
レンジが燃えた。ここ数日お菓子作りにハマっていてこの日はスコーンを朝から作って食べようとしていた。レシピには180℃のオーブンで10分と書いてあったが、ちょっと横着な気持ちが芽生えて、生地をラップでぐるぐるに巻いてレンジのお世話になることにした。焼いている間にちょっと洗い物、と目を離した隙にむせ返るような焦げ臭さを感じ、さっと部屋に戻るとレンジが見たことのない黄色い煙をピーっと噴き出していた。焦ってレンジの扉を開けるとバチンと火花が散り、脊髄反射でバタンと扉を閉めた。恥ずかしながら、当時床にレンジを置いており、布団もカーテンも半径5ミリ以内にあったのに奇跡的に引火せず一命を取り留めた。大袈裟に聞こえるかもしれないが、一人暮らしで煙とか火花に出会うと人生までも見つめ直したくなる。この日の夜、もしも火事に遭ったらいつか読もうとワクワクしていた本も灰になるかもしれないと夜な夜な本棚の整理をした。その中にお菓子作りに夢中になってすぐ買った『味・香り 「こつ」の科学』(川崎寛也/柴田書店)が見つかった。「味覚は何のためにあるの?」という誰もが一度は疑問に思ったことが載っている、理論オタクの私にはもってこいの一冊である。「何でもレンジのお世話になるな」という一文は載っていなかったが、独りよがりクッキングはしばらくやめておこうと肝に銘じた。
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9月は大学生にとっては夏休みである。しかし研究室に所属している4回生、特に実験を行なう理系学生にとって、夏休みの存在は陽炎のように曖昧だ。8月下旬の大学院入試に向けての勉強により、しばらく研究を疎かにしていたことも相まって、9月はなるたけわが愛しの実験対象の菌たちと向き合った。しかし、9月も終わりにさしかかる頃、ふと「このままでいいのか?」という声が聞こえた。このまま「夏休み」を終えてしまっていいのか、と。大学院、社会人、と進むにつれ、ますます夏休みは遠い存在となる。ああ、大好きな夏休み!
10月に入り、(自主的)夏休みは終わったが、「本の世界での旅」の熱はさめぬまま。そこで、少し趣向を変えた「旅」に出ることにした。『ハリー・ポッターへの旅〜イギリス&物語探訪ガイド』(MOE編集部+山内史子/白泉社)だ。物語に関わるイギリスの様々な場所が写真やイラスト付きで紹介されている、とても美しく、ハリポタ愛に溢れた本である。う〜ん、やっぱり身体も一緒の旅もいいなぁ。
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