ニュージーランド便り(最終回)

まるで音大生のようなNZライフ


 

●Profile●


(とまつ・たつき)
慶應義塾大学文学部3年。最近、“Tatsu piano”というYouTube チャンネルでショパンやドビュッシーなどのピアノ演奏の動画をあげています。目指せチャンネル登録者100 人! ( 現在58人です)
 Kia Ora!
 つい先週まで交換留学生としてオタゴ大学に留学していた戸松です。NZで長い冬が明けて夏がやってくると同時に、僕の留学生活もついに終わりを迎えました。長かったようであっという間だった9カ月間。今回はNZ便り最終回ということで、留学生活のほとんどの時間をかけることとなった“ピアノ”についてお伝えしたいと思います。そもそも僕は音楽大学に通っていないのに、交換留学でピアノのレッスンを受けているというところで疑問符が浮かぶ人も多いのではないのでしょうか。現地の友達にも「なんでタツキはこっちでピアノをそんなに弾いてるの?」と言われました。実は「自分の得意なピアノで単位がもらえるならこんなに美味しい話はない!」という安易な発想から、ピアノの授業を履修したのがその始まりです。ダニーデンに来た当初は、英語でのコミュニケーションも上手く取れない上に、友達もあまりいなかったので、空き時間は1人でピアノの練習かジムに行くことぐらいしかやることがありませんでした。ただ、その努力が功を奏したのか、ロックダウンから明けた2学期からは何回かステージに立てる機会が得られることに。
 

こんなにも多くのカメラやライトに囲まれながら
ピアノを弾いたのは人生で初めて。

 
 その中で、特に僕が力を注いだのが、ピアノクラスの期末試験。ここでは28分間のプログラムをリサイタル形式で演奏するというもので、僕のリサイタルでは初めましての人も含めて、なんと20人くらいのお客さんが来てくれました。1か月以上前から念入りに準備したリサイタル。きっと上手くいくんだろうな……と思っていましたが、現実はそう甘くはありませんでした。楽曲は全て暗譜で弾いたのですが、曲の途中で何の音を弾けばよいのか分からなくなるというハプニングに何度も見舞われました。本番中に暗譜がポンポン飛ぶのはかなり怖いものです。「もうステージから降りたい!」と何度思ったことか……。終演後、ほとんどの友達は「良かったよ〜」というコメントをくれたのですが、ピアノクラスで一番仲の良かった子は、僕の演奏がジェットコースターのようにスリルを感じるものだったらしく、腹痛を催してしまったと言っていました。別の子も自分のリサイタルのことが心配になって直前まで練習に励むなど、ピアノクラスの子たちを少し怖がらせてしまったようです。そんなつもりはなかったんですけどねぇ……(笑)。
 

自分のリサイタルが終わった時の1コマ。
友達がくれた花束を抱えて安堵の表情。

 
 そのちょうど2週間後には、オリベストン邸という歴史ある建物でコンサートを行いました。もともとは僕の友達が自身の楽曲をプロモーションするために企画されたこの演奏会。僕は彼の楽曲を初演するという大役を任されていました。自分の期末試験が終わった後に、彼の曲を本格的に練習し始めたのですが、なぜか一向に仕上がりません。というのも、彼の楽曲は一見シンプルなように聞こえて運指が複雑、という今まで弾いてきた曲とはタイプが異なるものだったのです。「まだ仕上がってない」という焦りとは裏腹に本番の日が来てしまい、出来としては今まで経験した中で一番心臓に悪いものでした……。お客さんはこの曲を初めて聞くので、僕のミスには気付かなかったと思いますが、彼の気持ちを考えると……。本当はこのコンサートの演奏動画をYouTubeにアップする予定だったのですが、仕上がりがどうもイマイチだということで、日を改めて大学のホールでレコーディングをすることに。「上手く弾ければ数テイク撮ってすぐに終わるんだろうなぁ」と思いながらホールに入ってみると、なんとそこには無数のカメラとライト。彼の友達が映像制作のプロで、本格的に演奏動画も撮るつもりだということで、想像を遥かに超える大掛かりな機材に囲まれながら何テイクも重ねました。このレコーディングは3時間の長丁場となり、無事に良い作品が撮れたので、これでやっと心置きなく日本に帰れるという気持ちになりました。
 

最後にオタゴ大学のキャンパスでパシャリ。
NZの強烈な日差しのおかげで顔はすっかり日焼けしています。

 
 最初にNZに来たときは、まさか自分がここまで音楽に打ち込むことになるとは微塵も思っていませんでしたが、ピアノのおかげで素敵な交友関係が築けたり、今まで全く想像ができなった体験ができたり、と面白い留学生活を送ることができたんじゃないかなぁと思います。僕はこれから今年2度目の冬を迎えるにあたって体調管理にだけは気を付けようと思います。
 それでは!
 All the best!

 P.S.これからもYouTubeで演奏動画をあげる予定なので、ぜひチェックしてみてください。

▶︎ニュージーランド便り①
▶︎ニュージーランド便り②


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