新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国の大学で講義のオンライン化が整備・推進されました。
一口にオンライン化といっても、その実施に至るプロセスが困難の連続であったであろうことは想像に難くありません。
こうした突然のオンライン化になんとか対応できたのも、多くの大学関係者らの苦労のたまものといっても過言ではないでしょう。
大学生協の電子教科書も、そんなオンライン化推進を支える大きな力になれたと自負しています。
大切なのは、オンラインによる講義とリアルな対面講義をいかに線引きし、バランスをとっていくか。
そして、未曽有の災禍がもたらした、学びにおけるこの新たな局面から、我々は何を学び、未来へと生かしていくか、です。
リアルな対面授業の単なる代替ではない、電子教科書を含めたオンラインの可能性を探ります。
一人ひとりの反応を見ながら授業を進められないか? 自発的な学び合いに導くことはできるのか?
こうした日々の授業で感じる疑問や悩みを解決に導き、主体的・協同的なアクティブ・ラーニングを実現する新しいプラットフォームとして、今、大学生協の「電子教科書」に熱い視線が注がれています。
教科書を軸とした、能動的な学びの姿勢が身につきます
講義用のテキストやスライドと同じ画面で、教科書の閲覧や辞書への検索ができます。教材から教材へと自在に行き来できるので、教科書を敬遠しがちの学生にも意欲的に取り組むきっかけを提供できます。
利用ログ取得で、学修効果の計測・分析が可能になります
教員には学生の電子教科書利用ログを提供。閲覧ページ・ページ滞在時間・どの音声を何回再生したか等、学修状況を把握することができ、反転学習導入時や今後の授業の進め方の参考となります。
講義テキストから辞書へ、教科書へ、シームレスにアクセス
ワードやパワーポイントで作成した資料・教材を講義資料として配信できます。
配信した資料は学生にプッシュ配信され、アプリ上で教科書と同じ機能が使用できます。
学生の利用ログ取得で、学習効果の計測・分析が可能に
クラスの学生のログを教員に提供しています。データ以外にも可視化されたグラフで定期的に提供することも可能です。
メモや付箋などの共有で学生の参加、学びあいの姿勢を育成
しおりやメモなどの注釈(アノテーション)を教員と学生で共有することができます。(1対1、1対多、学生間の共有も設定することができます)
共有機能やアンケート機能で学生の反応をリアルタイムに把握
教科書上にクリッカーのようなボタンが表示され教科書を開けたままでアンケートを取ることができます。5択の回答はCSVファイルで保存できます。
細胞の分子生物学
ブルース・アルバーツ
(ニュートンプレス)
経済学で出る数学
尾山大輔
(日本評論社)
1からの経営学
加護野忠男
(碩学舎・中央経済社)
ジュリスト増刊
判例百選シリーズ
(有斐閣)
入門統計学
栗原伸一
(オーム社)
電気回路の基礎
西巻正郎
(森北出版)
アカデミック・スキルズ
第3版
(慶應義塾大学出版会)
全国大学生協連
専務理事 中森 一朗
全国大学生協連
専務理事 中森 一朗
「より良いキャンパスライフ」を目指す私たち大学生協が、DECS計画の推進において一番こだわっている点は「学生の元気な学び」です。「学生に質の高い教育を」という教職員の皆さまの情熱に基づく多大な努力により、多くの学生が大学での講義から知識を習得し、学ぶことの楽しさを実感しています。そんな中、学生がより一歩講義に主体的に参画し、共に学ぶ仲間とのやり取りを通じて、知を深め、探求心をより高めることができれば、大学における勉学研究生活はより充実したものになるのではないかと思います。
コロナ禍で高等教育が急速に変化し、対面+オンライン講義のハイブリッド運用が深化する状況の下で、このDECSアプリはより一層高等教育におけるその役割を高めることができると私たちは考えています。しかしそのことは、より多くの教育場面で多様な活用が行われてこそ検証が可能となります。ぜひともより多くの教職員の皆さまに、「学生の元気な学び」を引き出すDECSアプリをご活用いただき、育てていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
秋田大学大学院 理工学研究科
水戸部 一孝 教授
秋田大学大学院
理工学研究科
水戸部 一孝 教授
コロナ禍で遠隔授業の必要に迫られデジタル化された書籍や教科書を探したとき、我々が使うZoomと極めて相性が良く、映像配信が可能だったのが生協の電子書籍でした。
後期は対面授業に戻りましたが、遠隔のスタイルをそのまま継承し、手元で電子教科書を使いスクリーンに投影しています。講義内容をZoomで同時配信しているので、学生は各自の端末で拡大して見ることもでき、自動的にクラウドに録画されるので、授業の後でも学生はいつでも視聴できます。
(左)秋田大学 理工学部数理・電気電子情報学科
人間情報工学コース3年 高秀 千冬さん
(右)秋田大学 理工学部数理・電気電子情報学科
人間情報工学コース3年 庄司 慧さん
コロナ禍で、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急激に進みました。WebClassという授業支援システムを使い、資料の提示、毎回の講義での確認テストの実施、レポートの提出や成績データの集計等が手軽に行えます。教科書の画面を共有しタブレット等で書き込みながら説明できるので、インタラクティブ性が高まり学生の理解度も深められます。講義のDXに電子教科書が重要な役割を果たしているといえます。
学生にも電子教科書を使った授業は「理解しやすい」と概ね好評で、「従来は板書を書き写すのが大変だったが、教科書に直接書き込むことで時間が短縮できる」「体調が悪いときでも、場所や時間を問わず講義を受けられる」「分厚く重い教科書を持ち運ばなくて済む」と、その利便性を喜ぶ声が聞かれました。さらに改良を重ね、「テキストデータでは対処しきれない科目もある」「使用する教科書が全て電子教科書になってほしい」との要望に応えてほしいと思います。
岡山大学法学部/岡山大学大学院
社会文化科学研究科
原田 和往 教授
岡山大学法学部/岡山大学大学院
社会文化科学研究科
原田 和往 教授
映像資料が必須の教科と違い、法学系は教科書が非常に充実しています。1年生を対象とする少人数の導入科目では、法学部教員で執筆・編集し、生協さんが電子化した「法政基礎演習テキスト」を使いました。教科書の該当ページを画面共有することで、対面のときと同じように、今後の学びで必要となる知識を丁寧に伝えることができたと思います。他方、同じ1年生対象でも、受講者が200人を超える授業では、moodleの多様なコンテンツを駆使し、オンラインならではの授業の構築を図りました。予習を前提とした小テスト、実際の事件への当てはめを求める応用問題等を提供し、教科書をじっくり読ませる授業を試みました。moodleを通じて学生の学習状況も把握でき、濃密な授業になったと思います。
オンライン授業には映像で分かりやすさを求める方法もあれば、私のように課題の与え方を工夫する方法もあり、未だ試行錯誤の段階です。少しずつ経験を積んでいますが、対面に戻ったときにその経験を生かすことが重要です。オンラインで得たノウハウはいつか対面にもフィードバックできるし、学生がオンラインで感じた要求も対面に表れるでしょう。ですから今を対面に戻るまでの苦難の時間とするよりは、これを機に教える側も受ける側も意識が変わる取り組み方をするほうが、個人的には前向きで好ましいと感じます。
意欲的な教員は、対面で授業しながら同じ授業をライブ配信し、かつそれをオンデマンドで見られるよう録画する、ハイフレックス型授業も始めています。法学部でも独自のテキストを作り、その電子版を生協さんにトライアルとして学生に提供してもらいました。コロナ禍でオンラインの可能性が広く認知されましたが、それに付随するノウハウやツールも、今後は紙媒体以上に普及していくでしょう。