読書マラソン二十選! 155号


書店やメディアでは話題の本にばかり気をとられてしまいますが、読書マラソンのコメントを眺めていると、それ以外にも面白い作品がいっぱい紹介されていることに気づきます。この二十選のなかから、読者のみなさんが今夏、またあらたな出会いがありますように。
 


  • 『ヒカルの卵』
    森沢明夫/徳間文庫

     卵かけご飯で村おこし?! 本書を手にとって最初の感想である。取り柄といえば豊かな自然くらい。そんな故郷に活気を取り戻すべく、養鶏農家を営む通称「ムーさん」が立ちあがる。養鶏場を担保に開業した村おこしの切り札「卵かけご飯」の専門店は、果たして成功するのか。自然豊かな村を舞台に、ムーさんと仲間たちが大奮闘!! 読了後、ほっかほかの卵かけご飯をおもいっきりかきこみたくなること請合いである。
    (梅光学院大学/バンブー)

  • 『A2Z エイ・トゥ・ズィ』
    山田詠美/講談社文庫

     恋愛はめんどくさい。誰かに恋するのも人から愛されるのも心に余裕がなければできないこと。忙しい大学生活でいつしかそう考えていた。けれど、この本に出会った今は少し違う。この作品は、少女マンガのような甘いだけの恋愛ものではなく、楽しくも苦しくもあり、恋をすることがたくさんの気持ちを引き出してくれることを教えている。ちょっとしたことで嬉しくなったり、悲しくなったり、好きな人をまた愛しく感じたり、逆に憎らしく思ってしまったり、誰かを想うことは子どもみたいに正直だ。恋愛はやっぱりめんどくさい。けれど一生懸命だ。
    (東北学院大学/ドーナツ書房)

  • 『物語のおわり』
    湊かなえ/朝日文庫

     シンデレラも白雪姫も、ももたろうも、みんなお話は完結していて「そのあと」なんて考えたことがなかった。“物語"の主人公は、お話をかくのが好きな少女。やがて成長し、幸せな日々を過ごす中、突然舞い込んだチャンス。夢を叶えるために一歩ふみだすのか、それともとどまるのか、はたして彼女はどうするのか。そこで断ち切られた“物語"のおわりをめぐって、夢を追う者、追ってきた者たちが、出会い、自分たちの歩んできた道に重ね合わせながら、“物語"のおわりをそれぞれ思い描いていく。全てのページをめくり終えたとき、確信した。私も「人生」という名の“物語"の主人公だ。“物語"のおわりなんてわからない。でも、おわりを決めるのは私自身。可能性は無限大だ!
    (岡山大学/ペンダコ)

  • 『おやじ丼』
    群ようこ/幻冬舎文庫

     毎日家族のために働いてくれているお父さん。それを知っていながらも、ウザい、臭い、ハゲ等々、ひどい言葉をかけてしまったことはないでしょうか。
     この本に出てくるクセの強いオヤジたちを見れば、彼らも日々いろんな敵と闘いながら生きていることに気づかされます。
     今は学生ですが、数十年後には私もオヤジ側として描かれる立場です。妻や子どもたちに嫌われないように、近所の人や会社の同僚に迷惑をかけないように、オヤジになる前にこの本を手に取ってみてはいかがでしょうか。
    (徳島大学/たーる。)

  • 『かがみの孤城』
    辻村深月/ポプラ社

     ジャケ買いで読み始めたこの本。内容は夢があり、でもどこか怖いと感じさせられるストーリーであった。誰もが、多かれ少なかれ人間関係で悩むことがあると思う。その原因が人と考えや行動が異なったり、立場だったりと様々なことがあるが、それは時に、ケンカともいじめとも呼べない、呼ばれたくない“何か"を引き起こすことがある。世間は、よく、問題とか、いじめとか、そういうものにカテゴライズする傾向にあり、分析するけれど、ひとつひとつ個人レベルで考えると、ひとまとめにしてそう呼ぶことは、向いていないのかもしれない。物語調な表紙とは裏腹に、現実世界を考えさせられ、また、読み進めながら、「あのときのあれはこうだったのね」と何度もそのページに戻って確認したくなる、そんな1冊。
    (神奈川大学/あやかーん)

  • 『よるのばけもの』
    住野よる/双葉社

     怒られると笑ってしまう。それは決して相手が滑稽に見えたからではない。「怖い」という心を見せたくないから、防衛するための手段であった。でもその笑顔は他人からは違ってみえるらしい。先生からは「笑うんじゃない!」と怒鳴られる。クラスメイトからは「気持ち悪い」と思われている。難しい世の中である。
     いじめにあっている矢野さんは毎日にんまり。ふんばってふんばって本心を隠してる。でも心が泣いている。あなたの周りにも、怒られても、いじめられても、笑っている子、いませんか。
    (愛知教育大学/みずき)

  • 『鳥居の向こうは、知らない世界でした。』
    友麻碧/幻冬舎文庫

     孤独な女子大生だった夏見千歳が異世界へ行き、様々な人々に出会い気持ちが変わっていく話。話が進んでいくうちに、彼女の気持ちが明るくなっていくのが心地良かった。と同時に、その異世界を心地良く感じ始めているところは、少々危ない、と考えた。「自分はだれにも必要とされていない」「元の世界に戻りたくない」と思っている描写がある。読み手である私には全体像が見えているから「そうではない」と言えるが、物語の中の彼女の立場ならば、そのような気持が芽生えて当然だろう。人の心は目で見るのではなく、心で見ないとわからないと感じた。
    (早稲田大学/みずき)

  • 『決定版 日本のいちばん長い日』
    半藤一利/文春文庫

     昭和20年8月14日正午から15日正午という、わずか24時間を語るために生まれたこの作品は、1時間ごとに区切られた各章の中で閣僚が軍人が放送局員が、焦土と化した舞台の上を右往左往する悲喜劇だ。72年後の日本を生きる私には、彼らの姿の悉くが滑稽に映る。青年将校の凶行は彼らの頑迷さに呆れ果て、政府に対しては300万の命を失う前にもっと早く手を打てよと叫ばずにはいられなかった。この作品は決して美談を伝えるものではない。現代にいたるまで日本が犯した大いなる失敗に、永遠の反省を促す300万の魂のささやきを伝える墓標なのである。
    (山口大学/R・A)

  • 『啄木・ローマ字日記』
    石川啄木〈桑原武夫=編訳〉/岩波文庫

     今からおよそ108年前、23歳だった啄木は、日本語ではなく、わざわざローマ字を使って日々の出来事を日記に綴っていた。その理由は本書の解説でいくつか述べられているが、ひとつに妻・節子に読まれたくなかったということがある。彼がそこまでして、他者から読まれることを拒んだ日記の内容とはどんなものだったのだろう。それは読んでからのお楽しみ。この本には飛びぬけて優秀だった神童・啄木ではなく、あくまでひとりの等身大の人間・啄木が描かれる。読後、彼に親近感が湧いてくるとともに、当時貧窮に喘ぎつつも、母と妻子を養おうと毎日奮闘する彼の姿に、思わず涙腺がゆるんでしまった。
    (東北大学大学院/K.N)

  • 『万葉集 (一)』
    佐竹昭広ほか=校注/岩波文庫

     相聞歌が好きだ。相聞歌とは男女の恋愛の歌だ。たとえば、「人言を繁み言痛み己が世にいまだ渡らぬ朝川渡る」というこの歌、但馬皇女が同居人のもとを抜け出して、好きな人に会いに行くことを宣言した歌だ。千年以上の時を経ても人間の恋愛感情が変わらないという事実に加え、何よりも大作恋愛小説が書けそうな物語がたったの三十一文字に詰めこまれていることに感動した。時間がないけど恋愛小説が読みたくなったら、ふと万葉集をぱらぱらめくってみよう。そうすればたったの三十秒で脳内麻薬を摂取できるから。
    (立命館大学/うまひと)

  • 『とりかえばや物語』
    田辺聖子/文春文庫

    『とりかえばや物語』。作品名からこんなにも直球で投げかけてくる古典作品はほかにあるだろうか。とりかえたい? なにを? 互いに偽りの性を生きる姫君と若君の性別をだ。
     平安時代は生きにくい。女の生き方、男の生き方という観念に縛られ、性別ごとに既に出来上がったレールの上を歩む。脱線なんて、あり得ない。平安後期、すでにこの物語の作者はそんな世の中に不満を覚えていたのだろう。今も昔も変わることなく、自分が自分らしく生きられる世の中を渇望し続けている。自らの性と生き方の葛藤に苦しむ主人公、その生きざまから、性に対する現代の社会意識を振り返り、考えるきっかけにしてもらった。
    (北海道教育大学/富田野乃花)

  • 『丹生都比売・梨木香歩作品集』
    梨木香歩/新潮社

     天智天皇の後継をめぐる政治的対立が深刻な中、命を尊ぶ草壁皇子の心優しさが切ない。高貴な血統を基準とした政治的采配、大人たちのみ知る情報戦略。激しい情勢を生き抜くための「闘争心」は皇子の心を疲弊させる。繊細さゆえの生きづらさに辛くなった。深い洞窟に迷いこみ、水銀の神に祝福される場面は感涙。「清けし」——大きな川の流れとともに現れた草壁皇子をすくいあげた、天武天皇の言葉だ。まるで百済からの観音像のようなその表情に、私もまた、敬虔な気持ちになった。
    (東北学院大学/優)

  • 『夜と霧』
    ヴィクトール・E・フランクル〈池田香代子=訳〉/みすず書房

     人間の偉大さと悲惨さを思い知らされた本だった。私たちの世代は、どこか戦争をファンタジーのようにとらえがちだ。しかし、今日の世界では、いつ戦争がおこってもおかしくなどない。
     人間とは何なのだろう。哲学的な問いに、心理学者が自身の強制収容所での経験をもとにときあかしていく。ナチスは、ひどいことをした。戦争は、ダメなことだ。たしかにそうだが、それだけではないのだと思わされる一冊である。
    (香川大学/MAY)

  • 『郵便配達は二度ベルを鳴らす』
    ケイン〈池田真紀子=訳〉/光文社古典新訳文庫

     何か一つ成功してしまえば、トントン拍子で上手くいく。しかし、一つ失敗すると、歯車が狂ったかのように全てが上手くいかなくなる。誰にだって一度や二度身に覚えがあるようなことだ。
     殺人という大きな過ちを犯してしまった男の人生は、破滅の道を突き進んでいく。一度目の過ちでやめておけばいいものの、二度目の過ちを犯してしまう。人間は弱い生き物だと感じた。しかしその弱さこそが、共感を生む。冷酷な殺人鬼などではなく、恐怖に怯え、震えあがるような「弱い男」だからこそ、読者は同情し、つい彼の幸福を願ってしまう。さて、破滅の道の果てには何があるのか。
    (北海道教育大学釧路校/いわせ えみな)

  • 『時計じかけのオレンジ完全版』
    アントニイ・バージェス〈乾信一郎=訳〉/ハヤカワepi文庫

     私たちはみな、みずみずしい果実だ。大地から生まれ、自然に実り、あらゆる感情を抱く自由を許されている——それが暴力的な感情だったとしても。私はこの物語を読み終えてから、はじめてタイトルの意味に気づいた。多くのものが機械化されていく現代だからこそ、読まれてほしい物語である。私たちがいつか“時計じかけ"になってしまう前に。
    (北海道大学/umechan)

  • 『しんくわ』
    しんくわ/書肆侃侃房

    「しんくわ」はタイトルであり作者の名前だ。「しんくわ」は卓球部員としてへなちょこな青春を過ごし(それが楽しそうでもある)、三国志大戦TCGというカードゲームを好んでいる(全国大会の予選の予選の店舗大会で負ける)。あとはお正月にバイク事故で足の骨を折ったりしていて、そんなことを短歌にしている。
    「しんくわ」の短歌も俳句もエッセイも、「しんくわ」のありのままの呟きという感じがする。そしてそこにツッコんだり笑ったりふむふむしているうちに、私たちは「しんくわ」と友達になっているのだ。
    一年を身体で表すならば、秋は尻だ。尻は好きだなうむ、と頷いて固い握手を交わしたくなる
    (広島大学/甘蛙)

  • 『悲しみの秘義』
    若松英輔/ナナロク社

     なぜだろうか。この本は読み進めていく毎に、心地よさを覚えた。久々に身体からそして心から自然と「ことば」の奥深さ、「ことば」の表現を随所に感じ、喜びを感じ、一気に読み終えてしまった。現代に出されている新書やエッセイ本とはどこか雰囲気の違う、また日本人が忘れかけている「ことば」の表現、「悲しみ」「情愛」「孤独」といったこの本を読んだ上で自然と浮かぶ様々な「ことば」が、ここに書いてある深みと共に思い出されていく。いま一度、「ことば」の奥の隠された意味を、自分の中で問い直してみたい。
    (広島修道大学/youking)

  • 『思考の整理学』
    外山滋比古/ちくま文庫

     数学の問題について考える。レポートのテーマを何にするか考える。将来について考える。毎日必ず「何か」を考えるけれど、「考えること」について考えたことはなかった——。
     考えるという行為には、方法やコツがあって、独創的なアイディアもその方法に従えば生み出せることを知りました。唯一解が存在しない問題に当たる機会が増えた大学生にこそ、読んでほしい一冊です。
    (北海道大学/G)

  • 『ルリユールおじさん』
    いせひでこ/講談社

    「壊れてしまった大切な図鑑をなおしてくれる所はないだろうか」と街を歩き回るソフィーと、製本職人であるルリユールおじさん。物語の中でこの二人が出会う前から、二人は同じ一枚の絵の中に描かれている。本人たちはまだ気づいていないつながりが、やわらかな優しい絵の中に溶けこんでいるように感じた。
     本は大切に大切に読み継がれるほど、ボロボロになる。手作業で本を修復し装丁する“ルリユール"という職業が一般的だった時代、修理から戻ってきた本を受け取ったとき、持ち主たちはどんな気持ちになったのだろう。ソフィーと同じように、大切な本を抱きしめたくなるような気持ちだったのだろうか。この本を読んで初めて知った“ルリユール"という職業。素敵な仕事だなぁと、ほっと心が温かくなった。
    (北海道大学/ハイジ)

  • 『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』
    大塚ひかり/草思社文庫

    「昔々あるところにお爺さんとお婆さんがいました」
     昔話の始まりといえば、この表現だろう。ではなぜ、こんなにもお爺さんとお婆さんが出てくるのだろうか。一見フィクションに見える昔話だが、その内容は当時の時代背景を反映している。当たり前とされていた老人の貧しさは、話の中で逆転劇を起こす重要な要素である。昔話を「おもしろく」するためには老人の存在が不可欠なのだ。改めて昔話をじっくり読んで見ると、端々に当時の闇を垣間見ることができるはずだ。
    (北海道教育大学/沼邊恵)
 

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