読書マラソン二十選! 152号


秋の夜長、月のあかりに照らされながら、じっくり読書を楽しもう……なんて思っても、新学期は始まったばかり。
目の前に立ちはだかる、課題や授業の準備。
でも、一日の終わりは、やっぱり本を読んで締めくくりたいものです。

 


  • 『モモ』
    ミヒャエル・エンデ〈大島かおり=訳〉/岩波少年文庫

    児童文学作品だから物足りないだろうって? いえいえ、食わず嫌いはいけません。本を開けば溢れ出すやわらかな言葉は、味わえばちょっぴり刺激的。目まぐるしい時間の彼方に置き忘れてしまった“私だけの幸せのカタチ"を思い出させてくれます。とりあえず、一呼吸。結末にたどり着いたとき、冷え切った心と体にじんわりと温もりがしみ渡るでしょう。そして自分の体が軽やかに、力に満ち溢れていることに気づくはず。おすすめはこのお話に浸ったあとで、おいしいごはんを食べること。贅沢で幸せなひと時。ご賞味あれ!
    (立命館大学/みじんこ)

  • 『自由の牢獄』
    ミヒャエル・エンデ〈田村都志夫=訳〉/岩波現代文庫
    人々にとっての故郷とは、どこだろうか? 私には長崎という故郷がある。しかし、いま住む大阪もいずれ私にとっての故郷となる。彼にとっての故郷は、一枚の絵に描かれた場所だった。絵の場所を探し求めてあらゆるものを犠牲にしていく姿は狂気を感じる。しかし、同時にそれほど人々にとっての故郷が追い求めるべきものだと思わせてしまう。ミヒャエル・エンデの短編集のこの本は、それぞれの話がどこかでつながっている。ファンタジーのようでどこか現実を見ている。だからこそ、読んでいてゾッとしてしまう。ミヒャエル・エンデだからこそ書ける、まさに自由にとらわれた人々を開放する作品。
    (大阪大学/Me→You)

  • 『一九八四年』
    ジョージ・オーウェル〈高橋和久=訳〉/ハヤカワepi文庫

    ユーモアは影をひそめ、強烈な暗さと汚さがこの作品を覆っている。全体主義、社会主義の批判という点ではジョージ・オーウェルのかの有名な『動物農場』と同じだが、それよりもシビアに社会を描いている。最初は自らの心の中で、後にはっきりと行動に表して抵抗していた主人公が最終的に権力に屈してしまうラストシーンはなんだかおそろしかった。私にはあの感情は理解できない。また、物語の中では独裁者により新しい言語の作成も行われており、そこで表されていた言語が思考を規定しているのだという記述が面白かった。
    (大阪大学/さおり)

  • 『あたらしいあたりまえ。』
    松浦弥太郎/PHP文庫

    日々の暮らしの中で「どうして協力してくれないの」「もっといたわってほしい」そんな気持ちが膨れ上がってしまうことはありませんか。そう思うとき、いつもなら整えられている心のお部屋が少し散らかってしまったのかもしれません。一度大きく深呼吸して、心のお部屋を掃除してみましょう。きれいになったときには、モヤモヤが晴れているかもしれません。『あたらしいあたりまえ』にはあたりまえの日々を楽しく、素敵に送るためのヒントがたくさんちりばめられています。あなたもこの本の中から、あなたらしい日々のきらめきを見つけ出してみませ
    んか。
    (同志社大学/関 詩紘)

  • 『ぱりぱり』
    瀧羽麻子/実業之日本社文庫

    17歳という若さでデビューを遂げた詩人・すみれ。人を気にせず自分の思いのまま行動する彼女を母や教師など6人の視点から語った連作短編小説です。私はこの中の幼いすみれの成長に不安をおぼえる母の視点の話「クローバー」が好きです。周りに関心がなく母である“わたし"にすら関心がないのではと不安になりますが、“わたし"の誕生日に起きたある出来事により、娘から愛情をもらい、幸せを見つけたという、フッと心が温まる物語でした。“幸せ"とは何か?と悩んでいる人がいるなら、迷わず私はこの本を紹介します。
    (帯広畜産大学/つつごー)

  • 『樹上のゆりかご』
    荻原規子/角川文庫

    男友達に囲まれて喋っているとき、私はどちらかといえば女子扱いされず、自分でもその方が気楽だ。それでも時々、自分が集団に混ざっているせいで、彼らに変に気を遣わせているのではないかと思ったり、この会話に参加していていいものかと居心地悪くなったりする。この違和感の正体が『樹上のゆりかご』を読んでわかった気がする。男女の思考回路の違いやその違いをお互いに完全には理解できないことが違和感の原因ではないだろうか。自分以外にもこの違和感をいだいている人がいるのだろうと想像できてホッとするのと同時に、ここ最近の疑問が解決して腑に落ちた気分だ。
    (帯広畜産大学/万能葱)

  • 『NOVA 1』
    大森望=編/河出文庫

    深みのあるのが良い小説だ。深さは文章の長さに左右される。だから、短い小説は面白くない。なんて、思っていたが、十数ページしかなくても小説は相当に面白い。短編を侮るなかれ!! 抱腹絶倒系、妄想はびこる厄介男子と聞き上手、世話上手な女子の学園サバイバルあり、超ブラックでのどかなお隣さん家との会食あり、ミスドから宇宙に旅立った彼氏を想う彼女の泣ける胸キュンストーリーありと、内容盛りだくさん。一冊で様々なタイプの話が読める、お得感満載な短編集です。
    (札幌学院大学/安平)

  • 『きみはいい子』
    中脇初枝/ポプラ文庫

    「あなたの長所を述べてください」最近行ったアルバイトの面接で不意に聞かれた。よくある質問ではあるが、いきなり尋ねられると答えづらい。短所ならいくらでも答えられるのに、「きみはいいこ」とだれが言ってくれるのだろう? 自分すら言ってあげられないのに。抱きしめられたいのに、誰が私を抱きしめてくれるというのだろうか? この作品はひとつの新興住宅地で起こった出来事をオムニバス形式で描いている。どれも形容しがたい寂しさ、苦悩、絶望のなか生きている人々に一縷の希望が提示される。結末がどうなったのかが描かれていないので想像するしかないが、誰かの小さな優しさが別の誰かの世界を救ってくれることもあるのだと強く感じた。
    (金沢大学大学院/Harurto)

  • 『江戸の備忘録』
    磯田道史/文春文庫

    歴史を「史実」としてだけではなく、そこに登場する人々の心の内まで読み取り、そして息遣いが感じ取れる文章、それが私の印象です。ここには学校で勉強する歴史と大きく異なる部分があります。それは、その人が「なぜ」そのような行動をとったかが大切にされていることです。「〇〇すると、さくざえもんがきるぞ」と高札に書いた本多作左衛門は、自身は読み書きもでき、最も偉い立場にありながら、読み書きも習うことのできない多くの貧しい民に心を配ることができました。その心こそ、私が学ぶことだと思いました。ああ、もっと早くこの本に出会えたら良かった!
    (北海道大学/ポプラ)

  • 『切れない糸』
    坂木司/創元推理文庫

    時々、すべてを捨てて、ここじゃないどこかへ行きたいという衝動に駆られる。私のことを誰も知らない町に行けば、私が今までした失敗や発言も無かったことになり、人の目を気にすることなく、自分らしく生きることができるのではないかと考えてしまう。だが、それは今までの人と人との過ごしてきた時間や記憶、溶け込んでいた時のあたたかさを置き去りにしてしまうことも意味するのではないだろうか。そう思うと、少し考えていたことが無責任にみえて、結局家に帰って、還るべき場所があることに安心し、一日が終わる。いっそのこと離れてしまいたいと思いながらも戻ってきてしまう。どこか遠くにあこがれを持ちながらも、根のある私は、今日もまっすぐ家に帰るのだろうなと思うと口元が緩んだ。
    (兵庫県立大学/灰文鳥)

  • 『女王はかえらない』
    降田天/宝島社文庫

    子どもは、大人が思っている何倍も物事を考えて生きている。私にもこの本の「ぼく」と同じ小学四年生だった時期がある。作中で描かれるスクールカースト、一口に大人といっても両親や学校の先生、地域の人に見せる側面はそれぞれ違うのだ。その頃の記憶がすべてあるわけではないけれど、子どもだった私にも、テストで満点をとる賢くて物分かりの良い私と無邪気に子どもらしくはしゃぐ私がいたことを覚えている。今、私の横を駆け抜けていった子どもたちは、その笑顔の下にはどんな顔が隠れているのだろうか。
    (北見工業大学/ゆう奈)

  • 『ラビット病』
    山田詠美/集英社文庫

    この本の主人公であるカップルは、私が最も憧れているカップルだ。ダイヤの指輪や高級ディナーはいらない。きれいな格好もお洒落な会話もしない。たぶん、世間が称えるカップル像とは程遠い二人だ。ゆりはわがままで変わり者だし、ロバートはのんびり屋で泣き虫。でも、本当に二人は愛し合っていて、二人でひとつであることを堪能している。それに目的はなく自然とそうなっている。読んでみて自分の「うさぎ」の存在に気づいたら、それはもう最高の宝を持っているということだ。
    (立命館大学/田口さくら)

  • 『モナドの領域』
    筒井康隆/新潮社

    ぼくたちの住む世界はあまりにも不条理ではないだろうか。戦争、紛争、飢餓、生まれながらの不平等、その他その他。それへの答えをこの本は示してくれている。著者自ら「わが最高傑作にして、おそらくは最後の長篇」と宣言するのも納得せざるを得ない、最高の哲学書にして最高のエンターテインメント小説。
    (甲南大学/ぶどう缶)

  • 『窓ぎわのトットちゃん』
    黒柳徹子/講談社文庫

    私は学校という場所が苦手です。どうもあのなんのためかよくわからない決まりとか、集団行動が苦手なようです。しかし一方で、学校という場所は私に学ぶ面白さや人とつながることの楽しさを教えてくれました。それから悲しみや悔しさも。
    学校、特に小学校は6年間という決して短くない期間の1日の半分以上を過ごす場所です。だからこそ“校長先生"は尊敬でき、かつ身近な存在であってほしいのです。この小林先生は、きっとそんな方だったのではないかと思います。
    (京都府立大学/runner)

  • 『君を愛したひとりの僕へ』
    乙野四方字/ハヤカワ文庫

    この本を読んだ後、胸の奥がとても痛かった。誰一人として救われない、幸せになれない、切なさと寂しさと孤独感が混ざったような、なんとも言えない気持ちになった。知らなければ幸せなこともたくさんある。科学が発展しすぎてしまったために、分からなくて良かったことも分かるようになり、愛したかった人を愛せなくなることもある。ほんの少しの誤解で自分の運命を変えてしまうこともある。良いと思って突き通したことが本当に良かったことなのか、もしかすると、もっと幸せなことがあったかもしれない……。たくさんの思いが混ざり合って、人は抗えない人生を送るのだと思う。生きることに無意味なことなどない。きっと違う世界で自分と自分の愛する人が幸せでありますように。そう信じて。
    (北海道教育大学釧路校/ くろねこ)

  • 『時をかけるゆとり』
    朝井リョウ/文春文庫

    「これだからゆとりは」テレビで、雑誌で、大人たちのやりとりで、何度聞かされてきただろうか。そう言われるたびに、「好きでゆとりになったわけじゃないのに」と不満に思っていた私は、この本を読んでからは、ゆとりであることに誇らしささえおぼえるようになった。大学生活から普段の生活まで全力で生きている「ゆとりの朝井リョウ」からは、どの世代もきっとエネルギーをもらえるはず。ゆとり世代のみなさん、ゆとりがあるぶん、全力でバカやって生きてますか?
    (富山大学/菜)

  • 『自由論』
    ミル〈斉藤悦則=訳〉/光文社古典新訳文庫

    僕も、あなたも、哲学者だ。……と言うと、何を言っているのか、と思われるかもしれない。しかし、僕たちは、子どもの頃、僕たちを取り巻く世界が不思議で、その1つ1つの謎を解明したい、と思ったはずだ。その頃の自分に戻るために必要なのは、何だろう? それは、この本を読めば、おのずと分かってくる。ほかの人に害を与えない範囲で、自分自身の幸福を自分なりの方法で追求することができること。自分とは違う意見を持っている人を尊重すること。「変わった人間」になるのが望ましい、ということ。この本のそうした主張を通じて、僕たちは、子どもの頃のように、議論できるようになる。さあ、ページを開いて。
    (佐賀大学/無名)

  • 『感情類語辞典』
    アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ〈滝本杏奈=訳〉/フィルムアート社

    この世界には、様々な言葉が溢れている。小説の中で特に印象に残るのは、感情を表す言葉だ。笑う、怒るといった感情の表現は、作家によって大きく違う。直接、歓喜や怒りの文字を使わなくとも、読み手は登場人物が今、どのような心情なのかを理解することができる。そんな感情の表現を集めたのが、この辞典だ。自分で小説を書くという人も、本を読むのが好きだという人も、そうでない人も、ぜひ表現の面白さを感じてほしい。
    (札幌学院大学/R@iL)

  • 『カササギの計略』
    才羽 楽/宝島社文庫

    私は騙された。見事なまでに。騙すということは基本的には悪いとされている。財産や情報を盗んだり、人を傷つけたり……事の過ちに気づいて後悔するのが一般的だろう。しかし、騙されたことによって希望を見出す時がある。その素晴らしさは、絶望の淵に立たされないと感じられない。長く、重くのしかかる苦難にあなたは耐えられるだろうか? そして、乗り越えた先には何があるのか? それを確かめられるのは、この本を読んであなたが騙されてから。
    (室蘭工業大学大学院/ホスフィン)

  • 『ホワット・イフ?』
    ランドール・マンロー〈吉田三知世=訳〉/早川書房

    「世界のみんなが集まってジャンプしたらどうなるの?」と聞かれて、真面目に考える人はあまり居ないだろう。しかし、マンローは違う。物理や数学、様々な知識を使って答えを出し、分かりやすく教えてくれる。たとえそれが、どんなにお馬鹿な質問であっても。きっとこの本は、科学の素晴らしさをあなたに教えてくれる。
    (甲南大学/マタタビ)


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