連載 伝わる文章を書こうNo.3


皆さんのギモンにお答えします!! 
先生からのメッセージ 
プロフィール 

 

『「伝わる日本語」練習帳』の著者が皆さんのギモンにお答えします!!


阿部圭一・冨永敦子
『「伝わる日本語」練習帳』
近代科学社/本体1,800円+税

Q.同意語から一つの単語を選択するときのコツや、使い分けを調べられる辞書などはあるでしょうか。

A.類語辞典がお勧めです。私は文章を書いているとき、どの言葉がよいか迷うと、『角川 類語新辞典』(角川書店)を調べます。たとえば、「進歩」と同じような意味をもつ言葉を調べると、「進化:変化・発展すること。例:生物が進化する」「躍進:勢いよく発展すること。例:躍進する日本産業」「飛躍:急に進歩すること。例:飛躍的発展」「発達:働きが十分に発揮されるようになること。例:交通機関の発達」などを見つけることができます。言葉の意味だけでなく、例も示されているので、使い分けがわかります。(冨永)

 

Q.漢字にするか、ひらがなにするかの目安を教えてください。

A.一般に、名詞や動詞は漢字で書き、接続詞、助詞、助動詞、形式名詞はひらがなで書きます。形式名詞とは、「協力すること」の「こと」、「文章を書くとき」の「とき」のように、名詞としての元の意味が薄れて形式的に使われる名詞のことです。
 学生のレポートでは、本来ひらがなで書くべき言葉が漢字になっていることが多いです。パソコンの日本語入力ソフトが漢字に変換してしまうからかもしれません。間違いやすい例を表1に示します。参考にしてください。(冨永)

表1

品 詞 使う 使わない
接続詞 また
したがって 従って
(「規則に従って行動する」のように動詞の場合は漢字で書く)
すなわち 即ち
なお
形式名詞 協力すること 協力する
文章を書くとき 文章を書く時
特に反対意見がなければ、承諾したものとして進める 特に反対意見がなければ、承諾したとして進める
打ち合わせしたとおりに進める 打ち合わせした通りに進める
A案よりもB案のほうが良い A案よりもB案のが良い
副詞 あえて 敢えて
あらかじめ 予め
新たに あらたに
さらに 更に
 

Q.ある単語が方言なのか標準語なのか調べられますか。

A.『都道府県別 全国方言辞典』(佐藤亮一)という辞典があるようですが、インターネットでも簡単に調べることができます。たとえば、西日本では「片付ける」ことを「直す」と言います。「食器を戸棚に直す」は「食器を戸棚に片付ける」という意味です。インターネットで「直す 方言」を検索すると、「直す」が方言であることを示す情報が多数検索されます。(冨永)

 

Q.ら抜き言葉が主流になりつつありますが、「ら」をつけることがどれくらい重要なのか教えてください。

A.私の意見は次のとおりです。言語は変わっていくものです。最初は間違っていると言われても、多くの人が使うようになると、許容範囲に入ってきます。「ら」抜き言葉は、もうそこまで来ていると判断します。ただし、うるさい先生やオジサンに見せる文章では気をつけるほうがいいでしょう。(阿部)

 

Q.メール作成時、ついつい一文を長くしてしまいます。読みやすいメールのための文の長さの目安や、文を切るコツを教えてください。また改行の頻度や改行後の一字空けの有無などに、メール独自の(原稿用紙式とは違う)目安はあるのでしょうか。

A.文の長さの目安としては、50字以内という提案が多いようです。文を短くするコツについては、『「伝わる日本語」練習帳』の2章2.1〜2.5を見てください。
 改行については、メール以外の文章とメールでは、考え方がやや違います。人により、さまざまなメールの書き方がありますので、ここでは私の書き方を紹介します。
 まず、メールでは、トピック文とサポート文といったパラグラフの構成(前掲書3章)をあまり考えません。一つの段落は、他の文章に比べれば短くしています。段落と段落のあいだには空白行を1行入れます。そのほうが、読む人は段落(意味の塊)をつかみやすいからです。空白行を1字空けの代わりとして、段落の先頭は字下げしません。(阿部)

 

阿部先生・冨永先生 先生からのメッセージ

本を読むと何がうれしいか

 3回の連載では「伝わる文章を書く」技術について述べてきました。ここでは「読むこと」について、私の考えを述べましょう。文章を書くためには、その何百倍もの文章を読んでいる必要があると考えます。これは、英語を読む力と書く力を比較すればわかるでしょう。
 本を読むことによって、自分の直接の体験ではありませんが、多くの間接的な経験を積むことができます。自分が直接経験したり考えたりできることは狭く、限られています。本はもっと広い世界にあなたを連れていってくれます。そのようなさまざまな経験や考えたことは、あなたの「教養」を形づくるとともに、「仕事をする能力」を養います。ですから、本を読まない人は、自分の将来の可能性について、自ら進んで低いレベルを選択していることになります。(阿部)
 

言葉に敏感になろう

 今回は言葉の使い方を取り上げました。学生のレポートには、言葉の使い方がやや雑なものがあります。たとえば、人に使う言葉を物に対して使っていたり、意味範囲の大きな言葉を使っていたりします。とても残念です。言葉を適切に使うだけで、文章は良くなります。普段から言葉に敏感になってほしいと思います。(冨永)
 

P r o f i l e
阿部圭一(あべ・けいいち)
1968年名古屋大学大学院博士課程了、工学博士。静岡大学、愛知工業大学を経て、現在はフリー。静岡大学名誉教授。専門は情報学、情報教育。著書に『「伝わる日本語」練習帳』(近代科学社)、『明文術 伝わる日本語の書きかた』(NTT出版)など多数。
冨永敦子(とみなが・あつこ)
2012年早稲田大学大学院博士課程修了。博士(人間科学)。IT企業勤務、テクニカルライターを経て、現在は公立はこだて未来大学システム情報科学部准教授。著書に『「伝わる日本語」練習帳』(近代科学社)など。

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