「Campus Life」vol.81


「Campus Life」vol.81表紙

CONTENTS

【リニューアル増刊号】一汁一菜から探る、大学生の食の意識改革
 

三題噺ー大学生協に関する「みっつ」のできごと

全国大学生活協同組合連合会 武川 正吾 会長理事(東京大学名誉教授)
全国大学生活協同組合連合会
武川 正吾 会長理事
(東京大学名誉教授)

三題噺というほど大げさでもないが、大学生協に関する最近のできごとを三つ。

2025年が国際協同組合年であることはよく知られていることだと思うが、これを記念して去る7月5日(土)東京国際フォーラムで「見て、聞いて、体験 協同組合フェスティバル」が開催された。学生理事の諸君を中心に大学生協連(NFUCA)もブースを設け、多くの来場者に大学生協の存在をアピールした。フェスティバルのゲストとして登場した仲間由紀恵さん、たかまつななさん、Quiz Knockメンバーの東言さんの姿をひと目見ようと、会場には長い行列ができたのが印象的だった。

二つめは国会でのできごと。5月27日(火)の衆議院本会議において「国際協同組合年に当たり協同組合の振興を図る決議」が超党派の議員の賛成によって成立し、翌28日には参議院でも可決された。コメの高騰(「令和の米騒動」と呼ぶ向きもある)で政局が揺れていた時期、しかも参議院選挙を目前にした不安定な状況のなかでの決議は、まさに快挙である。協同組合の存在が保守・リベラルを問わず、わが国の国民的合意であることを改めて感じさせる。現在、生協・農協をはじめとする各種協同組合の共通事項を定める協同組合基本法へ向けた動きがあり、この決議はそのための一歩前進となった。

三つめは国際協力である。NFUCAは以前からICA-AP教育機関協同組合委員会(ICEI)という国際組織に加盟している。これはアジアにある教育機関の生協が集まる場であり、かつては中森専務が副議長を務めてきたが、今期は、不肖わたしが議長に選ばれることとなった。教育機関、特に大学の学生・教職員の福利厚生のありかたにおいて、日本が各国にとってのモデルとして高く評価されているためである。日本の大学生協の取り組みが、学生や教職員の福利厚生のモデルとしてアジア諸国から高く評価されていることの証左である。

全国大学生活協同組合連合会 武川 正吾 会長理事(東京大学名誉教授)

 

Campus Life vol.81「一汁一菜から探る、大学生の食の意識改革」に寄せて

全国大学生協連 全国学生委員会(2025年度)学生委員長 髙須 啓太
全国大学生協連
全国学生委員会
(2025年度)学生委員長
髙須 啓太

「食」は私たちの生活の源であり、大学生協においても根幹をなす事業の一つです。しかし現実には、朝食を抜く、食費を削るといった学生の行動も見られ、「食」が軽視されがちな一面があります。

大学生協の食堂は、学生にとっての「第二の食卓」であると同時に、健康的な食事を安定して摂ることのできるセーフティネットでもあります。土井善晴先生との座談会では、「一汁一菜」という和食の原点に立ち返り、ご飯と具だくさんの味噌汁だけでも、旬や自然の恵みを感じ、日々の暮らしに豊かさを見出せるというお話がありました。

大学生協は人気メニューだけに頼らず、季節の食材や郷土料理も取り入れ、土井先生の言葉でいう「もの喜び(よく気づき、自らを幸せにするし、人をも幸せにする、心が満たされる感覚)」を日々の食事を通して体験ができる場にしていくことが大切です。

また、「組合員にどう育って社会に出てほしいのか」という願いを込めた食堂運営も必要です。お節介ではありますが、生協ならではの温かいお節介を通じて、組合員が自らの将来や食生活について考えるきっかけになればと思います。それは栄養面の支えにとどまらず、感性や社会性を育むことにもつながります。さらに、明治学院大学さんの教育理念「Do for Others(他者への貢献)」は、協同組合の「一人は万人のために、万人は一人のために」という精神と深く通じます。大学生協の食堂やサービスは、単なる商品提供の場ではなく、学生生活を支え、学びや成長を拡げています。食堂でのパートさんや友人との何気ない会話も社会とつながる温かな時間です。

卒業時には「大学生協があってよかった」と思ってもらえる食堂を目指すとともに、利他の心やたすけあいの精神を持った学生を社会へ送り出すこと。それこそが、生協の使命でもあると思います。個人主義的な傾向が強まる現代だからこそ、食を通じて人の気持ちを理解し、他者のために行動できる心を育んでいきたいです。

全国大学生協連 全国学生委員会(2025年度)学生委員長 髙須 啓太