障害学生支援&学生相談に関する座談会

みんな困っている、みんな悩んでいる。
知ってほしい、あなたに開かれた「窓」があること。

障害学生支援&学生相談に関する座談会

障害のある学生が大学生活を円滑にスタートさせるためには、どんな支援が必要なのでしょうか。2016年に施行された障害者差別解消法により、障害のある学生に対して高等教育の場に応じた適切な修学支援が求められていますが、実際には大学によりその実態はさまざまです。

今春入学する全ての学生を安全・安心に学べる環境に迎えるため、大学や大学生協は何をすべきか。今回の座談会では、国立大学でコーディネーターを担う先生方が実践されている支援を伺い、現役学生の方も交えて忌憚のないご意見を頂きました。


村田 淳 先生

京都大学
学生総合支援機構
准教授/
DRC
チーフコーディネーター


望月 直人 先生

大阪大学
キャンパスライフ
健康支援・相談センター
准教授


森 麻友子 先生

和歌山大学
キャンパスライフ・
健康支援センター
准教授


白﨑 優奈さん

和歌山大学
システム工学部4年


末廣 千翔ゆきとさん

和歌山大学
教育学部4年

(以下、敬称を略させていただきます)

障害者差別解消法とは

司会:
2021年に公布された(改正)障害者差別解消法により、2024年4月1日より合理的配慮への対応が私立大学(民間事業者)でも従来の努力義務から義務化されます。この機会にすべての大学等で「主に障害のある新入生およびその保護者へ向けて、大学生協よりなんらかの発信ができないか」という問題意識を根底に、先行して義務化されている国立大学で障害学生支援を実践されている先生方からご教示を、現役学生の方からは忌憚のないご意見を伺いたいと思います。

まず最初に村田先生に、障害者差別解消法施行に伴う大学等での合理的配慮に関する基本的な内容を解説していただいた上で、所属大学の状況について教えていただければと思います。

村田:
京都大学の村田です。正式な職名としては学生総合支援機構という部署に配置されている教員ということになりますが、メインの仕事は障害学生支援に関連する実務です。京都大学にはDRC(障害学生支援部門)という組織があり、そこで私自身もコーディネーターの役割を果たしつつ、部門のマネジメントを担っています。
そのような学内の支援部署の担当者という顔に加え、もう一つの顔として2017年度から本学でHEAP(高等教育アクセンシビリティプラットフォーム)というプロジェクトを実施していて、そのプロジェクトのディレクターとして従事しています。このプロジェクトは主に学外向けの相談事業などを行っていて、各大学や自治体等からの相談に加えて学生や保護者の方、進学を控えた高校生からの相談にも対応しています。


「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」
対象:全国の大学、短期大学及び高等専門学校における障害学生(独立行政法人 日本学生支援機構)

さて、そもそも日本では、多くの障害のある学生が高等教育に在籍するという状態には至っていませんでした。日本学生支援機構の調査では、この15~16年で障害のある学生の高等教育進学者、在籍者数が約10倍に増えています。
このような変化の背景には国際的な動向も影響しているのですが、最も大きな出来事としては2008年に発効された障害者権利条約があります。この障害のある人の権利を確保しなければいけないという国際的な条約が、大きな契機だったと言えます。

日本では2013年に国や地方公共団体、各事業者等がすべきことを具体的に言及した障害者差別解消法が成立し、これをもって日本もやっと2014年に障害者権利条約に批准できるような国になったと言えます。2016年4月に施行されたこの法律は、不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の不提供の禁止を求めています。

ただ、本法における合理的配慮の提供義務は、大学でいうと国公立は法的義務でしたが私立は努力義務でした。それがこの間、国内外からいろいろな指摘は受け、各事業者の責務についても努力義務から法的義務にしていくという動きが強まったのです。
そのような社会的動向の中で2021年5月にはこの法律の改正が成立し、2024年4月1日の施行をもって、私立大学を含む民間事業者全てが当初からの義務であった不当な差別的取扱いの禁止とともに合理的配慮の不提供の禁止についても法的な義務を負うことになりました。

この合理的配慮という言葉からは、困っている人を助けるとか、その人達に対する待遇のような印象を受けるかもしれませんが、国際的なスタンダードが求めているのはあくまでも調整作業(accommodation)です。ですから、配慮と言っても一般的に想像されやすいサポートやケアという捉え方ではなく、障害(社会的障壁)ゆえに権利に差が出てしまわないように調整するということが合理的配慮(Reasonable accommodation)なのだということをきちんと認識しておくことが大切です。

京都大学のHEAPでも相談事業をしています。私立大学として2024年の4月をどう迎えるかということで、支援体制を新たに整備するとか、整備してきたものを再構築するとかという動きが活発になってきていると感じます。
こういった社会的動向がありつつも、やはり立ち返るべきは基本的な権利の問題です。何をどこまで支援すべきかというような形式的な面よりも、目の前にいる学生がその人らしく力を発揮できる状況になっているかどうかを考え直していく契機に立っていると思います。

(参考)「大学等における障害学生支援について大学間連携組織が果たす役割に関する調査研究」
2022_houkoku01.pdf (consortium.or.jp)

自大学での障害学生支援

司会:
望月先生、森先生、所属大学での障害学生支援や学生相談等の状況について教えてください。

望月:
大阪大学の望月です。キャンパスライフ健康支援・相談センターでアクセシビリティ支援室という、障害学生支援を担う部署のコーディネーターとして実務をする一方で、全体のマネージメントも行っており、本学の障害学生支援体制がよりよくなるようにできればと動いています。
元々は発達障害や精神障害のある方や家族への支援や支援方法の研究が専門で、個別の担当はそのような方が多いのですが、最近は身体の障害の方にも学部との調整が円滑に行えるようにマネジメントするという業務が増えてきており、サポートスタッフの育成、サステナブルな組織づくりに非常に関心があります。

障害のある学生が、差別解消法施行の影響だけではなく社会的な認知、大学の先生方への認識も広まっているためか、日本学生支援機構が毎年発表する障害学生数の増加傾向と同じかそれ以上に年々相談数が増えているという現状があります。しかし、なかなか予算は増えないので、人員や設備をなかなか充実させられない状況です。大学ではD&I※1を拡げていこうという流れがありますので、そういった部署に働きかけたり一緒に考えたりして、組織としてサスティナブルに維持していけるような形を学内で作っていきたいと思っています。

私たちの部署は、学生相談や保健センターも同じセンター内の部署としてありますので、いかに、これらの部署と連携して学生をサポートしていくかも重要となります。実際には相談に来るということの社会的障壁※2が高い学生・教職員もたくさんおられますので、いかにハードルを低くさせていくのかも課題と思っています。

※1 D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)…多様性を尊重し受け入れること。

※2 社会的障壁…障害のある人が社会で暮らしにくく、生きにくくする原因となる事物・制度・慣行・観念。

森:
和歌山大学の森です。2014年に、当時特任助教だった私と学生支援課の職員の2人で障害学生支援室を立ち上げました。昨年度、障害学生支援室は、保健センターと統合され、キャンパスライフ・健康支援センターとなりました。


『ひと呼吸』は、京都大学HEAP のWEBサイトでPDF版とテキスト版を公開しています。

本学の特徴は、京都大学さんや大阪大学さんと違って地方の国立中小規模大学だということです。学生数も4500人程度で、本学には障害学生支援はもちろん、それまで学生相談室というものがありませんでした。

精神科医からの依頼がある場合、カウンセラーがカウンセリングを行っていましたが、医療領域ではなく、学生が気軽に相談できる場が必要だと思ってきました。

大学教育において学生が相談できる場所として、今年度より新たに学生相談室を立ち上げました。私は、障害学生を支援するための障害学生支援室と、新しく設置された学生相談室の2室に従事しています。

本学のような規模の大学では、大学自体でできることは限られているなと痛感します。そういう意味で大学間の連携は重要で、村田先生・望月先生にも本学の教員研修で講師をしていただきました。

村田先生がHEAPの活動の一つで制作していらっしゃる『ひと呼吸』は、さまざまな大学の支援コーディネーターに焦点を当ててインタビューする内容ですが、それに本学の実践者としてご紹介いただきました。

また、『障害学生支援ガイドブック』は、本学の障害のある学生への支援に関するガイドラインとしてご利用いただくために、多くの方のご協力を得て作りました。大学間のつながりのある皆さまに支えられながら、なんとか運営しているというのが現状です。

学生目線で感じること

司会:
現役学生の方にお尋ねします。先生方のお話の感想と、同じ学生として障害のある学生のために何かできることや考えていることがあれば教えてください。

白﨑:
和歌山大学システム工学部4年の白﨑優奈と申します。大学生協学生委員会に所属し、イベントを通して多くの学生に関わってきました。学生委員としては、あまり障害のある方がおられるという認識をしたことは正直ありませんでした。障害にもさまざまな形があり、例えば車椅子に乗っているとか身体的に何か障りがある方でしたら私たちもすぐに分かるのですが、外見からは分からない障害をお持ちの方にはほとんど接してこなかったという印象です。ただ、今、困りごとを抱えていらっしゃる方が多く、相談件数が多いとお聞きしたので、そういう参加者もたくさんおられたのに私たちが気付けなかったか、またはそういう方はなかなか参加しにくい現状もあったのかと思いました。

4年生として研究室に所属していますが、卒業研究がうまく進んでいなくて大変だと先生に相談したときに、森先生が担当される学生相談室に行くよう勧められたことがありました。でもちょっとハードルが高いなと思っていると、2つ上の院生の先輩が月1回で4、5カ月ほど相談に行かれていたと教えられました。そのとき、自分が気付かないだけでそういうことは身近にあるのだと実感したので、普通の学生生活を一歩引いて見たときに、そういった方は大勢おられるのだと知りました。

学生委員としての私は一学生で専門家でもないので、何か相談をされても対応できません。でも、相談できる場所があることを知っていると、困っている学生に「こういう所に頼ったらいいよ」とアドバイスできるので、相談室の存在を知ったことは大きかったと思います。
「相談させてください」と、自分がしんどい原因を話すのはすごく辛いことです。でも、実は身近に同じように悩んでいる人がいるのだという情報をお伝えできれば、もっと気軽に相談してもらえるかなと思いました。

末廣:
和歌山大学教育学部4年の末廣千翔です。僕も生協学生委員会で活動してきました。自分自身も障害と言うほどではありませんが、周期的に気持ちが落ち込む時期があり、ゼミの先生に相談したことがあります。また、後輩がいわゆるうつ病のような状態になってしまったことがありました。見た目では分からないと、あの子は大丈夫だろうと思いがちですが、大学での相談件数も上がっているということですし、誰にでもそういうことは起きるものなのだと感じました。

僕も障害のある学生とのつながりはそれほどないと思っていましたが、今年中学校に教育実習に行ったとき、今ではクラスの中に障害を抱えている子が1人や2人いるのは普通の状態で、昔だったら障害と定義されなかったけれど、最近ではそう診断された子も増えていると知りました。学校も合理的配慮にまでは手が回っていない部分も正直あると感じたので、場の調整というのは非常に大事なのだと思いました。

相談へのハードルを下げるために

司会:
2022年度の文部科学省の調査で、全国の公立小中学校の通常学級に発達障害の可能性があると推定された児童生徒が8.8%いることが分かっています。その層の多くが数年後には高等教育に上がるということにも触れながら、今の学生の発言も含めて先生方が感じられたことをお聞きします。

村田:
先ほど森先生に『ひと呼吸』を紹介していただきましたが、全国の高等教育機関で障害学生支援に従事している方々の先駆的な試みが、この分野を作っています。ただ、そこで読み取れるのは、「みんな迷っている」「試行錯誤している」ということなのです。新しい社会と新しい組織の中でどんなふうに学生と歩みを進めていくのか、実は大学も支援者も実際には手探りの部分が多く、自分たちも正解を一緒に見つけようとしているプロセスがあるので、敷居を下げて一緒に考えていこうという出発点が必要だと思います。

高校までなら親や教師や周りの人が「今日体調悪いの?」と気にかけてくれるかもしれません。でも大学生活では、調子が悪くて下宿先にこもっていると、周りも何も気付けないでしょう。つまり、自分自身で調子が悪いことを表出して誰かに相談することが求められるのです。風邪をひいたら病院に行く、空腹になったら食事に行く、生活必需品が足りなければ買い物に出かける。このような自然な行動と同様に、何か身体的・心理的にしんどさを抱えたり、モヤッとしたりすることがあれば、相談にのってもらえそうな人に伝えて一緒に考えてもらうのが、まずはとても大事です。

学生相談や学生支援というのは専門的なもので、本当に困ったときにだけ利用するという認識になりがちですが、新入生にも保護者の方にも在校生にも、基本的には自分だけで解決できないことの方が多いということを理解してもらい、ちょっとしたことでもまずは相談してみる、言うなれば止まり木のような形で相談窓口を頼っていただければと思います。

望月:
相談へのハードルについてお話します。学生の困りごとは結構深刻なレベルの可能性もあるので、授業終わりとかでも「こういう所に相談に行ったらいいし、案内もする。一緒に行くこともできるよ」という話はするのですが、やはり結局はそこからアクションを起こしたりするのが難しい学生が多いなと思われます。自分で解決するしかないと悶々としているのかなとよく感じます。
実際に経験したこととして、私は最近学生や地域の方々と一緒の勉強会に参加しています。学生もそういったフランクな場では相談への抵抗も少なく思っていることをいろいろ話ができるし、私もアドバイスをできたりします。ただ、実際にはかなりの数の学生が困っていてもなかなか相談したりといった動きを取るのが難しいと思うと、先程言われた『ひと呼吸』的な、支援者の人柄が見えるようなコンテンツを大学として出せれば、もしかしたら相談部署への親近感を感じてハードルが下がるかもしれません。

学生相談という名前はみんな知っています。ただ、そこにはあまり行っていない。行っている人も、誰かに促されてやっと行くというように、問題が深刻になってから行くことが多いと思われます。大きな問題になると解決に時間がかかることが多いので、そうなる前にちょっと利用してみようという感覚を促すにはどうしたらいいのか。学生の視点から、大学の支援部署はこういう情報を出せば身近に感じられるというのを教えていただけると有難いと思います。

相談しやすい「場」とは

司会:
学生の皆さん、どんな形なら大学内にある窓口で相談がしやすくなるのでしょうか。

白﨑:
自分のしんどさに向き合い、辛いと感じながら自ら相談に行くというこのワンステップはすごくハードルが高いので、人からの「行ってみたら」というアドバイスは大きな後押しになると思います。
私の感覚ですが、自分で行ってみようと思えるうちはまだ元気なのではないでしょうか。「そこまで行けない、どうしよう?」となると、もう結構大変な段階だと思うので、アドバイスしてくれる人が周りにいれば、とても大きな力になると思います。

一対一で自分のことだけ聞かれるのはすごくしんどいと思います。ですので、勉強会などいろいろな人がいる場では、みんなしんどい、みんな困っているから私も相談してみようと思えるのも共感できました。
本学相談室で「クリスマスの飾りみんなで集めよう会」という企画が行われていますが、1回でも相談したら次回へのハードルも下がると思うので、まずはみんなで一緒に何か楽しめる場があればいいなと思いました。


近畿大学生協(関西北陸ブロック)
部会内での「生理の学習会」

末廣:
近畿大学生協学生委員会の部会で、「生理の学習会」を行ったという報告を受けました。そういう話題は普段なかなか話さないと思いますが、20人ぐらいの規模の部会の中で、その話が男女関係なく構えずにできたそうです。同様に、相談に行くハードルは高いと思いますが、そういう大人数の場だったらむしろ話しやすいという部分はあるかもしれないと思いました。

なかなか相談に行きづらいということでは、やはり予約が必要と思われているからかなと思います。例えば「オフィスアワーは何曜日の何時です」というように、その時間だったら来てもらっていいですよと提示されると、予約というステップがなくなり、「この時間、空いてるから行こうかな」と、より行きやすくなるのではと思いました。

望月:
和歌山大学で実施されているクリスマス企画、学生が何らかの形で集まれるようなイベントを定期的に開催されているのは素晴らしいと思います。 「個人に向き合う」という姿勢が大々的に出ていない緩やかな場でうまくニーズが拾え、そこからつなげるのが大事だなと思いつつ、本学ではあまりできてないと思うところなので、これから考えていきたいです。

森:
学生相談室の活動の中で、今回のクリスマスイベントを立ち上げました。やはり障害学生支援のように大学になかったものを根付かせていくのは、相当のエネルギーが必要ですね。今後は少しずつ、学生と一緒に進めていくというフェーズに入ってきているのではないかと感じています。教員へはこれまでかなり働きかけてきましたし、もちろんそれは継続していきますが、大学としてさらにインクルーシブな環境をつくっていくために、センター発のいろいろな仕掛けをしていきたいなと考えているところです。

大学生協に期待すること

司会:
2024年度新入生・保護者に知っておいてほしい事項、並びに大学生協や所属大学の学生と一緒にできるような活動の可能性についてのご意見をお願いします。

村田:
大学になぜ大学生協があるのか。大学は高等教育機関で、専門的な学習ができる環境を整えて学びの機会を提供します。一方で各々のミッションややりたいことは、必ず生活とセットになっています。大学生が学内で力を発揮していくためには生活の安定が必要で、障害のある学生に紐づけて話せば、彼らはやはり生活を送ることそのものにも困難さが生じてしまうことがあるのです。それぞれの状況は違っても、既存の社会状況や地域環境の中で何らかのバリアが生じている状況の人たちには、大学生協がその生活基盤を整える役割を担う、つまり、学生のライフを支える存在であってほしいと思います。

現実的な課題として、障害のある学生が大学に入学するときにまず直面するのは住まいの問題です。例えば、視覚障害や肢体不自由の学生などが一人暮らしをしたいと思ったとします。ただ、そのような学生が利用できるような賃貸の物件は限られていることも多く、時には賃貸業者や大家さんに懸念をもたれることもあります。また、大学の寮や宿舎なども環境的にマッチしないことが少なくないので、障害のある学生の住まい・生活環境を整えるために、生協に寄与してもらえる可能性はないかと考えます。
また大学では、時に人的支援が必要になる場合があります。例えばノートテイクや移動の介助などに学生の力を借りることがあるのですが、そこでは支援の担い手となる学生サポーターが十分に確保できないというような問題もあります。そういう意味で、大学ごとの垣根を超えて学生の力を支援に生かしてもらえるよう期待します。

さらに、障害のある学生のキャリア支援で課題のひとつになるのが、アルバイト経験が少ないなど、社会経験の乏しさがあります。この解決策として、大学生協でのアルバイトなどは選択肢になるかもしれません。大学生協はある意味守られた場所、学生にとって安心できる場所という言い方ができるので、大学生協の仕事に障害のある学生が関わっていくことでいろいろな社会人や学生と関われ、それが重要な居場所や経験にやっていくかもしれません。

あとはピアサポートの意識も大切だと思います。専門的な相談・支援も大切ですが、学生間の身近なサポートや安心感はとても大切だと思うのです。大学側がオフィシャルには出していない情報が、学生のコミュニティから得られるということは、学生生活をおくる上で重要な要素になると思います。ピアサポートというと大袈裟かもしれませんが、このような何気ない情報・関係性というのは学生にとって大切になりますね。

望月:
発達障害の新入生対象ですが、本学ではHEAP(高等教育アクセシビリティプラットフォーム)さんにも後援や協力をいただいて“プレキャンパスプログラム”を実施しています。大学生活は高校までとはかなりギャップがあって、どんな学生でも戸惑いや不安を感じるものです。何らかの障害がある方にとっては一般の方に比べてよりギャップを感じやすく、不適応や困難につながりやすいので、それをいかに小さくするかが目的です。

受験生へは入試課がオンラインでの個別相談を行っていますが、実際に障害のある受験生向けにも今年度から始めました。入学前、大学生活に対して何らかの不安があれば、直接大学に来なくてもいつでもオンラインでつながることができるので、親御さんや受験を考えておられる方にはぜひ知ってもらいたい取り組みです。学生生活を少しでも前向きに楽しく始められるように、私たちはより発信していきたいと思っています。

また、留学生は結構年齢の幅が広く、交流することで幅の広いライフスタイルを知ることができます。生協は知名度がありますし、学生にとっても身近な場所なので、生協がさまざまなマイノリティーの方と交流するイベントを作ってどんどん発信していただけると、学生は大学の中で多様な価値観に触れられると思います。

森:
大学進学を考えている皆さまへは、オープンキャンパスなどで個別の相談にものっています。障害のある学生で入学を考えている方には、いつでもどこの大学でも受け付けていると思いますので、実際にどんな支援が行われているのかを気軽にお聞きいただければと思います。本学のような中小規模大学は、全てのリソースが十分にそろっているとはとても言い難い面もありますので、ご一緒に確認する意味でも早めに相談をいただけるととても有難いです。
また、本学では、入学を前に全新入生を対象に修学配慮調査票を配布しています。障害の有無に関わらず修学において何か不安をお持ちの学生・保護者の方にご利用いただければと思います。

大学生協については、新入生歓迎会などの障害のある方もない方も一緒に楽しめる取り組みは大変素晴らしいと感じます。大学入学に関しては障害の有無に関係なく不安な方が多いと思いますので、大学生協さんには非常に期待しています。

司会:
学生の方にも、今の先生方の話の感想なども含めてご意見をお願いします。

白﨑:
大学生活では、それまで与えられるばかりだったのが、自分から求めて取りに行く機会が増えるので大変です。これまで当たり前にできていたことがキャパオーバーになってしまったら、「今までできていたのに」とすごく落ち込みますよね。でも、高校までの環境と違うからできなくて当然だと自分に言い聞かせるのはすごく難しく、今後社会人になるのはもっと不安で、「今大学生をやりきれていないのに社会に出て大丈夫?」と考えてしまいます。

今大事だから立ち止まっていられない、今しんどいけど頑張らなきゃいけないと思うと、やはり心許なさを感じます。ですので、新入生には相談できる場があり、それを活用できるということをぜひ知った上で入学していただきたいです。私たちも先輩として声を発するなどして、ハードルを下げていく一助になれたらと思いました。

今日のお話から、みんな困っている、相談の利用者が増えていると改めて実感できました。大学生協は困りごとを抱える学生のために、例えば勉強会や相談会などの場を大学と一緒に作るなど、学生を支える力があることを積極的に伝えてほしいと思います。

末廣:
本日は貴重なお話を伺い、本当にありがとうございました。新入生にとっては固定クラスのあった高校時代とは違い、自分から関係性をつくっていかないといけないのが大学生活だと思います。最近は不安を抱えたりしんどい思いをしたりする学生が多いというお話でしたし、実際に自分も後輩を見ていてそれを感じますが、あまりハードルが高いと思わずに、ぜひ気軽に相談してみてほしいと思いました。

学生時代はやるべきことも多いし、就活だ、進学だと生き急がされているように感じたりもします。そういうときにホッとひと息つける場所をコミュニティや大学で見つけられ、「ちょっと行ってみたら」と声かけができるような関係性がつくれれば最高です。僕も学生事務局で健康安全の担当でしたが、障害のある学生やメンタルの問題を持つ学生支援に関する情報はあまり発信できなかったので、そういう内容ももっと発信していくように後輩に伝えたいと思いました。

司会:
今日は、大学関係者、現役学生のそれぞれの立場より、とても具体的で有意義なお話をお伺いすることができました。長い時間お疲れ様でした。

2023年12月4日オンラインにて

【関連情報(リンク)】

京都大学
HEAP Kyoto Univ. | 高等教育アクセシビリティプラットフォーム (kyoto-u.ac.jp)
ひと呼吸 | HEAP Kyoto Univ. (kyoto-u.ac.jp)

大阪大学
acs.hacc.osaka-u.ac.jp
発達障がいのある大学入学予定者対象「令和5年度大阪大学プレキャンパスプログラム」 – キャンパスライフ健康支援・相談センター (osaka-u.ac.jp)

和歌山大学
キャンパスライフ支援部門(学生相談室・障害学生支援室)について | 和歌山大学 (wakayama-u.ac.jp)

その他
「これからの学生支援」 -学生の豊かな育ちと人生を応援する学生支援-|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連) (univcoop.or.jp)
障害学生の実状と大学の対応の実態|全国大学生協連の研究会報告|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連) (univcoop.or.jp)
障害は本人と社会の間に|社会的課題通信|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連) (univcoop.or.jp)
特集 コロナ休校中の学生支援のあり方|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連) (univcoop.or.jp)

2023年7月の健康便り 自分の人生を生きる~発達障害者の家族として~ —メンタル—|健康便り|CO・OP学生総合共済(大学生協組合員用)
2023年6月の健康便り 発達障害者の生きにくさ —メンタル—|健康便り|CO・OP学生総合共済(大学生協組合員用)
2022年7月の健康便り 自分は発達障害かも —メンタル—|健康便り|CO・OP学生総合共済(大学生協組合員用) (univcoop.or.jp)
2021年5月の健康便り 自分の特性(発達障害)を理解する —メンタル—|健康便り|CO・OP学生総合共済(大学生協組合員用) (univcoop.or.jp)

<【出典】日本コープ共済連CO・OP学生総合共済「健康便り」>


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