
外国書講読の授業でナショナリズムに関する本を読んでいる。ナショナリズムというと、右翼やヘイトスピーチを想像してしまうかもしれないが、もう少し広い意味で、近代国家の成立やいわゆる民族問題を扱う分野だ。領域横断的な内容で、一義的な定義が難しく、なかなか掴めないと感じているが、とても興味深い。日本で言えば、沖縄問題や中国や韓国との領土問題に深く関連している。この授業の関係で読み返した本が『日本人はなぜ存在するか』(與那覇 潤/集英社文庫)だ。平易な文章だが、とても読み応えがあるし、ブックリストが付いているのが○(マル)。



それから、『幸福と人生の意味の哲学』(山口 尚/トランスビュー)は、イチオシだ。本屋に行くと「〇〇すれば〜」とか「成功する人は△△」のような「自己啓発」本に溢れている。それが目に入ると、先の尖ったもので胸のあたりをプスッと突かれるように感じる。「生きていることはとてつもなく理不尽だ」「努力至上主義なんかクソ食らえ」と思っているが、プライドが高すぎて頑張ることからも逃れられない、中島敦や中島義道を密かに愛読していたりする、つまるところ「困った人」にはオススメ。幸福がいかにままならないものかをひとつひとつ丁寧に、徒らに理屈っぽくもなく論証していく。注釈がきちんとついているのも良い。努力すれば幸せになれる(=努力しないのならば幸せになれない)と言われるよりも、(ある意味で)努力なんかしても幸せになれないと言ってくれる方が、よほど誠実だろう。幸福について語っている本は数あるが、初めて得心がいったのでぜひ紹介したかった。
図書館を散歩していると、三浦しをんさんの『愛なき世界』(中央公論新社)に目が止まった。植物の研究者のお話だとどこかで目にして以来、読みたいなと思っていたんだった。ちょうど研究室生活がはじまったばかりの今、うれしい出会い。躍る心で読み始める。
町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)。本屋さんで見かけたときに、表紙に一目惚れし、家にお連れした。福田利之さんの、眺めてるだけで、物語の世界へ入り込んでしまうような装画。*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。