「Campus Life」vol.77

良いニュースと悪いニュース。再び。

全国大学生活協同組合連合会
武川 正吾 会長理事
(明治学院大学教授 / 東京大学名誉教授)

東京のとある大学でのことである。この大学は私立(学校法人)ではあるが、政府から委託を受け国立大学なみの授業料やST比を維持しており、財政的には他の私立大学より安定していると思われる。ところが大学生協の方は累積赤字の拡大により債務超過となって2023年ついに解散に追い込まれた。もともと業績が芳しくなかったところに、新型コロナが追い打ちをかけた形になった。残念なことである。

ところで悪いニュースばかりが続くわけではない。コロナ禍が収束してくるにつれて、多くの生協が回復の兆しをみせているのは良いニュースである。とある東京の大学生協では2020年度に供給高が激減したが2022年度は2019年度比で75%にまで回復した。パソコンの供給はほとんど変化がなかったが、食堂の客数の落ち込みは尋常ではなかった。その食堂も徐々に回復しているのだ(但し2019年の水準には戻ってない)。

もうひとつの嬉しいニュースは、2023年に愛知県のとある大学で大学生協が新たに創立したということである。このニュースを聞いたとき、当初私は新設大学に大学生協ができるのだと勘違いしていた。実はそうではなく、この大学はそれなりに伝統のある大学で、それまでは業者がキャンパスの福利厚生を担当していたのである。その業者がおそらく新型コロナ禍による経営難が原因と推察されるが、撤退しそのあとの空白を埋めるための大学生協創立だったのである。学生教職員主体の事業が始まることは喜ばしい。

福武直は『大学生協論』(1985)のなかで、大学生協の特質を三点指摘している。①組合員が大学コミュニティーの構成員に限られる、②施設は原則として大学のものであり、③営業が大学の休暇期間の長い年間スケジュールによって制約される。今改めて、これを読みかえしてみると、さきほどの生協創立も、この三点が大学当局から理解を得られた結果によるものではないかと思う。

全国大学生活協同組合連合会
武川 正吾 会長理事
(明治学院大学教授 / 東京大学名誉教授)

「Campus Life vol.77 キャンパスにおける大学生協の役割」に寄せて

全国大学生協連
全国学生委員会
(2023年度)
杉山 直輝(東京農業大学卒)

今回の特集では、「キャンパスにおける大学生協の役割」というテーマのもと、大学(学部)の特徴や学生の動向に対応した2つの生協施設の事例と、6つのリニューアルされた食堂やショップを紹介しています。

皆さんは、普段利用している大学生協の施設に、どのような印象を持っていますか? 私自身の大学時代を振り返ると、生協は単に商品を購う場所以上の存在で、授業の合間に友人との交流を楽しみ、授業や実験で必要なものを手軽に入手するなど、学生生活に欠かせない場所でした。

しかし、コロナ禍を経て、時代は大きく変化しました。特に「大学生の在り方」は多様化し、大学生協が学生や学生を取り巻く社会情勢の変化にどう対応していくかが問われています。本特集では、愛媛大学生協や山口大学生協を例に、学生の重要なこころの拠り所としての大学生協の役割を紹介しています。これらの事例から、大学生協が学生の変化に敏感に進化し続ける必要性が浮き彫りになります。コロナ禍で加速したオンライン学習や遠隔地からの参加などに見る新たな学生のニーズに生協がどう応えるかは、これからの重要な課題といえます。

今回の特集が、大学生協の新たな一歩となり、学生と大学生協との関係強化に貢献する一助となることを願っています。

全国大学生協連
全国学生委員会(2023年度)杉山 直輝(東京農業大学卒)


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