三重大学2年 内山めぐみ
雨音に耳を澄ませるある日の夜

眠いなぁ、でも、一昨日から読んでいる
『さきちゃんたちの夜』(よしもとばなな/新潮文庫)は、どうしても夜に読みたい。著者のよしもとばななさんは「すごくおいしい三時のおやつのような、夜中のコーヒーとチョコレートみたいな、そういう本にしたかったです」と言っている。だから、私もコーヒーとチョコレート3粒を傍らに、色んな「さきちゃん」に会いに行く。
大人になるにつれて、うまくいくことばかりじゃない。それでも自分なりにまっすぐあり続ける姿は美しい。まっすぐでいいのよ、とさきちゃんは背中を押してくれる、私の心強い味方。
キラキラと紫陽花が笑うある日の朝
ピピピピッ! あぁ……まだお布団に溶けていたい。だけど今日は2コマ目から授業がある。カーテンを開けて、背伸びをする。窓を開くと空気が洗われたように澄んでいる。昨夜、散々大泣きしていたから、空もスッキリしたのかしら。さて、お気に入りのワンピースを着て、大学にいこう。
電車に揺られる40分間は、私の大事な読書の時間。今日は
『きれいな色とことば』(おーなり由子/新潮文庫)を読む。この本はあわただしい日々では忘れがちな、繊細で大切な「感覚たち」が、丁寧に鮮やかに描かれている。
「季節の変わり目の風が吹くだけで、胸に切ない何かがつき上げてくる時、私の隣に、小さいときの自分や、去年の自分、中学生の時の自分などが立っている気がする」
あぁ、分かるなぁ。それにしても、ここしばらく疾走してばかりで大切なことを見逃している気がする。もう少し走ったら、ちょっと寄り道してもいいじゃない、きれいなものを探しにいこう。
喫茶店で雨宿りをするある日の夕暮れ

赤い背景に怪しげな顔の三日月がニヤリとこちらを見つめてきた。見つめられた瞬間、これは家に連れて帰るしかないなと思った。まさに一目惚れ!
『変なお茶会』(佐々木マキ/絵本館)、そう、これは絵本だ。
「あんた、大学生にもなって絵本だなんて…」「ノンノン! 見て御覧なさい、この美しい色彩、不思議な世界観。眺めるだけで、楽しくて仕方がありませんでしょう」
「変な」といえば、私はおしゃれなカフェよりも古くからある喫茶店に魅力を感じる。寡黙なおじさんがマスターならば、なお満点! そんな話をすると、よくわからないねと友達はケラケラ笑う。
今日は雨降り。少しだけ肌寒いから、ココアを注文して、このおかしな絵本を読もう。そういえば、ここの喫茶店に入るのはもう7回目。帰り際、マスターがニヤリとしてくれた気がした。雨はもう上がった、東の空には——あっ!三日月だ。