読書マラソン二十選!
第16回全国読書マラソン・コメント大賞 優秀コメント発表!!

特集「大学生協の読書マラソン」記事一覧

【主催】全国大学生活協同組合連合会 
【協力】朝日新聞社

「読書の楽しさを伝えたい」の想いを伝えて16年を迎えた読書マラソン・コメント大賞。
パンデミックの渦中にもかかわらず、65大学 819作品の応募をいただきました。
ここに、1月21日の選考会で厳選された、栄えある入賞作を発表いたします。

 

金賞

祝迫 翔子さん
(東京外国語大学)

『蜜蜂と遠雷』
恩田陸/幻冬舎文庫

コメント

表紙『蜜蜂と遠雷 上』購入はこちら > 『蜜蜂と遠雷 下』購入はこちら >

受賞のことば

この度は、このような光栄な賞をいただき、大変驚いているとともに、本当に嬉しく思っております。本は色々な世界を見せてくれる素敵な道具だと思います。 この『蜜蜂と遠雷』は改めてそのことを実感できた作品です。その魅力が、少しでも多くの人に伝われば幸いです。

 

  • 銀賞

    後藤 良太さん
    (大阪大学)

    『二十歳の原点』
    高野悦子/新潮文庫 購入はこちら >

    コメント

    表紙

    受賞のことば

    図書カードをもらえることを知らなかったから、めっちゃ嬉しい! だけど、自分の考えを文章で正確に伝えようとするのはかなり難しいなと感じた。


  • 銀賞

    鄧 子琦 トウ シキ
    (立命館大学大学院)

    『古都』
    川端康成/新潮文庫購入はこちら >

    コメント

    表紙

    受賞のことば

    この度は、留学生として、このような光栄な賞をいただき本当に嬉しいです。私は、様々な日本の作品が好きです。留学を通じて色々な日本らしい体験をもらって、日本をよく理解したいです。この大賞をきっかけに、皆様のコメントを読んで、もっと良い作品を知りました。 良い作品は、国を越えて、感動を与えると信じています。本当にありがとうございます。


山崎 紫野さん (奈良女子大学)
『オーロラの日本史』岩橋清美・片岡龍峰/平凡社購入はこちら >

 オーロラ。幼い頃から憧れの天文現象だ。日本に生まれ育った私にはファンタジーにも等しく、本当にこの世で見られるのかさえ疑わしく思えた。そのオーロラがかつては日本でも見られたという。これほどロマン溢れるものはない。
 明和七年、本居宣長は赤い光を見た。火事のようだったというそれがオーロラだ。
 丹念に読み解かれた古文書から浮かび上がる天文現象の記録。それを現代の理論で分析し記された天文現象の正体を解明していく。文系と理系が出会う先にこんな面白い研究があったとは。
 令和の時代から明和のオーロラに思いを馳せて。

受賞のことば

素晴らしい賞を頂き、光栄に思います。ある講義で大学の図書館員さんが紹介していたこの本に、文学部に居ながら宇宙が好きな私はすぐに興味を持ちました。
図書館員さんが繋いでくれた本との出会いに感謝します。

 

  • 『アンと青春』
    坂木司/光文社文庫購入はこちら >  2020年、いろいろありすぎて疲れた。へこんだ。不貞腐れたくなった。心も身体もいっぱいいっぱいで、パソコン画面を見続けるのも、課題をやるのも億劫だった。そんな時、アンちゃんに出会った。何となくの進学はせず「みつ屋」で働くアンちゃんは、それだけで立派に思えたけど、そんな彼女も自分は空っぽだと悩んだり、未知の世界に戸惑ったり、たくさん失敗しながら、周りの人たちに助けられ、助けながら生きている。世紀の大事件もタイムスリップもないけれど、大変で大切な日常。こんな時だからこそ、アンちゃんの日常に包まれよう。

    川柳 琴美さん(お茶の水女子大学)


  • 『異邦人』
    カミュ〈窪田啓作=訳〉/新潮文庫購入はこちら >  自分が興味あること以外、何にも関心がない。何かに流されるように生きている。この本の主人公ムルソーのそのような生き方に、私も共感するところがあった。特に最近は、新型ウイルスのせいであらゆることのオンライン化が進み、自主的な何かを求めなければ何も得られない世界になりつつある。その中で、大学一回生の私は、半ばあきらめたように、流されるように生活してきた。しかし、この本との出会いが私の態度を変えた。彼のような人生を送らないためにも、これからは、彼のように無気力になることなく、積極的に行動しようと強く思った。

    牧野 椎さん(立命館大学)


  • 『死にがいを求めて生きているの』
    朝井リョウ/中央公論新社購入はこちら >  率直に言って気持ち悪い。とても気持ち悪い。文章の奥から見透かされている気分。「私はそんなことない」と否定したいのにさせてくれない。彼らの関係はいびつかもしれない。でも、多分どこにでもある。誰かの何かを勝手に自分の生きる意味にする。気持ち悪くて、落ち着かなくて、でも多分自分にもある感情。できるだけ隠して、見えないようにして生きていきたいのに、なんてことしてくれたんだ、朝井リョウさん。

    成広 汐里さん(立命館大学)


  • 『大衆の反逆』
    オルテガ・イ・ガセット〈神吉敬三=訳〉/ちくま学芸文庫購入はこちら >  私がこの本を読み始めたのは2020年2月。まだ“ソーシャルディスタンス”なんて言われてなくて、研究室で皆と意見を交わしながらページをめくることができていた。4月、そんな当たり前の日々がかけがえのない時間だったことに気づく。閉塞した毎日を送る私にオルテガは語りかける。先の見えない現状に思考停止に陥ってしまってはだめだ、周囲に流されてはだめだ、自分で想像し、創造しろ、と。約100年前に紡ぎだされた彼の言葉に背中を押され、私は奮い立つことができた。

    井町 菜月さん(山口大学)


  • 『これからの男の子たちへ』
    太田啓子/大月書店購入はこちら > 「なよなよとして男らしくない」と幾度か揶揄されて悩んできた私にとって、この本が示す男らしさからの解放はまさしく処方箋であった。堂々と自分が選択したように生きていけば良いのだ。かかる救済と同時に、この国で男として生きることの特権性についても気付かされた。例えば、私は恥ずかしながら電車に乗る時に痴漢の存在を意識したことも、その恐怖に目を向けたことも一度もなかった。恐怖を認識すらしていないことそれ自体が特権性を如実に表している。この本は私の心を軽くしてくれたからこそ、次は私が性差別に抗い、闘う番だ。

    阿部 友樹さん(茨城大学)

 

ナイスランナー賞は179点が選ばれました。今回はその中から11点をご紹介します。


  • 『たいのおかしら』
    さくらももこ/集英社文庫購入はこちら >  私は今年、20歳になった。20歳の誕生日、それは人生における大きな節目である。少し高級な化粧品を買ってみようか、友人と繁華街へ足を運ぶのも楽しいだろう。そう考えていた時、私は幼い頃に読んだ本書を思い出した。作者はひとりで人生を開拓してゆくため、20歳の誕生日はひとりで過ごした。そして生きていること、日常といった「当たり前」に対する尊さや喜びを感じたそうだ。私はこの随筆を思い出し、一人の大人として、今まで支えてくれた両親への感謝の気持ちを伝えなければならない、いや伝えたいと心から思ったのであった。

    岡田 紗季さん(関西学院大学)


  • 『よみがえる変態』
    星野源/文春文庫購入はこちら > 『よみがえる変態』は2012年彼がくも膜下出血で活動を休止した時期のことも書かれている。
     彼は、途方もない痛みや死の可能性を目の当たりする恐怖の中でも、何ひとつ投げ出さなかった。入院生活の辛いことにも入院生活の中の小さな喜びにも平等に真剣に向き合って、生きていくことで掴めるものを諦めなかった。
     きっと彼はこれからも、何、何ひとつ諦めないだろう。音楽も、芝居も、ラジオも、執筆も。欲張りで、素敵じゃないか。
     私は、彼がこれから生み出していくものが楽しみで仕方がない。

    川合あかりさん(立命館大学)


  • 『レインツリーの国』
    有川浩/新潮文庫購入はこちら >  人の痛みがわかる人になりなさい。小学校の先生は言っていた。人の痛みに寄り添いなさいとも。この本に出会った今、その先生に言いたいことがある。人の痛みなんか知ったこっちゃない。薄情に聞こえるだろうが、実際、人は誰でもその人なりの痛みを持っていて、私達はその人の痛みに気づけないことがある。それを踏まえて慎重に生活していてもすれ違いは起こる。でもその度に素直に頭を下げることしかできない、人の痛みのわからない人に比べれば、人の痛みを知ったかぶる人の方が薄情ではないだろうか。この小さな哲学をこの本が教えてくれた。

    井口美沙希さん(長崎純心大学)


  • 『地棲魚』
    嶺里俊介/光文社購入はこちら >  嫌な予感がする。読み進めていくうちに、そんな気持ちが高まり、私は物語の空気感に圧倒された。
     人や物に触れると、それの情報が詳しくわかってしまうという特殊な「矢の者」の能力を持っている片桐。そんな片桐をねらって、様々な事件が起こってしまう。片桐が犯人に気づいたとき、私も今までの物語が全てつながり、思わず読み返してしまった。
     一気に読むことができる、おすすめのサスペンス
    物語だ。

    樋口 遥さん(横浜国立大学)


  • 『真昼の悪魔』
    遠藤周作/新潮文庫購入はこちら >  美しく、無邪気だと讃えられた女医。しかし彼女の心は何にも無感動だった。無垢な子供に死を教え、寝たきりの老婆で人体実験をしても、つまらない、退屈だと嘆いた。作中の神父は彼女を心ない悪魔だと言った。だが、現代の私たちに彼女への不快感を抱く資格はあるのだろうか。SNSでは万物がコンテンツ化され、消費され、傷つけられている。私たちはそれをスクロールしながら虚ろな目で眺めている。この話が書かれたのは1984年。36年経った。現代人は今、女医と同じく一般人の皮を被った悪魔の姿を鏡に映しているのではないか。

    土田 怜花さん(早稲田大学)


  • 『あまからカルテット』
    柚木麻子/文春文庫購入はこちら >  稲荷寿司、甘食、ハイボール、ラー油……仲良し4人組が、それぞれのピンチを救うため、さまざまな食べ物、飲み物を頼りに奔走する。食べ物や飲み物が物語の鍵を握っているという展開が新鮮だ。この食べ物一つにも物語が生まれる。そう考えるとなんだかわくわくしてくる。また、さまざまな個性を持った全く違う4人が、お互いを思いあう力強さに、とてもほっこりとした気持ちになった。そして、こんなにもお互いを思いあう4人をちょっぴりうらやましくも感じた。もし友人に何か相談されたら、全力を尽くしてみよう、そう思った。

    りんごさん(大阪大学)


  • 『時をかけるゆとり』
    朝井リョウ/文春文庫購入はこちら > 「圧倒的に無意味な読書体験」本の帯にはこう書かれていた。
     辞書で「無意味」を調べると「意味がないこと。価値のないこと。」と書いてあるが、果たして本当にそうだろうか。私は無意味なことが価値のないことだとは思わない。著者の大学生活での無意味と言われるような失敗は、ちょっとばかばかしくて、でもすごくキラキラしていた。私は、思うように楽しめない今年の大学生活を、コロナのせいにして、それで終わりにしてはいけないと思った。学生でいられるのもあと少し。今しかできない「無意味」を思いっきり楽しみたい。

    桜田 遥華さん(東京理科大学)


  • 『白ゆき姫殺人事件』
    湊かなえ/集英社文庫購入はこちら >  巻末にある資料を見ながら小説を読むという新しい読書。まずそこに、この小説の魅力がある。また、この本のストーリーがとにかくすごい。殺人事件だから推理小説なのかと思っていたら大間違い。SNSの使い方について考えさせられる内容だった。なぜ、そこ焦点当たるのか。SNSとの関わり方について注目が集まっている今だからこそ多くの人に読んでもらいたい作品だ。

    地主羽奈花さん(明治薬科大学)


  • 『自立へ追い立てられる社会』
    広瀬義徳・桜井啓太/インパクト出版会購入はこちら >  この本は難しい。なぜ難しいのか。実際には、この難しさの正体に気づくことが最も難しいのかもしれない。足下がぐらつく感覚。
     今まで良いとされ、目指してきた自立すること。知らず知らずのうちに自分も目指してきた。
     この自立を中心に捉え直すことで、現在の社会の問題が浮かび上がってくる。社会の本質が見えてくるようで良い心地がする。読み進めていくと、それが加速していく。加速して、加速して、、
     足下がぐらついてくる。自分はどこに依って立っていけばいいのか、わからなくなってくる。
     この時初めて大学生になったのだと思った。

    松尾遼太郎さん(立命館大学)


  • 『古代ギリシアの女たち』
    桜井万里子/中公文庫購入はこちら >  古代ギリシアの世界では、女は「市民」ではなかった。男が優位を占める社会で、女たちはどのように生活を営み、自己実現を図ったのだろうか。
     人権は万人が等しく所有し、男女のジェンダー格差をできる限り無くそうという活動が当然視される現代からは、まさに想像を絶する世界である。女は内に入り、異性や外の世界との交流は最小に、家の仕事を行うべし。ほとんど社会から隔絶された彼女らには、祭りや女同士のコミュニティがわずかに残された社会参画だった。
     彼女らの生き方を知ることで、現代の女性のあり方も考えられる。

    西田 唯乃さん(愛媛大学)


  • 『恋愛しない若者たち』
    牛窪恵/ディスカヴァー・トゥエンティワン購入はこちら >  大学に入ったら、彼氏や彼女ができて……会社で恋愛して……というのが20年前までの「恋愛結婚」の形でしたが、不況やスマホの普及・男女平等社会によって大きく変わりつつあります。親ラブ族の出現やセフレ・ソフレの存在など、多様な要素から今の日本の恋愛事情をまとめており、マーケティングの観点から語られている点も特筆ポイントです。(熱っぽくなりがちな?)恋愛や結婚について冷静に見つめてみると、社会構造が面白く見えてくるかもしれませんね。

    塚本 健太さん(東京都立大学)

 

選考を終えて

 今回の読書マラソン・コメント大賞は、コロナ禍のさなかに行われました。個人的には、「講義やゼミがリモートになり、アルバイトなども制限されるなか、本を読む余裕はあるのか」「はたして参加してくれる学生はいるのか」などと思い、大賞選考も危ういのではと心配していました。
 でも、それは杞憂でした。応募総数こそ前年に比べると減りましたが、ネットでの参加も含めて、予想を超える学生が読書マラソンに参加しました。しかも一つ一つのコメントを読むと、すぐれたものが多いことに驚き、感動しました。
 パンデミックが学生の読書にどのような影響を及ぼしたのかという観点で考えると、今回寄せられた各コメントはきわめて興味深いものばかりです。
 深い内省を感じさせるコメントがたくさんあります。読書がもたらした内省です。それは、キャンパスが閉じられ、学友や教員と直接には会えないという環境の中で、ひとりで書物と向き合い、著者の言葉(ときには絵画や写真も)について時間をかけて考えることによって得られたもの。そう考えると、このたびの感染症流行は人類に大きな被害をもたらした厄災ではあるけれども、知的・精神的に自分を成長させていく契機とした学生も少なくはなかったのだと感嘆しています。これらのコメントは21世紀の『デカメロン』といえるかもしれません。
 また、最新流行のベストセラーよりも、長く読み継がれてきた古典やロングセラーを取り上げたコメントが目立ったのも今年の特徴といえそうです。
 表現にも工夫があります。書物を読んだ感想をそのまま言葉に置き換えるのではなく、いちど自分の中にとどめおき、どうすれば他者に伝わるかをよく考え、創意工夫をこらしながら言葉を選んでいったのでしょう。受賞されたコメントはもちろん、受賞にいたらなかったコメントのなかにも、キラリと光る表現がありました。
 次回の読書マラソンが楽しみです。

永江 朗(フリーライター)

 

「ナイスランナー賞」を輩出した63校(五十音順)

  • 愛知大学
  • 愛知教育大学
  • 麻布大学
  • 跡見学園女子大学
  • 茨城大学
  • 宇都宮大学
  • 愛媛大学
  • 桜美林大学
  • 大阪大学
  • 岡山大学
  • お茶の水女子大学
  • 関西学院大学
  • 京都大学
  • 釧路公立大学
  • 慶應義塾大学
  • 高知大学
  • 甲南大学
  • 甲南女子大学
  • 神戸大学
  • 埼玉大学
  • 札幌学院大学
  • 十文字学園女子大学
  • 信州大学
  • 西南学院大学
  • 千葉大学
  • 津田塾大学
  • 電気通信大学
  • 東京大学
  • 東京外国語大学
  • 東京学芸大学
  • 東京経済大学
  • 東京藝術大学
  • 東京工業大学
  • 東京工芸大学
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  • 東京農工大学
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  • 同志社大学
  • 徳島大学
  • 富山大学
  • 長崎純心大学
  • 長野県立大学
  • 名古屋大学
  • 奈良女子大学
  • 日本女子大学
  • 一橋大学
  • 弘前大学
  • 広島修道大学
  • 法政大学
  • 北海道大学
  • 三重大学
  • 武蔵大学
  • 明治学院大学
  • 明治薬科大学
  • 山口大学
  • 山梨大学
  • 横浜市立大学
  • 横浜国立大学
  • 立命館大学
  • 早稲田大学

「ナイスランナー賞」は全国の大学生179名に授賞されました。


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