「Campus Life」vol.64

「選択されるオンライン教育」


全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・
食農学類長)

情報通信技術(ICT)の高度化は、社会のあらゆる領域に行き渡るイノベーションだと言ってよいでしょう。私が専門としている農業の世界でも、ICTを活用した経営管理や情報の受発信が急速に広がっています。あらゆる領域に普及という点では、それこそ15世紀の活版印刷技術の発明が頭に浮かんできます。当時は画期的だった文字の印刷が、今ではほとんど意識されない当たり前の世界に変わったのです。

私自身はICTが苦手です。最小限の操作を覚え込み、時には熟達者のサポートをもらいながら、何とか乗り切ってきたわけです。ところが、コロナ禍のもとで大学の授業にもオンライン方式が導入されています。私の勤務する福島大学も例外ではありません。対応に四苦八苦でしたが、必要なICTの使用に取り組むしかないと観念した次第です。

同時にオンライン教育にも、二つの段階があるようだと感じています。一つは現在の状態であり、教える側と学ぶ側の双方にとって、義務としてオンライン教育が求められています。これに対して次の段階は、代替的な方式を比較検討した結果、オンライン教育が選ばれるかたちです。講義の内容や受講生の人数といった条件次第では、オンラインが妥当だという判断もあるでしょう。逆に、対面授業がベストとされる実習などもあるはずです。そして、言うまでもないことですが、学ぶ側の声にも耳を傾ける必要があります。選択の結果として活用される時、オンライン教育は真に価値を生むことになるのではないでしょうか。

全国大学生活協同組合連合会
生源寺 眞一 会長理事
(福島大学食農学類教授・食農学類長)

「Campus Life Vol.64~『オンライン授業』でかわる、これからの学びの姿~ に寄せて」


全国大学生協連学生委員会
2021年度全国学生委員長
安井 大幸

2020年はオンライン授業が中心となり、学生生活も学び方も大きく変化しました。

オンライン授業にもオンデマンド型から同時双方向型のものまでさまざまな形態があり、家で講義を受けるからこそ、メリハリをつけるなど、大学生活をマネジメントする力が、今まで以上に求められた1年でした。

学びの姿は変わりつつありますが、一方で変わらないものもあります。

それは、人と人との交流で学び方をつくっていくことです。講義の履修方法やレポートの書き方を先輩学生に聞いたり、講義で分からないことを友人に聞いたりするといったことは、オンラインでも変わりません。オンラインでも人と人がつながり、キャンパスライフで「自分の居場所」を見つけられることが大切です。大学生協では学生委員会が中心となって、人と人とをつなぐオンラインでの「新入生歓迎会」や「履修登録相談会」、「学び方の交流会」などを実施しました。これらの取り組みは、オンライン講義を受けるにあたってプレ体験的役割も果たしており、新入生の方にもぜひ参加していただきたいものになっています。

学び方の新しさでいうと、大学生協では「電子教科書」を組合員とともに開発し、提供しています。この教科書の面白いところは、「電子教科書」を通じて、先生と学生・学生同士がつながれる点です。先生は、事前に学生がどこに興味関心を持ったのかが分かりますし、学生は他の学生が教科書のどこに着目したのか、どこに疑問をもったのかが分かる仕組みになっています。「見通しがつかないという見通しがついている」2021年ですが、新しい学び方は、学生と先生・学生同士の交流を通じて作られていくことだけは、間違いないことだと思います。

全国大学生協連学生委員会
2021年度全国学生委員長 安井 大幸


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