Reading for Pleasure No.33

「グローカリズム」という考え方を創り上げていく

水野邦太郎(江戸川大学)
 
水野 邦太郎Profile

今回ご紹介の本

Edwin O. Reischauer
〈國弘正雄=訳〉
The Meaning of Internationalization
C.E. Tuttle Publishing
本体1,700円+税
 日本では最近、「国際人」「国際化」といった「国際…」という言葉が流行語化しています。流行語は、人々にとって様々なイメージと意味内容をもって使われます。そのため、流行語は議論で使用する際には、その言葉で指し示す意味内容を「定義」する必要があります。そこで今回、「真の国際化とは何か」について、特に日本の若い皆さんに向けて書かれた本があるので、それをぜひ紹介いたします。タイトルはズバリThe Meaning of Internationalization Practical advice for aconnected planet です。

 著者のライシャワーさんは、1910年に明治学院内宣教師館で生まれ日本アメリカンスクールに入学しました。1938年にアメリカへ帰国した後、ハーバード大学教授になります。1961年のケネディ政権の下、第17代駐日大使に指名されますが1966 年に退任し、ハーバード大学へ戻ります。このようなバックグラウンドを持つ日本研究の第一人者です。ライシャワーさんの英文は、一流の研究者が書く英文がみなそうであるように、一文一文の「つながり」が分かりやすく書かれています。そして、話が論理的に一貫性(まとまり)をもって書かれています。文と文の「つながり」と「まとまり」を兼ね備えた、私たち英語学習者にとって「見本」となる英文です。

 ライシャワーさんは「序文(Forward)」で、日本人に対して、次のような「国際化」に対する考え方は間違っていると述べます。 Some Japanese equate internationalization with Westernization and fear that it would bring a further loss of the uniqueness they claim for Japan. Such attitudes, however, are quite mistaken. (日本人の中には、国際化を欧米化と同じものだと考え、日本のもっている独自性 — と彼らが主張してやまないものをいま以上に損なうものである、と怖れている向きがあります。しかし、この手の考え方は完全にまちがっています。)

 上記の英文に日本語訳をつけましたが、本書では、英文とその日本語訳を、左ページ(英文)と右ページ(日本語訳)の見開きで掲載しています。そのため、英文の意味を確認したいとき、右ページの日本語訳ですぐに自分の英文理解をチェックできます。上記の英文で、ライシャワーさんは「国際化とは欧米化ではない」と主張し、「国際化」の意味を大きく以下の3つの観点から「吟味」し「解釈(意味づけ)」し直しています。

 Chapter 1: On Being a World Citizen (世界市民であること)
 Chapter 2: What can Japan Contribute to the World ?( 日本は世界に何を貢献できるか)
 Chapter 3: On Studying a Foreign Language( 外国語を習うことについて)

 そして、ライシャワーさんの考える「真の国際化とは何か」を、具体例を通して説明しながら、提示した考え方を日本の若者が吟味し探求していくよう誘っています。

 私は、Chapter1と Chapter2を読みながら「グローバル(全地球的)」と「ローカル(地域的)」の両方を融合させた「グローカル」という言葉を思い浮かべました。ライシャワーさんは、本書で「グローカル」という表現を使っていませんが、ライシャワーさんが考える「真の国際化とは」の根本的な考え方は、次のようなグローカルという考え方に基づいていると思われます。それは、以下のような「段階的思考法」のことを指します。まず全地球的にものごとを捉えます。その全地球的な枠内で日本の動向をしっかりと見据えます。そのような状況の中で、私たち一人ひとりが自分の生まれ育った地域や大学のある地域がどうあるべきか、そこで教えるひとりの教師として、そこで学ぶひとりの大学生として、各自がどう生きるべきかを考える、という「複眼的思考法」です。このようなグローカルという考え方で、日本のこれからの英語教育の内容と方法もデザインされ実践する必要があることが、Chapter3から読み取れます。

 本書を通してライシャワーさんが「国際化」をキーワードに日本の若者に託したメッセージを知り、ぜひ、大学在学中に留学を経験してください。留学は、大学入学後、「自分は、どう生きていくか」を考え始める時期に、世界を股にかけて仕事をする志を持つ青年へ皆さんを導く契機となります。その意味で、本書は、皆さんがグローカルな視点から自然・社会・人間を観る眼を育み、留学への強い動機づけにもつながる本です。


 
P r o f i l e

水野 邦太郎(みずの・くにたろう)

千葉県出身。江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授。博士(九州大学 学位論文. (2017).「Graded Readers の読書を通して「主体的・対話的で深い学び」を実現するための理論的考察 ― H. G. Widdowson の Capacity 論を軸として ―」)。茨城大学 大学教育センター 総合英語教育部准教授・福岡県立大学人間社会学部准教授を経て、2018年4月より現職。

専門は英語教育学。特に,コンピュータを活用した認知的アプローチ(語彙・文法学習)と社会文化的アプローチ(学びの共同体創り)の理論と実践。コンピュータ利用教育学会 学会賞・論文賞(2007)。外国語教育メディア学会 学会賞・教材開発(システム)賞 (2010)。筆者監修の本に『大学生になったら洋書を読もう』(アルク)がある。

※本誌掲載の肩書きは、2018年3月(発行時)のものです。

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