眠いなぁ、でも、一昨日から読んでいる『さきちゃんたちの夜』(よしもとばなな/新潮文庫)は、どうしても夜に読みたい。著者のよしもとばななさんは「すごくおいしい三時のおやつのような、夜中のコーヒーとチョコレートみたいな、そういう本にしたかったです」と言っている。だから、私もコーヒーとチョコレート3粒を傍らに、色んな「さきちゃん」に会いに行く。
赤い背景に怪しげな顔の三日月がニヤリとこちらを見つめてきた。見つめられた瞬間、これは家に連れて帰るしかないなと思った。まさに一目惚れ! 『変なお茶会』(佐々木マキ/絵本館)、そう、これは絵本だ。
愛知に用事があったため、私は札幌から飛行機で名古屋へと向かっていた。機内で手に取ったのは推理小説の『天帝のつかわせる御矢』(古野まほろ/幻冬舎文庫)。作者と同名の主人公・古野まほろは親友の柏木とともに寝台特急に乗る。そこにいたのは十二人の乗客たち。貴族に議員に陸軍将校、医師に外交官に社長令嬢、果ては皇族まで。推理小説を謳う以上この後の展開は大体想像がつくが、単に想像がつく通りならわざわざ本にしたりしないだろう。案の定ほどなく乗客の一人が姿を消し、その後その乗客のバラバラ死体が発見される。ここまでは織り込み済みだが、かの有名な寝台特急もの如く乗客全員が犯人というオチなら、何もわざわざ小説にはしないだろう。さあここからが物語だと身を乗り出したところ飛行機は名古屋についてしまう。速すぎる。飛行機って速い! 大慌てで荷物を持ち飛び降りる。
車中で読んだのは『江戸川乱歩傑作選 獣』(桜庭一樹=編/文集文庫)これは「二銭銅貨」「一枚の切符」「D坂の殺人事件」「屋根裏の散歩者」と傑作揃い。「心理試験」が入っていないのが玉に瑕だが、乱歩の作品集の中でも特に好きな傑作選だ。実は江戸川乱歩は3歳から18歳までの幼少期を名古屋で過ごしていた。地下鉄に乗り換え栄駅で下車し、栄から大須まで歩く。この辺りが乱歩がかつて居を構えていた場所だ。道中には乱歩の通った白河尋常小学校跡や横溝正史と共に泊ったかつて大須ホテルだった辺りを通り、大須観音につく。周辺の商店街を歩くとなんとも猥雑とした感じ。ああ、この摩訶不思議な感じはなんとも乱歩の世界観だ。乱歩は自身の作品にこの大須の街を重ねていたのかもしれない。18歳、乱歩は父親の倒産に伴い夜逃げという形で名古屋を去った。生涯で46回引っ越しをした乱歩の放浪癖は父の影響があるのかもしれない。*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。