作家を開拓したい、と思っている人には絶対おすすめ。旬の人気作家はもちろん、長い間活躍し続けている大御所作家まで、バリエーション豊かな最新小説20本前後がこの一冊に入っているから、絶対にお得。1,500円で、本5冊分くらいの満足が得られます。
 

みなさんにおすすめの企画はコレ

9・10月号「直木賞発表」号 選評&注目作
 「27年ぶり芥川・直木ともに該当作なし」により、文学賞と「売るためのイベント」との違いが注目され大きなニュースになりました。この機会に、一流作家9人が筆をふるった渾身の「選評」を読んでみて欲しいです。文学に信頼と興味が出てくると思います。
 

こちらも注目!

 文藝春秋の文藝局全体の取り組みとして、作家さん同士の対談・トークイベント・「書き方講座」などなど折に触れて開催→イベント動画を配信販売しています。毎年開催の「高校生直木賞」も12回を数え、全国の高校生から選ばれた作品の著者(受賞者)をお招きする8月の「高校生直木賞夏休みイベント」も盛況です。
 
 

『週刊朝日ムック「小説トリッパー」』(朝日新聞出版)

【刊行】
季刊 3・6・9・12月/18日ごろ
【定価】
1,430円(税込)※通常価格
【URL】
https://publications.asahi.com/category/magazine/tripper.html
 

 2025年夏季号で創刊30周年を迎え、記念号は初の増刷となりました。総合文芸雑誌(季刊誌)としてジャンルを問わず、面白いと思える作品を掲載しております。篠田節子さん、恩田陸さん、長嶋有さん、垣谷美雨さんの連載が開始、秋季号以降も注目作家の創作が続々掲載予定です。

 

おすすめポイント!

 ジャンルレスな文芸誌です。芥川賞受賞作の今村夏子さん『むらさきのスカートの女』や鈴木結生さん『ゲーテはすべてを言った』や25万部突破のベストセラーである小川哲さん『君のクイズ』など一気読みできる中編小説から時代小説、評論まで幅広く掲載しています。手に取っていただければ、必ず好きな作品に出会えるはずです。
 

みなさんにおすすめの企画はコレ

26年春号よりプチリニューアルを計画しています
 今年入社した新人編集者をはじめ、若手編集者が考えた企画や連載を始める予定です。ぜひお読みいただけると嬉しいです。
 

こちらも注目!

 11月にトリッパー30周年企画として25年夏季号に掲載した「30人の作家による30の掌編小説」をまとめた『30の短編小説』が単行本として刊行されます。青山美智子さん、朝井リョウさん、宮島未奈さん、吉田修一さん、米澤穂信さんなど豪華な作家陣による大変読み応えのある一冊です。刊行イベントも計画中です。
 
 

『すばる』(集英社)

【刊行】
毎月6日
【定価】
1,100円(税込)
【URL】
https://subaru.shueisha.co.jp/
 

 今、面白いものは何か。ジャンルに捉われず文学の最前を追う文芸誌です。
 注目を集める新人作家から人気実力を備えたベテラン作家まで、小説作品を中心に幅広く掲載しています。社会と時代を反映する特集を組み、批評や対談、海外文学作品の翻訳、映画、美術、演劇の紹介にも力を入れています。
 最近では「すばる文学賞」で鮮烈なデビューを果たした大田ステファニーさんの『みどりいせき』(第37回三島由紀夫賞受賞)が話題を呼びました。

 

おすすめポイント!

 やわらかいテーマから社会問題に切り込むものまで、文学を通して「今」をどう捉えるかを考えた大型の特集を年に何度か組んでおり、大学生のみなさんにもきっとご興味を持ってもらえるものがあるかと思います。読み切りの小説から評論、インタビューや対談、ルポなど多彩なコンテンツで構成されています。美術展、映画、演劇のレビューページを持っていることも小誌の特徴の一つで、隅から隅まで楽しんでいただける文芸誌だと思います。
 

みなさんにおすすめの企画はコレ

「笑い」はむずかしい(2025年10月号※現在発売中)
 最新号の特集です。世の中のコンプライアンス意識が高まるなか、「笑い」の質が問われるようにもなりました。作家・滝口悠生さんと落語家・立川吉笑さんの対談、美学者の鈴木亘さんとその弟である芸人・鈴木ジェロニモさんの対談、高瀬隼子さんと石田夏穂さんの小説、芸人・九月さんのロングインタビュー、作家・星野智幸さん、漫画家・増田こうすけさん(『ギャグマンガ日和』作者)のエッセイなど、多角的に「笑い」に迫ります。
 
 

『文學界』(文藝春秋)

【刊行】
毎月7日
【定価】
1,200円(税込)
【URL】
https://books.bunshun.jp/list/mag/bungakukai
https://note.com/bungakukai
 

 「文學界」は1933年創刊の、株式会社文藝春秋が刊行している月刊の文芸誌です。毎号、創作や特集を中心に、様々な企画を掲載しています。年に一度行っている「文學界新人賞」からは石原慎太郎、松浦理英子、吉田修一、長嶋有、砂川文次、九段理江らを輩出。又吉直樹『火花』、村田沙耶香『コンビニ人間』、市川沙央『ハンチバック』など、ベストセラーや社会現象になる小説も掲載してきました。まだ見ぬ言葉と出会う可能性を、誌面に詰めこんでいます。

 

おすすめポイント!

 文學界は創作のほか、毎号ではありませんが、特集を企画しています。「短歌」「エッセイ」など文芸のほかのジャンルや、過去には「ファッション」「ギター」「お笑い」「心霊現象」など、様々な分野と文学を結び付けた特集を行ってきました。あなたの興味に近い特集もあるかも? 最新号だけではなく、図書館などで、バックナンバーも見ていただけると嬉しいです。
 

みなさんにおすすめの企画はコレ

國分功一朗×若林正恭(オードリー)の対談
 不定期で行っている、哲学者の國分さんとお笑い芸人の若林さんの対談です。最新回が10月号に掲載されています。この時代をどう生き抜いていけばよいか、お二人の対話を、大学生の皆さんにぜひ読んでいただきたいです!
 

こちらも注目!

 まだ正式に決まっていませんが、「文学フリマ」への出店をまた予定しています。
 
 

ご協力いただいた各誌の皆様(敬称略)

  • 河出書房新社「スピン」編集人/尾形龍太郎
  • 小学館 出版局 文芸編集室/三橋 薫
  • 講談社「小説現代」編集部/大庭大作
  • 文藝春秋「オール讀物」編集部/山口由紀子
  • 朝日新聞出版書籍編集部/山田京子
  • 集英社 すばる編集部/渡邉彩予
  • 文藝春秋「文學界」編集部/浅井茉莉子
 
 

この文芸誌がすごい! 編集者が唸る注目誌

「スピン/spin」/尾形龍太郎

Q.注目している他誌は?
A.『GOAT』(小学館)とにかく豪華で安い。
Q.同じく他誌でこれはすごい!と唸った企画は?
A.「文フリ」で売っているZINEの特集はそれぞれの「やりたい!」が出ていて、全般的に面白いです。

 

「GOAT」/三橋薫

Q.注目している他誌は?
A.『小説トリッパー』(朝日新聞出版)デザイン、ジャンルレスで魅力的なラインナップに惹かれます。

 

「小説現代」/大庭大作

Q.注目している他誌は?
A.『GOAT』(小学館)造本も中身もとても贅沢なので、すごい!と思いました。
Q.同じく他誌でこれはすごい!と唸った企画は?
A.『オール讀物』(文藝春秋)2024年7・8月号の「有栖川有栖トリビュート企画」は、楽しかったです。

 

「オール讀物」/山口由紀子

Q.注目している他誌は?
A.『文學界』(文藝春秋)文学の通っぽさと関心のオープン具合のバランスが良い。
Q.同じく他誌でこれはすごい!と唸った企画は?
A.『文學界』の「私の身体を生きる」2024年
島本理生さん、村田沙耶香さん、西加奈子さんら人気女性作家17人が「自分の体について」真面目に赤裸々に語っている。書籍化済。誰もが抱える想いや具体的な事象を作家に書いてもらう真正面な強さのある内容。現在はリレーエッセイで男性編「身体を記す」継続中。

 

「小説トリッパー」/山田京子

Q.注目している他誌は?
A.すべての文芸誌 どういった方々がご執筆されているか、毎号興味深いです。
Q.同じく他誌でこれはすごい!と唸った企画は?
A.『小説新潮』(新潮社)生まれたての作家たち/『群像』(講談社)孤独の時間。など
特集としても読みごたえがありますし、その後、書籍化できる企画の強さも参考にしなければ、と思っています。

 

「すばる」/渡邉彩予

Q.注目している他誌は?
A.『文藝』(河出書房新社) 特集の切り口やタイトルがいつも面白く唸らされます。
Q.同じく他誌でこれはすごい!と唸った企画は?
A.『ユリイカ』(青土社)特集自炊 丁寧な暮らしからドカ食いの愉悦まで…食と生活の変奏
「家庭料理」とは異なる「自炊」について、社会学的、哲学的、歴史学的、ジェンダー学的、美学的、生史的……ありとあらゆる角度から考える特集。目から鱗の視点ばかり、それなのに全て自分と関係していて面白かったです。

 

「文學界」/浅井茉莉子

Q.注目している他誌は?
A.文芸誌全て
Q.同じく他誌でこれはすごい!と唸った企画は?
A.『新潮』(新潮社)「日記」リレー
2018年、2021年、2023年など、何度か行っている新潮の日記リレー企画です。何年経って読んでも面白いです。

 
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