第4回 ペン助のうただより 2018年新学期号


  新入生のみなさんこんにちは! 短歌部部長のペン助と申します。あ、「読書なのに短歌?」って思いました? 短歌も文芸とはいえ、ベツモノ感はありますよねぇ……。そこで今回は、「小説好きのための短歌本」特集!小説と短歌の架け橋を探しましょう。
 

短歌は小説好きの愛すべき隣人

 最初に紹介するのは、雪舟えまさんの小説『恋シタイヨウ系』(中央公論新社)。太陽系に似ているけど違う、「タイヨウ系」を舞台にした短編集です。彼らの愛はタイヨウ系らしく、大きく軽々としていて、見ていてとてもハッピーな気持ちになります。各話の前に添えられた短歌から、一首引いてみましょう。

あるいはね猫たちが回す星にいて朗報だけをつづって生きて
「おやすみ猫たち」より

 短歌関連の小説なら、『念力家族 〜玲子はフツーの中学生〜』(笹公人・佐東みどり/集英社みらい文庫)も気になるところ。この小説はドラマのスピンオフなのですが、原作は『念力家族』(笹公人/朝日文庫)という歌集。
とんでもない超能力を持った、ごくフツーの一家の生活、どこから覗きますか?
 歌人が登場する小説なら『ショートソング』(枡野浩一/集英社文庫)。短歌初心者の主人公・国友と一緒に、歌会?だとか結社?だとか、短歌を取り巻くあれこれに飛び込んでみましょう。実在歌人がお好みなら、石川啄木が登場する『日本文学盛衰史』(高橋源一郎/講談社文庫)をどうぞ。
 そして小説好きへのとっておきがこれ。小説家が作る短歌! 『ダイオウイカは知らないでしょう』(文春文庫)は西加奈子さんとせきしろさんの短歌修行の記録。ゲストを迎えて短歌を作り、評している様子はとても楽しそう。また雑誌『短歌研究』二〇一八年二月号には、「短歌を詠む小説家」として三浦しをんさんが対談に登場(お相手は「小説を書く歌人」の東直子さん)! しをんさんの短歌もばっちり掲載されていますよ。
 

ー 今月の短歌本 ー

『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』
(木下龍也・岡野大嗣/ナナロク社)
「小説のように読む歌集」としてすすめたいのがこれ。二人の歌人が、二人の男子高校生に成り代わって、一週間を描きます。七日間に何が起こり、どう展開したのかーどういう物語を歌の間に読み解くか、ずっと考えてしまいます。


今・月・の・う・た
 
だますなどたれがいひけむ瞞されて身をなげきなむ狸のつら
中島敦『ちくま日本文学012 中島敦』(ちくま文庫)
わが撃ちし鳥は拾わで帰るなりもはや飛ばざるものは妬まぬ
寺山修司『寺山修司詩集』(ハルキ文庫)
誤植あり。中野駅徒歩十二年。それでいいかもしれないけれど
大松達知『アスタリスク』(六花書林)

「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい
笹井宏之『えーえんとくちから』(パルコ出版)

ぽろぽろと音符こぼれる君の背のリュックサックを見送る春だ
ペン助
 

ー 掲・示・板 ー

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