Michikusa株式会社 代表 臼井 拓水 氏 インタビュー
AI時代こそ、行動することに意味がある!
大学在学中から複数のインターンに参加し、卒業後はGAFAに就職、24歳で起業。実業家、教育者、著作家の顔を持ち、常に時代の先端を走り続ける臼井拓水さんが創業した会社は「Michikusa」(道草)と、一見非効率的な印象を与えそうな名称です。
AIによる効率化を重視しながらも、非合理に思える意思決定を尊び、体力を培って好奇心を鍛えるべきと言う臼井さんに、全国学生委員の2人が“自ら行動することの意味”を伺いました。
Michikusa株式会社 代表取締役 臼井 拓水 氏
プロフィール
インタビュイー
全国大学生協連 全国学生委員会
委員長 佐藤 佳樹
インタビュアー
全国大学生協連 全国学生委員会
笹森 穂花
インタビュアー
AIとの正しい向き合い方
“In person”で得られる貴重な体験
AI時代こそ行動するやつが一番強い
(以下、敬称を省略させていただきます)
はじめに

笹森-
全国大学生協連が実施した「第61回学生生活実態調査」では、2023年から25年にかけて生成AIの利用が急速に広がり、 2025年には利用経験者が9割を超えるという結果が出ています。本日はこのような現状が今の大学生に及ぼす影響、大学生の適切な生成AIの活用方法などについてご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

第61回学生生活実態調査より
・調査期間 2025年10月~ 11月
・調査対象回答数 13,277

臼井- Michikusa株式会社代表の臼井と申します。個人向け・法人向けに生成AIの研修を行う事業を展開しています。また、デジタルハリウッド大学の特任准教授として、大学生に向けて生成AIの使い方を教えるという活動もしています。
AIとの正しい向き合い方
理解を外注しない

笹森- 事前に臼井さんのnoteなどを拝見させていただきましたが、会社のビジョンである「AIの力で余白を作り、人生にミチクサを」という言葉が大変印象に残っております。ただ、私自身や周りの大学生の実態に目を向けると、AIの力に頼ってAIに答えを求めすぎるという傾向が見られがちだと感じます。AIが身近になった今だからこそ、大学生はAIとどのように向き合い、どのように適切に活用していくべきか、臼井さんのお考えをお聞かせください。

臼井- まずは「AIと正しく向き合うべきだ」と考えています。AIを使うことで思考力が育たなくなるなどと言われますが、この議論って昔からずっと言われていることなのですね。ワープロを使うと漢字が書けなくなる、電卓を使うと計算力が弱くなる、コンピューターを使うと自分で考えなくなるなどと、同じように言われ続けてきたのですが、そういった中でそれを使わない人間が淘汰されてきたと思うので、使わないという選択肢はなく、重要なのは「どうやって正しく使うか」ということだと考えます。

笹森- 生成AIはもう日常で当たり前に使うものになってきていますが、「正しく使う」ということが結構難しくて、自分の中で生成AIとの正しい向き合い方が正直わかりません。「向き合い方の正しさ」とは、どのように理解すればいいのでしょうか。

臼井- 結論から言うと、「理解を外注しないこと」です。というのも、Chat GPTが出てきたことによって作業や思考は外注することができるようになったんですね。
例えば、今、笹森さんに「うちの会社の売り上げを推測してください」と投げたとします。そうすると笹森さんは、AIがなければ普通に僕の公開情報を調べて、うちの会社の事業の単価などを出していく。まずこれが作業ですよね。次にその作業の結果から、売り上げはどうなんだろうと考えます。これが思考です。
これらに関しては、基本的にすべてがAIで代替できるんですね。一方で、AIにかけて出てきた事項が正しいのかとか、それによって得られた示唆ってなんだろうとか、そういったことに関しては、理解をするのは人なのです。ところが、これをやらない学生があまりに多いという感じがします。
他にも具体例でいうと、AIに論文を書かせるのはいいのですが、要はその内容を自分が読んで理解できるかどうかが重要なのです。しかし、多くの学生はAIに作業や思考を代替しているように見えて、実は理解も丸投げしてしまっているのですね。でも、何があっても理解を丸投げしてはいけないんです。理解さえしていれば、そのAIが導き出したものが果たしていい論文かどうか、見抜けるはずです。
ですので、僕は大学生の方に、どれだけ思考や作業をAIに外注しても構いませんが、理解だけは外注してはいけないとお伝えしたいですね。
学生への指導方法

笹森- 臼井さんは普段、学生と関わる機会も多いと思いますが、実感として、学生はどのぐらい適切にAIと関われているのでしょうか。また、AIと正しく向き合えてないなと感じた時に、どんなお声掛けをされていますか。

臼井- 僕は学生に「それちゃんと読んだ?」「ちゃんと読んだ上でいいと思った?」と質問しています。そうすると、学生はハッとして「いや、ダメですね」って言うんですよ。ちなみにこれ、ほぼできている人はおそらく1割もいないんじゃないかと思います。
これは学生に関わらず社会人も同様です。ただこれに関しては、昔から他人の作ったものをそのままコピペする人なんてどこにでもいたのが、AI時代だからこそやりやすくなり、その結果として顕著になったというだけなのです。
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笹森- 私は普段から業務でメール文を考えるときに、結構AIに投げがちです。AIに作ってもらった返信を読んで、自分の中でまたそれをきちんと編集してから送信するようにしているのですが、これって適切な向き合い方と言えますか。

臼井- 出来上がった文章を読んで、自分がこのメールでいいなと思ったらそれでいいと思います。それが実際良くなかったとしたら、別にそれはAIを使っていようが使わなかろうが、まあダメなんです。
一番良くないのは、 AIが作ったものをよく見ずに出して、「これいいと思った?」と聞かれた時に、そもそも良いか悪いかも判断していないということです。自分で書いている時はそれなりに考えながら書くと思うのですが、 AIに任せてしまうとこの段階が飛ばされるのですね。大事なのは自分の中で振り返ることです。
大学生である以上、そのレポートが良いか悪いか判断する力はあるはずなんですよ。でも、それをやっていない人が多い。これは大学生に限らず社会人も同様ですね。AI以前の問題です。
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“In person”で得られる貴重な体験
人間にしかできないこととは

佐藤-
学生生活実態調査では、ここ数年でAIの利用用途が、学修関連に限らず日常的なコミュニケーションや悩み事相談などにも及んでいるという結果を得られています。AIの利用を提案されている臼井さんご自身は、個人的にAIをどのように活用されているのでしょうか。

第61回学生生活実態調査より

臼井- 日常生活におけるあらゆる作業と思考を、なるべくAIで自動化するようにしています。ですので、基本的に作業と思考は僕がやらなくて済みます。理解だけは自分でしなければなりませんが、しかしそれによって、僕が本当にやらなければいけないことにより時間を使えるようになります。例えばパワーポイント作りは別に僕がやる必要がないのでAIに任せ、そのパワポでどういう話をするかは僕自身が決めます。
プライベートにおいても、理解を進めるためにAIを駆使しています。何かを思いついた時とかに、「これってこうなんだっけ?」「僕はこう思ってるんだけど、違うんだっけ?」というように、ひたすらAIと壁打ちをして自分の理解を深めていますね。
すべてをAIに任せた上で、人間にしかできないことってなんだろうと考えると、僕の場合、例えばスポーツや友人の結婚式があります。僕は27歳ですが、第一次結婚ブームというか、毎月1、2回ほど友人の結婚式に招待されます。最初は時間を拘束されるので気が進まず、出席するのが億劫だな、ちょっと面倒だなと思っていたのですが、出席してみると、やっぱり冠婚葬祭って人間しかできないから重要なのだと気付きました。
僕の場合、普通に業務をこなしているとどう考えても結婚式に出席する時間はないのですが、作業をAIで自動化することによって時間ができて、ちゃんと本人が直接参加しなければならないことに時間を使えるようになっています。“in person”で得られる体験は大事なんじゃないかと思います。
AIが提案しない「非合理な意思決定」

佐藤- 臼井さんは冠婚葬祭など人間にしかできないことを大切にしているとおっしゃいましたが、その大切にしている部分が社名の“ミチクサ”として定義されているのかと思います。そういう意味で、臼井さんご自身が大切にされている時間とか体験についてお聞きします。具体的にどんなことを自分にしかできないものと判断されているのでしょうか。大学生のキャリアや生き方についても参考になるかと思うのでお聞かせください。

臼井- そうですね、僕が大切にしているのは「非合理なこと」かと思います。合理的に考えると別にやらなくていいようなことって人間がやるべきだと考えているからです。
例えば、受験勉強はしたほうがいい、するのが当たり前ですよね。でも、その受験勉強の最中に、全然関係ない推し活やeスポーツの大会に参加するようなことは、多分AIに「自分はどうしたらいいのか?」と聞いても絶対提案してこないと思うんです。でも僕は一見非合理に見える意思決定をなるべくして、とりあえず行動したほうが結果的に見て面白い人生になると思っています。そういう意思決定って時間がないとできないんですよ。だから大事なことだと思います。

佐藤- 臼井さんご自身だからこその行動で、何か具体例があれば教えてください。

臼井- 具体例でいうと、僕は予定なしにふらっとサンフランシスコに行って3週間滞在したことがあります。その中では、今まで会ったことのない人との出会いがたくさんありました。実際に現地に行ったことによって、オンラインでは出会えなかったような人との縁が生まれたのです。カフェにいた人、たまたま話しかけたらすごく面白かった人、ワールドカップ観戦で偶然隣に座った人がUber(※)で8年間AIのトップを務めていた人だったとか。そういうことはAIでは得られない経験だと思っています。
(※)ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies, Inc.)は、スマートフォンアプリを通じて、配車サービス・フードデリバリー・宅配便・貨物輸送・電動自転車や電動スクーターのレンタルなどのサービスを提供するアメリカ合衆国のテクノロジー企業。
AI時代こそ行動するやつが一番強い
行動を促すのは好奇心、好奇心の源は体力

佐藤- お話を聞いて、臼井さんが巡り合わせとか偶然の出会いなどの体験をとても大切にされているのがわかりました。臼井さんのXに掲載されている写真を拝見すると、現地に行かれたからこそ体験できたものなのだと感じました。

臼井- AI生成が面白いかというと、やっぱり実際に現地に行って対面でとらえた面白さのほうが勝るんですね。今までzoomの背景なんて考えてもみなかったけれど、あの背景はどうやって撮ったんだろうとか、いろいろと考えることが生まれるんです。
そもそも僕は「行動するやつが一番強い」と思っています。AIで思考がどうとか、AIでできる・AIでもできないとか言うより、とりあえず何かアクションを起こすことが重要だと思うので。

佐藤- 臼井さん自身は、迷ったら行動する派だということですね。

臼井- 行動するデメリットよりもメリットの方が大きすぎるので、基本的には行動した方がいいと思っています。大事なのは、行動って基本的に好奇心ベースなんですよ。好奇心って、生まれたときには人間全員が持ってるんですよね。僕なんか、どんな子どもも魔法使いだと思っています。なんかもう本当にいろいろなことを考えていて、どんなことにも好奇心を持っている。でも、大人になればなるほど、「やっても意味ない」「やったら叩かれた」という理由で、好奇心がだんだん失われていくんですよ。
大人になって、後天的に好奇心を高めるのって結構難しいんですけど、別のアプローチとして体力があります。実は、好奇心って体力がある人にしかないんですよ。なぜかというと、体力がなかったら何かをしてみようと思わないからです。
例えば8時まで仕事をして、帰宅して夜9時です。ご飯食べて風呂に入って、10時になってからさあ自分の好きなことをしようとは、普通の人はなかなか思わないですよね。そういうときに行動できる、基本的に好奇心がある人が強いんです。僕はそのために体力が必要だと思いますね。AI時代こそ行動にしか意味がないと思っているので。
“Connecting The Dots”

佐藤- 臼井さんの大学生時代を少し振り返って質問させていただきます。さまざまなキャリアの選択肢があったかと思いますが、そこでもやはり迷いなく行動して知見を広げていったという感じでしたか。それとも何か迷ったことがあったなら、そんな経験も教えていただきたいです。

臼井- そうですね。死ぬほど葛藤したこともありましたが、その葛藤もすごく大事だったと思っています。なぜなら、今の僕の糧になっているものって全部今までの行動から来ているからです。例えば僕が今、こうやって取材していただいたり知っていただいたりするのは、多分SNSのフォロワー数が多いからだと思います。僕はショート動画が多いんですね。じゃあなぜショート動画を作るようになったかというと、たまたまAmazon時代に行ったパラグアイでインフルエンサーをしていたからなんです。
じゃあなんでAmazon時代にパラグアイに行ったかというと、大学1年時に大学を辞めようかと迷ってFacebookに投稿したら、高校時代の同級生から連絡が来たことに溯ります。彼とはそれほど親しくなかったのですが、その彼がたまたま宮城にいて、「宮城県でボランティアをしないか」と誘ってくれたんです。
彼は僕にとって人生で唯一のメンターとなるのですが、その時に宮城県に行こうと決心しなかったら僕たちは会っていないし、今の僕はあり得なかったと思います。多分彼も、誘っても来ないような人間には興味ないと思うんですね。彼は現地で僕と会って話を聞いてくれました。この旅が、僕の人生のターニングポイントになりました。宮城行きを決意したように、これからはまず行動してみようと思ったのです。
宮城でさまざまな人と出会い、東京の学生生活ではできないような経験をして新しい気付きを得た僕は、大学に戻りました。そして、たまたまXで見かけた旅行会社のインターンに申し込んで2年間徹底的に鍛えられました。その結果、内定先を辞退してAmazon Japanを受け直し、今では“元Amazon”みたいな経歴を使ってインフルエンサーをやったりもしています。結局、僕がアクションを起こしたことが僕のすべてを作っていると言えるんですよ。
僕が家でうじうじしていたことによって得られたものってあんまりなくて、僕が起こしたあらゆる行動が全部連鎖的に将来につながっている。使い古された言葉なんですけれど、スティーブ・ジョブズが言った“Connecting The Dots”(点と点をつなぐ)という言葉を、僕は心の底から信じています。

佐藤- ありがとうございます。AIの話から始まって、行動の選択や人生設計にまで示唆に富んだ回答をいただいたと思いました。
若者世代へのメッセージ

笹森- 最後に、臼井さんの学生時代の経験も含めて、大学時代に意識して行動してほしいことや経験してほしいこと、考えてほしいことなどを大学生へのメッセージとしていただければと思います。

臼井- 「誰よりも自分がAIについて詳しくなる」、もしくは「AIを全く使えないけれど、自分にしかできないことがたくさんある」。学生の皆さんには、このどちらかを目指してほしいと思っています。
AIを全く使えなくてもすごく人から可愛がられて、取引先に「自分はAIは全くわかりませんが、〇〇さんのことを絶対幸せにできます」と言う営業マンって、絶対にAIでは代替されません。逆に、めちゃくちゃAIが詳しくて開発もできて、先輩に「AIについてなら何でも答えられます」と言える人も強いんですよね。正直僕が採用したい学生って、本当にこのどちらかしかいません。
AIに特別詳しいわけでもなく、人間的な魅力で選ばれるわけでもない。性格や行動力といった面でも、特に際立つところがない、という状態だと、採用する側からすると「採用するメリットってどこにあるの?」となってしまい、選ぶ理由を見つけにくくなるんです。AIを使える人材は無限にいて、AIは使えないけれどとてつもなくチャーミングな人も大勢いる。皆さんは、今後どっちを目指しますか?
従来だったら、若干斜に構えてちょっと冷笑っぽくてちょっとIQは高いみたいな人材にも仕事があったと思います。でも今、このAI時代だったら、IQの高さだけでは意味がないんです。そういうことは全部AIがやるから。どんな人間もAIよりはIQ高くないですよね。
だから大学生は、AIにすごく詳しいか、AIは全く使えないけれど人間的魅力が非常に高いか、どちらかの特徴を持つことですね。理想はこの両方を兼ね備えたハイブリッド型ですが、なかなかそういう人はいません。トップ層の学生起業家などは、このタイプですけどね。ですので、できることならこの両方を目指していただけたらいいのではないかと思います。

笹森- ありがとうございます。これから就職活動を行う大学生もこの記事を読むと思いますので、本日のお話、大変参考になる部分がたくさんあったと思います。改めまして、今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

臼井- こちらこそありがとうございました。
2026年7月6日リモートインタビューにて
PROFILE
Michikusa株式会社 代表取締役
臼井 拓水(うすい たくみ)氏
国際基督教大学(ICU)在学中よりベンチャーキャピタル、オンライン経済メディア、旅行業等複数のインターンに参加。卒業後はAmazon Japan入社。退社後、生成AI研修を行うMichikusa株式会社を創業し代表を務める。usutaku名義でAI情報を発信し、SNS総フォロワー数は60万人を超え、AI分野で日本一となる。著書に『Notion AIハック 仕事と暮らしを劇的にラクにする72の最強アイデア』(翔泳社)。2025年よりデジタルハリウッド大学 特任准教授(数理・データサイエンスAI)。その他のインタビュー


