授業のチャイムが長い夏休みの終わりを告げる。「始まってしまった。」ガレリアと呼ばれる講義棟の通路は、多くの学生でうめられていた。やって来てしまった授業日を嘆き、憂鬱な面持ちの人、久しぶりに会えた友人と楽しそうに会話をしながら歩く人、夏を存分に楽しんだことが丸わかりな日焼け顔の人、部活動を頑張ったのであろう、どこかたくましくなった人。それぞれ思い思いの夏を過ごし、こうしてまた一堂に集う。新学期の何とも言えぬ雰囲気は大学生も小学生も同じではないかと思う。
10度を下回る日が続き、早くも冬物のコートを着て、手袋まで装備してしまった私は、12月になったら雪だるまみたいになっているかもしれない。『白馬山荘殺人事件』(東野圭吾/光文社文庫)を読み始めたのもそんなころ。物語のカギとなっているのは童謡「マザー・グース」。この英語の歌を手掛かりに、主人公は兄の死の真相に迫っていく。謎解きが巧妙で、思わずじっくり考え込んでしまうため、秋の夜長(冬みたいに寒いけど!)にはぴったりだ。
そうだ、あの本を読みたいんだった。本屋さんで見つけて惹かれた『吸血鬼は初恋の味』(赤川次郎/集英社オレンジ文庫)という本。赤川次郎さんといえば正統派のミステリーを何作も書かれている「すごい人」というイメージだったけど、この本は可愛らしい表紙で文字も大きく、挿絵もついている。
連休があったので電車に乗って実家に帰ることにした。移動中に読む本は何にしよう。
実は、長編小説を読むのが苦手だ。
新聞の書評欄を読むのが好きだ。面白そうな本はあるかなと毎週楽しみにしている。そこで紹介されていた、とあるエッセイ集に興味を抱いた。演劇作家の藤田貴大さんが書かれた『おんなのこはもりのなか』(マガジンハウス)だ。*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。