たかまつななさんインタビュー

お笑いと社会問題がリンクしたきっかけ

宮永:
今までにない斬新な視点ですが、どういった経緯でお笑いと政治がリンクしたのかお聞きしたいです。また、笑下村塾を設立した想いや活動についてもお聞かせください。

たかまつなな氏:
もともとお笑いを通して社会問題発信したいと思ってこの世界に入ったのですが、テレビで伝えるだけじゃなくて、活動家って言い方が適切なのかは分からないですけど、そういうこともしたいなって思っていました。爆笑問題さんや池上彰さんにものすごく憧れています。池上さんはジャーナリストなので取材もされているが、実際に現場を持って活動に取り組んでいるかと言ったらそうでもないんですね。芸能人ってその人自身がメディアになることができると思っていて、例えば私がもっと有名になったら、たかまつななが富士山に行くっていうだけで、同じように富士山に行く人が増えるかもしれないし、ブログだって、ツールになる。SNSも。100万人フォロワーがいれば、100万人のインプレッション。私はそういうふうに自分自身がメディアになるってことを、目指しているんです。

やっぱり、ずっとある問題ってニュース性がなくて、報じにくいんですよ。待機児童もそうだったんですけど、「保育園落ちた日本死ね」みたいなニュース性が出てきたことによって、世の中に出てきた問題になったんだと思うんですよね。私は芸能界で普通にやるようなことだけじゃなくて、もっと他にも可能性があることができるんじゃないかって考えていて、それは自分が有名になってからいずれやろうと思っていた。50代とかになって有名になってから。今はまだお笑い芸⼈として戦っている途中なので。ある程度のところまで行ったらそれやろうと思っていたのですけれども、18歳選挙権が去年導入されて、ものすごく興奮しました。私が今まで記憶にある中で一番「若者と政治」というテーマの番組が多くやっていた。そんなこと今までなかったですよ。どれだけ面白い、高校生や若者へ向けた政治に関する教材が出てくるか楽しみにしていたら、私が見る限りどこにもなかったんです。なんとなくスタジオに現役の高校生呼びました、で終わりみたいな。これじゃ刺さらないよねと思って。だったら私が作ろうと思ったんです。今回は70年ぶりの制度改正じゃないですか。次の16歳選挙権になるのを待っていたら、私はその時93歳になってしまうと思って、だったら今活動したほうがいいと思いました。

そこで、一週間で会社を設立する本を買って、会社を作りました。モデルケースを作りたかったので、会社という形にしました。というのも、主権者教育をしている日本で一番大きいNPOに取材しに行ったんですけど、現状として従業員が一人いて代表者一人、有給のスタッフが一人二人、インターンの子がいて、ボランティアさんがいる。そこは10年くらい今までやっていて、総務省と一緒にやったりしていた。めっちゃ規模小さくないですか?総務省が選ぶくらい一番有名なところでその規模なんです。その人もギリギリでやっていて。このままだと主権者教育は衰退していくなって危機感を持って、この人はこういう素晴らしい思いがあって、熱意があるから10年間続けてこれたけど、これって相当お人好しじゃないとできない。ボランティア精神がないと続かないなって思ったんです。だったら私は株式会社でなんとか社会問題とか政治を面白く伝えることってお金になるんだって証明したかったんです。今はまだそれはできていないんですけど、それを証明できれば競合他社も出てきて、もっと主権者教育は広まると思うんです。芸人の先輩の伊集院さんとかと話ししている時にそういう話になって、科学教材も最初お金になってなかったでしょって。昔はそんなに出ていなかったのに、今行くと児童コーナーにはいっぱい実験の本がある。それも、でんじろう先生みたいな人が出てきて、サイエンスショーって面白いんだって広まったんです。多分、他にも真似をする人がどんどん出てきて、お金になったんじゃないかなって。主権者教育とか社会問題や政治を伝えることも、芸人がやればエンターテイメント化できると思った。それが会社を作ったきっかけ。みなさんにNPOとか社団法人の方が良いと勧められたんですけど、それだと全然広がらない未来が見えた。まだそこは戦っている道中なんですけども、そういう感じでやっています。

宮永:
きっかけとしては、18歳選挙権なんですね。

たかまつなな氏:
そうですね。やっぱり芸人をやっていることと、読売新聞でやってきたことが大きく影響していると思う。やっぱり、旬とかブームとかそういうものに乗らないと。芸人が株式会社を作るということは本気だって姿勢もPRできる。本当だったら会社ってもっと半年とか1年くらいかけて事業計画とか出資してもらって、の方が良いと思うんですけど、私は資本金1円で初めて、まず形だけ作ることだけでも大事だと思って始めました。

宮永:
会社を作って、出張授業や公演の活動をされている中で気づいたことはありますか。

たかまつなな氏:
昨年1年間で、全国で5千人くらいに授業させてもらいました。手応えも感じています。お笑い芸人が来て面白い授業をするので、政治についてすごい興味持ってもらえて。びっくりされるのは教材としてしっかりと作り上げているので、学習的な効果も十分にある点です。むしろ私はそちらの方を意識していて、本当に分かりやすくして知的好奇心をくすぐれば、お笑いなんて一切なくてもずっと興味を持ち続けられると思います。教材は、芸人さんの喋りに頼るのではなく、教材自体の面白さでコンテンツとして魅せて、学校の先生がやってもうまく行くように再現性を高くした。たった一回の授業90分で投票率が84%になった学校があった。(投票率は)平均46%なので、倍近く。画期的だと思う。(偏差値の)高い学校で89%とかもあると思うんですけれど、たった1回の授業で外部講師が来て、それができるというのは、十分な成果だと思っています。やっぱり、⼿応えがない時ももちろんあります。それは私の喋りが悪いのか教材が悪いのか何が問題なのかわからないんですけれど…。落ち込んで帰ろうとしたら、校長先生に呼び止められて、「すごい手応えなかったんですよ」と正直に話したら、「高松さん奇跡ですよ。うちの学校の生徒が全員前を向いて聞いていたこと自体が奇跡です。」と言われて、教育の問題も感じました。ある程度優秀というか、人の話を聞くという環境があれば、すごく成果を感じているんですけれども、全く勉強に興味を持てない子が多い学校が、藁にもすがるような思いで、お笑い芸人に助けてほしいみたいなこともあるんですけど、本当にそこの学校の先生の要望に応えられているかと思うと、ちょっとまだまだ力不足だなと。高校生ともなると18年間の歴史があるわけじゃないですか。18年間勉強嫌いで、人前で発言する時では常に恥をかいてきたとか、失敗があってとか。一回お笑い芸人が授業をやって、意見求められてなかなか発言できなくても仕方ないと思った。そこをなんとかできないかなっていうことが教育全体としての問題というか…。もう学校に対して希望を見出してない子もいる。目が死んでいるみたいな。お昼休みは楽しそうなのに、授業始まった瞬間そうなっちゃう。

宮永:
出張とか公演のテーマは、政治の問題以外にも広くあるみたいですけど、幅を広げようと思ったのはどういう意図ですか?

たかまつなな氏:
もともと色々なことをやりたくて、政治や主権者教育だけではなかったんです。18歳選挙権が大きな波だから、ここで乗っておかないとというのがあった。しかも1回目の投票率が社会に及ぼす影響はとてもあると思うので、若い人がこれだけ政治に関心あると、若者に向けた政策じゃないと自分が落選しちゃうよね。と。だから党のマニュフェストに入れようとか、本当にそこから社会が変わって行くと思うので、1回目の投票率はなんとしてでも上げなきゃという気持ちはすごいあった。それは正直やりきれなかったのですけれど…。