広島大学4年 倉本 敬司

外国書講読の授業でナショナリズムに関する本を読んでいる。ナショナリズムというと、右翼やヘイトスピーチを想像してしまうかもしれないが、もう少し広い意味で、近代国家の成立やいわゆる民族問題を扱う分野だ。領域横断的な内容で、一義的な定義が難しく、なかなか掴めないと感じているが、とても興味深い。日本で言えば、沖縄問題や中国や韓国との領土問題に深く関連している。この授業の関係で読み返した本が『
日本人はなぜ存在するか』(與那覇 潤/集英社文庫)だ。平易な文章だが、とても読み応えがあるし、ブックリストが付いているのが○(マル)。
春休みに読んだ本の中だと栗原康の『
奨学金なんかこわくない! ——「学生に賃金を」完全版』(新評論)や『
大杉栄伝 永遠のアナキズム』(角川ソフィア文庫)が面白かった。進路のことを考えるのが嫌になったとき、もう自分は駄目なような気がするときに、読むと大丈夫な気がしてくる。ひらがなが多いが内容は濃い。『
はたらかないで、たらふく食べたい 増補版』(ちくま文庫)もオススメ。効能は、とにかく元気が出る、開き直れる、などなど。何気なく手にとった一冊が自分の中の常識をぶち壊すときの快感は計り知れない。

それから、『
幸福と人生の意味の哲学』(山口 尚/トランスビュー)は、イチオシだ。本屋に行くと「〇〇すれば〜」とか「成功する人は△△」のような「自己啓発」本に溢れている。それが目に入ると、先の尖ったもので胸のあたりをプスッと突かれるように感じる。「生きていることはとてつもなく理不尽だ」「努力至上主義なんかクソ食らえ」と思っているが、プライドが高すぎて頑張ることからも逃れられない、中島敦や中島義道を密かに愛読していたりする、つまるところ「困った人」にはオススメ。幸福がいかにままならないものかをひとつひとつ丁寧に、徒らに理屈っぽくもなく論証していく。注釈がきちんとついているのも良い。努力すれば幸せになれる(=努力しないのならば幸せになれない)と言われるよりも、(ある意味で)努力なんかしても幸せになれないと言ってくれる方が、よほど誠実だろう。幸福について語っている本は数あるが、初めて得心がいったのでぜひ紹介したかった。
今年の春は勉強するのが(さまざまな理由で)嫌になって現実逃避したが、逃げたからこそ、また頑張ろうかと思えている。そんなことは自己正当化だと言われそうだが、他人の「戯言」を跳ね返す力をくれるのは結局読書だったと思う。